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月猫@HOME 第伍話 猫熱野球 上



四月九日 型屋月市郊外 犬吠山(いぬぼえやま) 山中









この地球(ホシ)に月より飛来した一つの流星が、

世界の命運を決める事を、まだ多くの人が知らなかった頃。






少女は、全てを知っていたから、少女一人が生き残ってしまったから、

少女は、全てを背負いそこに立っていた。






ふと見上げれば、真っ暗闇の天蓋に星々がチカチカと瞬いている。

宇宙空間から見たときとはまるで違う、大気があるからこその光景だ。








(『月』から見た時のあの怖い宇宙(ソラ)とはまた様相が違う。

なるほど、人間が、争いばかりの宇宙にロマンを求めてしまうのもうなずける。

馬鹿馬鹿しいとは思うけれど、

大地に立って、大気に包まれてみる星達は、まるでおしゃべりしているかのよう…、

こうして、照準器(スコープ)越しに見上げている時でさえ)








彼女は、空気の読めない自分のいい加減な感性に、半ば呆れかえって。

はぁっと、白いため息をついた。








「お母様…、ごめんなさい、お母様…」








彼女は呪文を唱えるように呟いて








「それでも、私はッ」








無骨なレバーを引いた。








彼女の背後で巨大な何かが起動する。








少女の体がぐるんと逆さになった。

先ほどまで大地を踏みしめていた脚は天へと伸び固定される、頭は大地へ向かい、後頭部と両肩がショックアブソーバーに支えられた。

照準器のみが天の一点を睨みつけ








彼女の眼前で、宙(ちゅう)にスクリーンが展開され、

                そこに高速で文字の羅列が走り出す。










―『ニンジン』の起動を確認。ジェネレーター状態良好。砲身状態良好―






(ごめんなさい、お母様。『ぴょん』は今からお母様の言いつけを守らない悪い子になります。)










緑色の閃光が彼女の周囲を走り出し、彼女が周囲を照らし出し、その外形をあらわにする。

彼女が一体となったそれは、巨大な砲台だった。

月を射殺す様に真っすぐ伸びる砲身が彼女の掲げた旗(意思)だ。

彼女の背後に連結された紡錘形のそれがうなり声を上げた。






―装填弾頭を選択してください―








(それでも私は、自分の運命を、



      私が大好きなこの地球(ホシ)の未来を



                   誰でもない自分の手でつかみ取りたいのです)









「MU高濃度圧縮弾頭!」








―Micro ultra-high-energy cosmic ray 高濃度圧縮弾頭の装填開始―


―これより、動態射撃体勢に移行します。時空間フィールドを(10sec→1hr)にて展開―

―周囲の安全を確認次第、安全装置を解除してください―






彼女は迷わずそれを解除した。






粘性を持った黒い天幕が砲座ごと彼女を覆い包み隠す。






(この空間では、10秒間が1時間にまで引き延ばされる。つまりここは外界に比べて360倍速い。けれど、それでもなお相手は早い。『アレ』が大気圏に入って減速する前にかたをつけなくちゃ、話にならないんだから。)






彼女が覆った天幕が透明に変化した。

物体より跳ね返った光の反射が、ようやく引き延ばされた時間に追いついた結果だが、そこに移る彼女の景色は、実際は、引き延ばされた空間を『定速』で通過してきた『未来の光(景色)』だ。








「許して、お母様。

  お母様は、愛は世界を救うというけれど、

           だったら、私のこの一撃も紛れない私の愛なのだから」













彼女の指にトリガーがかかった瞬間、

     その赤い眼光に意思という名の火が灯る。













―見えたッッ!!!―













「この私の一撃が、この悪夢もッ!

                BAD ENDもッ!

                         何もかもッ!!

            ブッ飛ばしてやるんだからぁあああああああああッッ!!!」





















次の瞬間、まばゆい閃光が世界を照らした。

            時間にしてみれば一瞬の出来事。

                    近隣の住民からしてみればただの落雷にひとしき










              

                彼女の行動(勇気)に










            

            世界中が感謝する事になるのは、

                           ――後10年も先の話。










◆◆◆
第五話 「猫熱野球」




白球が、青空に吸い込まれる様に堕ちていく。

重力から解き放たれたそれにとって、もはや、どっちが空(上)か地上(下)かなんて言うのは関係ないに違いない。

青春によって打ち出されたそれは、青春によって受け止められ、あらたなドラマを作り上げていく。きっと、あの真っ白なボールは青春という名の引力に魅かれているのだ。

それが、高校野球というものだ。

  

   ――とは、型屋月高校 校長 飯島團三の言である。


◆◆◆





体はしなやかなゴムの様。

右足に乗った体重が、左足を踏み出すたった一歩に移るその瞬間、上半身が攀じれ捩じれる。腰が回って肩が引っ張られる様な感覚に見舞われた時には、既に指先が固いボールに捩じ込むよう。背筋がうなりを上げ、肩を中心に旋回した肘が、手首をしならせ、そして更に指先をしならせる。計7つの連動するブースター(関節)が最速を極めてボールを発射した。

—ストラァァイクッー 3ストライク!アウトッ!

