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結局、その煌びやかな美容室には、お金が続かなくなって(笑)ドロンしたのだけれど…
西は、と言えば。
「同じ57年生まれなんすね。」
お、クールな西にしては珍しく、客のプロフィールを話のネタにしようと持ち出してきた。
「えー、西さんもですか?年上に見えちゃいました。
そうなんです、夫も私も57年生まれなんです。」
「旦那さんも…?
やっぱり、同じ年って、いいですか。」
「ですね。
例えば、二つとかでも違うと、結構音楽の話題がずれてて合わなかったりするんですよね、…意外と。」
麦は続けた。
「昔、2個上の人と付き合ったら、B’zファンでしたもん、その男(ひと)。
私たちは、どっちかというと、ゆず世代じゃないですかぁ。」
「はは…。 B’z、好きっすけどね、自分。」
「確かに。 私も結局、ハマっちゃいました(笑)」
会話力が長けているというわけではなかったけれど、同じ年生まれ、というのはやはり話が合った。
(毎日、テンション上げててすごいね。
偉そうに“会話のテクニック”なんて書いちゃったけど、仕事柄、色んなお客さん来るし…
私なんて、このテンションのままふわっと仕事に入っちゃって、朝イチから電話の第一声がうまく出せなかったり、…さ。)
全然タイプじゃない。
服も顔も性格も。
だけど、話が合うという事は、楽しかった。
だから、少しだけ、興味を持ってしまった。
それだけのこと。
キスの息づかいというのは不思議で、その呼吸が合えば合う程相手を好きになってしまう。
だから一割だけ、好きになってもしまった。
きっと、それも、自然なこと。
耳元でキラリと光る何か。
四年半も、大祐を待ち続けて枯れ葉と一緒に埋もれていた真っ暗なトンネルに、西はキラリとしたものを通してくれた。
それはティファニーみたいなちゃんとしたピアスではないけれど。
同じ色をした画鋲や釘だったとしても、遠目で見れば十分な輝き、女性の耳飾り。
貧しい民族の女性達だって、ほら、衣服以上に飾ってる。
ないよりは、女性に見えるもの、女性らしく。
このひとは、この腕一本で生きてきたんだ。
仕事中とは真逆の、西の優しい腕の中。
ハマってしまいそう、
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眼鏡スタンドにもなる、眼鏡ケースは、
買ってよかったお仕事アイテムのひとつ。
眼鏡の付け外し頻度が多い場所…、
例えばPCデスクの上などにひとつあると便利。
あっ、老眼はまだありません