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鳥かごランプや中国布のソファーカバー、壁面のドンホー版画たち…。



「むっちゃんのレトロカフェ、か」



部屋中をわざとらしく見渡すと、大祐が呟いた。



「は?なに?」


「レトロな家にするんだって言ってたじゃん。」


「あぁ…、あの時はね」


「古さもレトロになんない?」



大の的を得た一言が小さい声であった事をいいことにスルーすると、むっちゃんは昔話の語り部のように、遠い目をして続けた。



「今思うと、ベトナムかぶれしてたんだよね。でもさ、レトロな雰囲気って、あの国だからよかったっていうか。毎日プラスチック椅子でフォーやらブンチャーやら食べてたら、日本人の潔癖さが逆にむず痒くなってたっていうか…」



元々口数が少ない大祐は、スイッチが切れたようで、うんともすんとも言わなくなっていた。念押しするが、機嫌が悪いわけではなく、無口が彼の常。



わかっちゃいるけど。



麦は、二階で着替えを済ませてヘアセットを始めているであろう大祐に届くよう、階段の下から声を張り上げた。



「ね~、大ちゃんきいてる~?自分だって、日本に本帰国したら、オートバイ買うって言ってたじゃん」





… コトン。





一段だけ足をかけて急に翻ったからか、ヨロッとした麦は階段下の飾り棚に手をついてしまった。倒れたのは、ポプリの瓶。









ベトナムの風が吹いた。









バイクの喧騒と市場で買った薔薇の花束を包む新聞紙の匂いと、それから。





閉じ込めたはずなのに。





ピンクソルトとアロマオイルでいっぱいにして。




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季節を問わず、好きです。

金木犀の香り