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女でいたかった。



まだ、




まだ ちゃんと瑞々しい体中が、


沸々と 熱を持っていたから。





一番、女性として

女という生き物を全うしたい時期に、

女になれた。





その思い出を胸に、生きていく。



泥水から咲く、美しい花もある。


墓場まで背負って、生きていく過ちもある。





蓮の花のように。



 認知症の義母は、思ったよりも症状が落ち着いていて、まだまだ仕事を続けながら、時々、ヘルパーさんを頼りながらだけど、何とか、やれています。



それでも、花瓶や茶碗を落とす癖があるので、大切な思い出の品は、私の部屋の飾り棚に寄せているんです。



本当はダメだけど、ポプリの瓶を、時々開けてみる。




ピンクソルトの色はそのままで、薔薇の花びらだけが、毎回少しずつ枯れ色に変わっていくのがわかる。



ドンホー版画の両サイドには、二つのカレンダーが掛けられている。





大祐と、大祐のお義母さんの。



その予定表をしっかりと見て、ちゃんと見て、もう一度、見て。





二ヶ月に一回くらいはリダイヤルしている番号がある。



「カットの予約お願いします。それから、デジタルパーマ。

  


 … 西さん指名で。」























下倉ではない。西に沈む。


女は、太陽だから。



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- 完 -





♪ Snow and Light  :36

♪ lone summer  :37.