蒸れないブログ -132ページ目

絵 線画

ちょっと絵がらが崩れて苦戦中です



天縁尊・・・・


新塵碕行の蒸れないブログ-mikoto


ストーリー後半がかわいそう過ぎる・・・・

絵 ばかっぽい表情を描こう


新塵碕行の蒸れないブログ-金丸

香港幻影 ルート 香港幻影・狂騒譚 その2

モクモクと今も倉庫から垂れ流されている白煙の中・・・・。
赤黒い血で服を染め上げ、笑顔でたたずむ少女。
白く細く伸びた四肢。
握られた鉄の塊。
うっすらと赤みがかった頬。
折れてしまいそうで―折ってしまいたいと思わせるほどかよわい首。
裸足の足が、硬い地面の上にやわらかく立っている。
彼女はこの世で最も美しく―酷く醜い。

背景が湖畔であれば絵画となりえたろうその光景。
彼女が加害者でなければ素直にきれいだと称賛したであろうその光景。
すべては台無しだ―俺は、彼女を『崩れ堕ちる生き物』にしか見れなかった。

「あの~、えと、挨拶が違ったのかな。ちゃお~?おら~?ぐーてんた~く?ば~むく~へん←?はろ~わ~く?」
すっと、少女の顔が鼻先まで近寄っていた。こちらをのぞきこむように見上げている。
ふと、かすかに薫る甘い匂い・・・血の匂いと混ざってむせかえりそうになりながらも、少女から距離を置いてしまった。
少女の大きな目がぱちくりと瞬きして、こちらの心の底をうかがうように観察する。
見えているのだろうか?
俺が彼女に抱いている感情・・・。そう思うと、よけいに自分でも把握しきれない感情が渦巻いてくる。恐怖とも憧れとも好意とも取れない・・・・しかし、確実な嫌悪ではないのだ。それが余計に腹立たしい。自分は目の前いいる非人間を否定できないでいるのだ。

「ん~、どうしました~?」

―どうして、人を殺したばかりなのに―こいつの笑顔には陰りがないんだ・・・・。

「へーい!かんのじょ~!」
その素っ頓狂なほど場違いの軽薄な声に、大きなため息とともに感謝した。
おかげで、少女から、心が解放される。あきれるほどのチョンの『通常営業ぶり』に、普段の自分が返ってきたのだ。
「どうやってかは、途中全く記憶がかけらとして真っ白で奇妙奇天烈摩訶不思議なんだけどさ、助けてくれたんだよね~、サンキュー!サンキュー!ハッ、感謝しております!なんつって」
(そうか、覚えてないよな。気絶してたもんお前。全然不思議でもなんでもないよ)
あいも変わらず奇妙なテンションで、感謝の敬礼をするチョン。ついでに、敬礼する時の手が逆で左手になってるあたりは、細かいところをとってもチョンクオリティといったところか。
「ああ、いえ、仕事ですし、えへへ。」
そう言って、顔を赤らめながら少女はうつむく。
とてもさっき問答無用で黒服たちの眉間に鉛玉をぶち込んだ人間とは思えいほど、純情な反応だ。
「この仕事で、人から褒められるのは初めて出す。祝快挙~ぱちぱち」
ところどころ言動がアホな子なのがかわいそうなのはなんでだ?
そんな感想を抱いていると、気づけば、倉庫からの煙が落ち着いてきた。
「おい、それより、どういうことか説明してくれ」
と、倉庫に指さして言った。
まだ、僅かに出ている煙を見てチョンがようやく気づいたらしく、あわてて口をふさぐ。
「どうして、毒ガスが偽物なんだ?」

そう、本来ならば、この煙を吸った時点で俺もチョンも死んでいるはずである。
にも関わらず、平然としていられるのは、この少女が指摘したとおり、この煙が毒ガスでも何でもなかったということだ。


