ともおとの結婚式を控え、私は大好きな、遠い辺境の町に戻りました。
着いた私を出迎えてくれたのは、仕事で外せないともおではなく、たくさんのともおの会社の人たちでした。
「歓迎 ようこそ なつさん」
転勤してくる人を出迎える時と同じ横断幕と、大きな花束が用意されていました。
大好きな町へ戻り、新しい生活が始まる喜びでいっぱいでした。
荷物は、ともおの家に運びましたが、式までの数日は 前に住んでいた社員寮の部屋を貸して頂くことになりました。
社長夫妻も、とても喜んでOKしてくれました。
(社長の奥さんは、実質的に事業を切り盛りしている方でした。)
今は、入籍して日が経ってから式を挙げることが、わりと当たり前になっているように思います。
でも、その頃は入籍と結婚式はワンセットなのが普通でした。
町に来てからずっと働いていた職場の社長夫妻は、その町のお父さん・お母さんのような存在でもあったので、社長宅に隣接した社員寮から式に行くのは、親元からの嫁入りのような感覚でした。
穏やかに晴れた日。
ともおと私は、小さな町で、大勢の仲間たちに囲まれて、結婚式を挙げました。
保証人は、ともおの会社の部長と、私の社長の奥さんでした。
そして、町の役場に届を出し、そのまま披露パーティのお邸に向かいました。
ともおは、グレーのスーツ。
私は手縫いのウェディングドレス。
集まってくれた人たちは、小奇麗なワンピースや、普通のスーツ。
中には、スラックスにシャツ、と言う人もいる、「町スタイル」の楽しい集まりでした。
ともおの親友が経営するレストランのスタッフが、パーティのご馳走を準備してくれました。
ともおの会社の同僚や私の友達たちも、笑顔で動いてくれていました。
辺境の小さな町の、手作りの、温かい結婚式
お互いの親兄弟の誰もいなかったけれど、これ以上ないくらいに幸せでした。
笑顔いっぱいのパーティは、夜になるまで続いていました。
ともおは、ベロンベロンに酔っぱらってましたけど いい思い出です。