『 尊敬 』
きみの尊敬になることでしか
つり合いのとれないおもりであるが
努力はしてみる ああでもない
こうでもないと毛穴を隠し
アンバーバニラからリベラディプティックを投げ棄て
ピュアシャンプーに戻るが
きみの消毒液の匂いにはかなわない
訪れるべき時間と 帰宅すべき時間が
すれ違い過ぎて一周するとき 馬鹿だな
馬鹿だよなと自制心の靴紐を固結びする様に
海岸まで走る きみに覗かれ口ずさまれた
選曲と共に であるのだが
抗えない時間と皺を強調せぬよう
真顔で対峙した時よりも うっかり馬鹿笑いした時の
きみの嬉しそうな 歪んだ口元よ
冬仕様に前髪を下ろしたマッシュルと
やはりつり合いはとれぬが
老眼でも近眼でもない眼鏡をきみのために
分厚いヴァレリーが乱視の恋と揶揄うが
ただ きみの尊敬になりたくて