毒ガス―人体に有毒な作用を持つ気体という意味では広義的に有毒ガスに付属されるが、この通称で呼ばれる時、それを指すものは兵器である。
兵器としての毒ガスの威力はジュネーブで採択された文章通り、戦争で用いられることが国際法に反する大量殺戮兵器であり、広島、長崎に投下された原子爆弾などのいわゆる核兵器(nuclear weapon)や、ウイルス兵器、天然痘改良型兵器などで知られる生物兵器(biological weapon)などと同様、NBC兵器の一角を担っている。
日本では、オウム真理教が起こした地下鉄サリン事件で脚光をびいるようになったが、その歴史は古く、惰弱なものであれば、我が国―明代において、唐辛子を燃やした煙などがそれに当たるだろう。
そういう意味では、大変原始的な武器であるにもかかわらず、近代科学はこれを、悪魔の兵器にまで成長させた―人間の闘争を人間の手で成長させてきた証拠ともなる兵器である。
核兵器に比べ、安易に手に入り、効能は致死的、種類によっては土壌を汚染し、その後も死を振りまく。ベトナム戦争では、ガスという形状でこそなかったものの、同じ化学兵器である枯葉剤が散布された。その効能は、森林の破壊だけにとどまらず、人体のDNAにまで破壊的な被害をもたらす、奇形児を生み出している。


俺の問いに少女は「さぁ?」とだけ言った。
「さっきも私言いましたけど、偽の情報をつかまされた―ええと、私もここに置かれているものは毒ガスだと聞いていたんですが、違うみたいですねぇ。
化学兵器は、その定義が広いせいか、その種類、用途によって効能が違いますが、私が聞いた限りでは、ロシアの無力化兵器KOLOKOL-1を遥かに超えると即効性の薬物と聞きました。致死性は、ほぼ100%に近いとききます。
その割には、私達元気いっぱいいっぱいですから。」
いっぱいを二つ重ねると、追い詰められているような気がするが―それはさておき、KOLOKOL-1といえば、ロシアで起きたモスクワ劇場占拠事件で用いられた無力化を目的に開発された毒ガスで、致死率は低いとされてきたが、実際に使用されたモスクワ劇場の事件では、『人質もろとも』129名中毒死させた悪名高き武器である。
もっとも、確かに殺戮を目的にするには、922名中死者129名は、致死率に問題があったのかもしれないが、初発症状事態は吸引後2~3秒で、効果が出ることから、即効性の効果は高い。
そのガスが致死率100%になったものだと考えれば、今更ながら、自分たちがどれだけ恐ろしい兵器を運び出そうとしていたかを考えただけでも背筋に冷たいものを感じる。
ましてや、少女のいう通り、吸っていたら俺たちが平然としていられるはずがない。
「だいたい、当事者のあなた達や黒服さんだって『一部を除いて』勘違いしてたみたいですしぃ、私に聞かれても分かりませんよ~」
先ほどからとぼけた口調だが、実際その通りだ。
俺は、一巡り思案していると、少女はふと、倉庫に再び戻って行った。
「おい!何をするつもりだ?」
「事後処理で~す。そこで待っててくださいねぇ。」
俺はその言葉を無視して、少女の後を追うように再び倉庫に入った。
「おい!セイロン!あの女の子はそこで待ってろって」
「バカ、お前。今回の仕事のぶつ事態が偽物だったんだ。仕事の不履行の言い訳に、偽物のサンプルを回収しなきゃならないだろう?」
チョンは、その言葉に頭を嗅ぎながら「仕方ないなぁ」と、呟いて俺の後を追ってくる。
「シエラさん怒らせると怖いもんなぁ・・・・はぁ、これは今回の報酬もお預けか、損損散々苛々(そんそんさんざんいらいら)っす・・・・」


一応、落ち着いたとはいえ倉庫内は今も白い煙が柔らかに漂っていた。
セイロンは、倉庫内から、今回『まんまとはめられ』回収するはずだった宝石を一つとりだした。
少女は黒服たちの遺体を、一か所に集めて並べている。
死体に調べ物でもあるのだろうか、あちこちめくってみている。