そう叫ばれる頃には、加速しすぎた指先に血が溜まりすぎて少し痛い。





後…一球。





つぅーっと、一筋。

大玉の汗が額から頬、顎へと伝って地面に落ちる。

体力に自信はあるが、さすがに慣れない動きを続ければ、息は切れ始めている。

浅茅正樹(陸上部員)は、バッターボックスの4番を見る。



全く持って癪ではあるが、彼らの畑で戦うとなれば敵は強大と認めるほかない。



彼の眼鏡を外した『見え過ぎる眼』を持ってしてもこの実力差は埋まらない。



(あ~え~っと、そもそもなんで俺がこんな事やらにゃならんのだっけ?)



季節は5月、夏場にはまだまだ早くとも気象と言う物は気まぐれで、今日は夏日だ。

快晴のすかんと抜けた青空のど真ん中、燦々と輝く太陽を恨めしく思いながら、彼はどうにも腑に落ちない今の自分に疑問を持った。



◆◆◆



「みゃあさんのマネージャー権を賭けて、勝負しろぉ!浅茅兄弟ッ!!」






「「はぁ?」」






その大柄な男=野球部部長の宣言は、十分すぎるほどクラス中の視線を集めていた。

公衆の面前で何を恥ずかしげもなく騒ぎ立てるのだ――という冷ややかな視線ではない。

実は、こういった事はみゃあが学校にやってきて以来たびたび起こっているのである。だから、だいたいの場合「ああ、またか…」という流れになるのだが今回はそうはいかなかった。

何が、クラスメイトを驚愕させたのかといえば。

    (いつも通り)           (大問題)         (様をつけるべき)

       ↑                 ↑                 ↑


  「みゃあさんのマネージャー権 を 賭けて、勝負しろぉ!  浅茅兄弟ッ!!」







上記のとおりである。

つまり、問題は、よりにもよって浅茅兄弟に『喧嘩を吹っ掛けた』奴がいたという事。今までの連中は、それこそ「みゃあさんをうちのマネージャーに下さい」といったものがせいぜいだったが

よもや、彼らに喧嘩を吹っ掛けるおろか者がいようとは。

こと、ガチンコ勝負となればこの兄弟に『容赦』の二文字はない。

さらに言うなら、『慈悲』もなければ『温情』もない。

人呼んで『鬼畜兄弟=浅茅兄弟』こそが、この世の絶対法則だ。


勝負を挑んだ男らしさは称賛に値するが相手が悪い。

誰かが「あいつら、愛に死ぬ気か?」と、冗談無しに呟いた。





「いやいや、待て待て一つ言っておくが、勝負って言っても、僕らは殴り合いなんて野蛮なものは望んでない。僕たちはスポーツマンだからな。第一そんな事をしたら大問題だ。春の大会にも出られなくなる。そこでだ…」



ふふっ、野球部部長は目深に帽子をかぶってほほ笑んだ。



「正々堂々!野球で勝負だぁぁあッ!!」



が、意外な事に浅茅兄弟の態度は周囲の心配をよそに冷ややかなものだった。

「「はぁ?」」と、言ったきり、時と目で彼らを見るだけで、次のセリフを待っている。



「あ、いや、だから、みゃあさんを是非我が部のマネージャーにだな?」



「うん、あの猫をマネージャーにしたいってのは、わかった。で?なんで、俺たちがお前らと勝負って話になるんだ??」



んにゅ?と、『あの猫』と呼ばれたとうのみゃあは、キョトンとした表情で机の上に正座していた。前回の事件以降、みゃあは、尊にあいに度々学校に遊びに来るようになっていた。どういうわけか、学校側はこの部外者の不法侵入を問題視していない様で、教師ともどもノータッチだ。



「いや、だって、お前らのだって主張してるそうじゃないか?」



「お前らなぁ、そもそもあの猫は、うちの学校の生徒じゃねぇんだぞ?どいつも、こいつも、こっちに来ては似たような事言ってくるけどよ。そもそも、うちの学校の生徒でもない奴をマネージャーになんかできねぇだろうが?」