乾いた音が二つ聞こえた―柏手(かしわで)だ。

少女が手お合わせてお辞儀した。
自分で殺しておいて何とも律儀なことだ。
正しいことには違いないが、そんなことをするくらいなら殺すな、とも思う。
彼女は何を考えている?
今の彼女の様子から、人を殺すことに対する正しい認識はあるようだ。なのに、戦闘中の彼女はまるで別人のように殺人狂だ。ホミサイダルマニアック―彼女は確かに楽しんでいた。
鉄の匂い土地の匂いで最高潮(クライマックス)に高ぶっていくさまを俺にありありとみせつけた。
まるで、別人だ。
実は双子の妹がいるとかいう設定はないのか?
ふと、そんな馬鹿なことを考えてしまう・・・・。
少女は、男たちのポケットから煙草を取り出した。
そういえば、マルボロをくれとか言っていた。あの年で愛煙家―人のことは言えないがまともな育ちではないのかもしれない。日本は平和な国だと聞くがそれもそれぞれと言うことか?
少女は不慣れな手つきで、タバコをくわえて火をともす・・・。
「けほけほ」と、咽返ってすぐに煙草を口から離すと、それを器用に地面にたてた。
この少女は何をしてるんだ?
結局、残りの煙草も吸いもせず、タバコの横に置いてしまった。
「何してるんだ?」
「ん~、お線香がわりですかねぇ。本当に申し訳ないんですけど・・・こんなことしかできませんから。」
えへへ、と困ったように少女は笑った。
俺はますます混乱した。

死者に哀悼する少女。
死者を生産する少女。


どちらが彼女の本質で、どちらが本物の彼女だ・・・?


「まぁ、どっちだって違いはないのかもな・・・」
「え?」
「なんでもない・・・」


「おい!セイロン、みろみろ!これ海外のエロ本!日本性だよ!おお!さすが几帳面な日本人だけあってテクニック解説が、すげぇ!」

チョンが、倉庫の荷の中から何やら発見したらしい。
興奮しすぎだ、中学生かおまえは。
俺は、ため息交じりに『帰るか・・・・』と呟いた。

「待ってください」

俺とチョンは少女に振り返る。

「私の依頼が残っています」

そういえば、そんなことを、言っていたような気がする。
「私の言うところまで付いてきてもらいます。いいですよね?」

確かに、命の恩人である彼女の提案に拒否権はないのだろうが―どうも嫌な予感がする。
ここは断っておいたほうが無難だろう。
「俺たちは―」
「はい!ついて行くぜ!オレッチならどこまでもついてくぜ~」
駄目だった・・・。


俺たちは、車で移動することになった。
運び屋家業としてはまさしく、相棒たるこの車はアウディR―8(盗難車)である。
もちろん、免許は持っていない。あえて言うなら、相棒のチョンのドライビングテクニックこそが唯一この車を操っていい許可証だろうか?
チョンは、これでも車に関してだけ言えば、メカニック、操縦どれをとっても天才的だった(ついでに車を盗むことに関しても)。
実際、運び屋家業なんかがまかり通ってるのはチョンによるところが大きい。
チョンに追いついたことのある車と言うのは今まで見たことがないのだ。
速いというか、クレイジーな判断と、確かな運転技術が合わさって生み出された車の軌跡についてこれる人間がいないのである。
チョンに追いつこうと躍起になった車体は、例外なく自滅する。
チョン曰く、「競技屋(レーサー)じゃないんだ。逃げるだけなら速く動くより、ついていけない動きをする方がはるかに効率的だ」らしい。
普段は、ふざけた男だが、殊、車に関してだけはまともな意見が言える。
ああ・・・良かった。俺がこいつを相棒にした理由をやっと思い出せた。チョン株が、順調に回復しつつある。
「で、ええと・・・」
「吉田です。吉田蓮。でも『蓮』って読んでください。私が私の人格を規定しているのはそれしかありませんからぁ。」
「で、蓮、俺たちはどこへ連れて行くつもりだ?そもそもお前の目的は?」
「決まってるじゃないですかぁ。私、『咆哮会』の依頼で来たんですよ。目的地は、あなたのお母さんのところです。セイロンさん」
「ッ~いうことかぁ~」
その瞬間、俺は頭を抱えて大きなため息をついた。
なるほど、よく考えれば、こんないかれた女を俺に差し向けてくる存在は、かなり限定されている。
「おいおい!お前の母ちゃん、『咆哮会』関係の人か?オレッチ初耳だぞ!」
チョンが、慌てふためく。
それもそうだ。
『咆哮会』という名前は、この業界では絶対的なのだ。

『咆哮会』は、いわゆる中国マフィアだ。
他の中華マフィアとは違い、上層部のほとんどは軍属崩れで構成されており、完全なる武闘派の組織―厄介なのは中国公安警察にまで太いパイプがあることで、その恩恵か、やりたい方大している連中である。
実際、香港の歓楽街の半分は咆哮会経営だし、まっとうな会社ですら咆哮会の庇護の下で活動している。その支配率は香港の裏の世界を牛耳っているといっても過言ではない組織だ。