そうなのだ。

みゃあは、基本的に内の生徒ではない。

だから、前提として『みゃあをマネージャーにする』というお願い自体がナンセンスなのだ、『部員にする』も、同様の理由である。

今までにお願いに来た連中を、この兄弟は片っ端から断ってきたわけではない。単純に、実現不可能な現実を教えてやったまでだった。

なお、みゃあの扱いはコスプレ猫耳マニアの外国人(電波系)と言う事になっている。



「あっはっは!その問題は解決ずみSA☆!」



バカっぽい声が辺りに響いた。いや、正真正銘馬鹿の声が辺りに響いた。

急にパッとあたりが暗くなる。

カッと、そこにスポットライト…代わりの懐中電灯に照らされ、一人の男が教壇の上にあらわれた。



「この伊神金丸の手にかかれば、みゃあちゃんの入学くらい訳ないSA☆――て、へぶぉッ!!」



「おっと、すまん、ついついぶん殴っちまった。事故だ」

「ああ、なんだ…事故か、事故なら仕方ないよね。うん、すっごく理不尽な気がするが、今はどうでもいい、それより、正樹よ」

「様をつけろよ、ゴキブリ野郎」

「ひどいなッ!!――いや、そうではなくてだなッ!君達があんまり、みゃあ君の事で門前払いをするものだから、『みゃあちゃんを入学させて、悪魔(浅茅兄弟の魔の手から)救いだ出そう』という内容で、署名活動が行われてね、現在、500名分署名が集まってるのさ。まぁ~僕も、生徒会長としてやむなしだったわけだよ」

「本音は?」

「正樹が困るだろうと思ってOK出したw」

「死ねよ!お前ぇぇぇえ!」

「ちきしょー!この間のお返しだぁ!ばーか、ばぁぁかあ!僕の3万円返せよぉッ!!って、げぼっ!あ~、良くないと思うなぁ。それはよくないと思うよぉ?暴力は罪だと―ギブギブギブギブッ!!!」



チョークスリーパーがバカね丸の意識を奪ったところで

はぁ・・・とため息をついた。

そう、実は、バカネ丸はこれでも、支持率0%で生徒会長に当選した男なのだ。

簡単に言うと、生徒会長という座を、学校から金で買ったのである。

基本的にバカネ丸の侍従たちが生徒会運営をしている事で健全に回っているので、誰も文句こそ言わないが、時折、こいつはこういう馬鹿をするのである。



「まぁ、いいんじゃねぇの?」

と、輝樹が言い出した。

「お前なぁ…」

何を考えてるのか、何も考えていないのか…。がっと、兄弟肩を組んで顔を近づける。相談タイム。

「そうやって、どうせお前は見学なんだろ?」

「ま~な、出てこられても困るだろ?それに、猫の正体がマジ物の宇宙人ってバレるのは面倒だっていったのは誰だ?」

「俺だよ」

「それにな?ここで勝っときゃ多分、こういったことはもう二度と起こらない。何せ、うちの野球部はスポーツ部で一番実績上げてるからな」

「あのなぁ、輝樹。いくら何んでも無茶言うな。言っとくが野球は完全なるチームスポーツだぜ?俺が眼鏡を外しても、勝負にならねぇよ」

「その点は、問題ない」

「あん?」

と、そこで、相談タイム終了。



「OKわかった認めよう」

と、正樹はこの不利な提案を飲んだ。

(で、これからどうする?メンバーは・・・・)

すっと、輝樹に合図を送ろうと、すいっと目配せをすると、そこにすでに輝樹はいなかった。

ガラッと、窓が開く音を聞いて初めて、正樹にも輝樹が何をしようとしているかわかった。



「おいッ!運動部のやろうどもッッ!!野球部が『お前らのみゃあ』を独り占めしようとしているぞッ!!!」





エコーを伴って、運動場全体に伝播する輝樹の大声。

(やりやがった…)

いや、しかし、これで運動神経がある連中を本当に引き込めるのだろうか?

何しろ、彼らにとって「本当にみゃあを占有している」のは浅茅兄弟なのである。

それに気付かないほど馬鹿では…。



「「「「「「おおおおおおお!!!野球部の横暴を許すなぁああああ!!!!」」」」」」





――いや、馬鹿だったわ。



みゃあのデザイン

お久しぶりです。
気がつけば、夢がかなって一年経ちました。
しかし、もう一つの夢がまだまだちっともかなっていません。

叶えようとして突如走り出した企画。
イラストを書いて小説を書いて。

しかし、イラストに関してはクオリティの低さに悶絶する日々。

イラストの勉強するかと思い立ち、いつの間にかこんなにも時間が経ってしまいました。

これだけ時間が経てばデザイン設定とかも、見た目はあんまり変わってなくても細かい所で変わっていたりするのです。


そんなわけで、現在のみゃあの設定画です。








そんなわけで、これからは、こんな感じのみゃあが動きます。
より可愛くを目指して。


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