「知らないんですか?チョンさん。セイロンさんのお母さんは、『咆哮会』関係の人どころか、完全な『咆哮会の人』いえ、『頭』ですよ」
蓮がいらない追加情報をチョンに与える。
「ンだとおおおおっ!」
チョンがハンドル操作を放棄して、手を上にあげるほど驚愕している。
―危ないから良い子は真似しないように。鉄の精神で運転に当たれ。
車はに三ふらついた後、ようやく安定する。その後は、ひたすらじっとりとした批判的な目でチョンに見られた。


だが、反論しても無駄だろう。
なにせ、本当のことだから―言い訳は通用しない。
母―リー・スーシーは、『女帝』と呼ばれるほど血も涙もない義侠であり、咆哮会を操り、今の地位にまでのし上げさせた功労者にして現頭目。ろくでなしマフィアのろくでなしの母親なのだから。
咆哮会を拡大させる上で、母が潰してきたほかのマフィアグループは数が知れない。
同時に母の殺してきた人間の数はもはや、山で数えた方が早いくらいなのだ。


俺にとってそんな母は世界で一番嫌悪する存在である。


まぁ、話さなかったのは悪いと思っている。
でも、俺にも意地があったのだ。



◆ ◆ ◆



母に反発して生きてきた。
母のやってきたことが、自身の気持ちの置き所に合わなかったからだ。
俺には、母の生き方が理解できない。マフィアの存在意義も分からない。俺にとって存在自体が悪そのものなのだ。

だが・・・昔はそれほど嫌悪してもいなかったはずだ・・・・。
一体いつの頃からだろう?
母と母の生業を受け付けなくなったのは?


ついでに、父は誰とも知れない。母が語ったことはない。
そもそも、俺は母に話しかけること自体が少なかったので、そんな踏み込んだことは興味すら湧かなかったのだ。

とにかく、俺は十二の時に母に反発して家を出た。
それは意地と大義があると信じての行動だったが、今にして思えば、子供特有の楽観だった。
最初のうちは、職を探して回った。
母の様にはなるまい―そう誓いを立て、『まっとうな仕事』を手に入れるため駆けずり回った。
甘かった。
何のコネもない。母の庇護のない俺は、単なるガキそのもので、ガキをまともに相手にする人間はこの香港にはいなかった。
空腹に苦しむ日々が続いた。雨に打たれて夜を過ごした。病気にかかった時は死にそうになった。
やがて意識は白霧の中をさまよい―昼と夜―時間の区別と、現実と狂気の境界が崩れていった。
それでも―悪事にだけは手を染めなかった。
母のようにはならない―その誓いはすでに信仰の域にまで高められていった。
だからこそ、生きてこれたとも言えるし、自分の今の有様はそのせいでもあった。


轟音の中で騒ぐ幻想都市―近代化と西欧化の町―すべてがこの香港にあるというのに、俺はそこにいなかった。


ずっと、白霧の中でごみをあさって生きた。
つまらない意地と、生きたいたいという本能が矛盾を繰り返し、さらに自分の現実を霧の中へ押しやっていく。

死ぬ死ぬ死ぬ

―もう駄目だ。諦めろ。心の中で念じ続けた。
―だが、駄目だ。
俺の中の核心が、根源が、けして母への敗北を許しはしなかった。

―俺は母とは関係のない人生を送るんだ…。
―『あの女』のいない世界で生きるんだ…。
―頭の中から『あの女』の影を・・・消すんだ。

だが、ついに限界を迎えようとしていた…その時―チョンにであった・・・。



◆ ◆ ◆



「おい!セイロン!」
俺はチョンの呼びかけにハッとした。
どうやら、意識が飛んでいたらしい。
自分でも、懐古する瞬間があるのかとちょっと恥ずかしくなった。

「お前・・・・・・」

俺は、チョンにいかなる批判でもされる覚悟をした。
親友だ、これで友情が壊れるとは思わない―だが、親友に隠し事をしていたのは俺に非があることだ。

「金持ちのボンボンだったのか―金かしてくんない?」

と、チョンはいつもの口調で軽口をたたいた。
一気に力が抜ける―脱力感で失禁しそうだ。

まぁ・・・お前はそういう奴だよ。だから、俺は救われてきたんだ・・・。


続く