のけのんくるくる
2008年の12月以前の話をしようと思う。
今回の場合は夏も盛りの7月のはなしだ。
偶然と言うべきかどうというどうかはともかく
『良くも悪くも』不幸体質と言うのは存在する。
トラブルメイカーとも言うべきか。
ただ、この不幸体質に救われているのも事実だ。
僕はそれで飯を食っている。
実にやくざな仕事だとは思うが、僕は世間で言うところのもめごと処理屋だ。
ただし―が付く。
ただし、怪異専門である。
こういうことを言うと、吸血鬼ハンターだとか、ゴーストバスターだとかを想像する人間も多いことだろうが、僕はいまだかつて、あの手の姿を見せて、はっきり攻撃してきて、なおかつ化け物っぽさ(笑)が残る西洋の怪物と言うのを相手取ったことはない。
今まで、それなりに『自壊』していただいたのはヨモシコメ辺りだったり、穢れのたぐいだったりしてきた。
案外知られていないことかもしれないが、
彼らを実体化した絵は、漫画やアニメで言うところの擬人化であって
神と同じく、あんなはっきりしたものではない。
そもそも、地獄捉えられる『黄泉』という言葉だってもともとは『夜見』のことで
いわゆる『夢』のことであったりする。
そこからいずるのが『穢れ』である以上。
穢れとは脳の中で感じる、無形の存在であることは明らかだ。
つまり、「幽霊がみえる」なんて言うのはペテン。
死者の霊は感じるものであって視覚するものではない。
ただ、万人が共通的な概念において感じることがある異常、はっきりしているかそうでないか以前にこの存在がある場合、それが非生物か、生物かを問いたくなるのが常だろう。
そこで、多くの人々が、擬人化した絵画か何かの影響で勘違いする。
実際、僕の知る限り、怪異と言うのは要するに『志向性のある現象』だ。
つまり、非生物か生物かを問う以前に、彼らは現象だったのだ。
故に、幽霊が『いる』―と言うのもそもそも間違い。
正確には、幽霊が『ある』。
現象であるが故に、これといった形がない。
形がないが故に恐怖し、もやもやとしたものとなる。
さて、話は戻るが
僕は、そう言った怪異にまつわるもめごとを解決することを仕事にしている。
吸血鬼を殺しもしない、ゴーストを掃除機みたいなもので吸い込みもしない。
狼男に出会ったこともなければ、スライムで経験知稼ぎしたこともない。
そういう男の話だ。
■
深戒櫃代は、困っていた。
23歳になって、大学にはいらず、そのまま就職活動をしたのが運のつきだ。
そもそも、彼は一般的な日本人とは生きてきた過程が違うので、彼の落ち度だとは言い難い。
ティーネイジャーのときには、南米を中心にテロ活動を行ってきたし(というより、行わされてきた)、テログループから命からがら足を洗って日本に帰ってきたところで、まともな学歴もない彼が大学に入ることはおろか、まともな企業はどこも雇ってはくれなかった。
だからといって、『探偵社』なんて、わけのわからないものに飛び込んだのはやはり彼の落ち度だったのだろう。
結果として、彼は探偵業とはかけ離れたことをやらされている。
「終わってるよな・・・」
誰もいないことを確認してから、そう呟くと、余計に終わっているような気がした。
その探偵社で彼に課せられた仕事は『怪異専門のもめごと処理屋』。
当然、仕事の多そうな職種とは思えない。
故に、彼は飢えていた。
探偵社は、まともな仕事を回してくれない。
それなのに、こんな仕事に従事されても。
自分から仕事をとってこようと思っても、そもそもこの稼業をどう宣伝したものか?
下手したら、変なカルト教団と間違われかねないし
つきもの落としのような、ことをやっているわけでもない。
家が神社の家系であったから、祝詞くらいは知っているが
『あれを人前でやるには、祝詞の言葉は彼にとっては強すぎる』。
かといって、吸血鬼ハンターみたいなカッコいい内容ができるわけでもないし
そもそも、そう言う肉体労働にはとんと不向きだ。
「だいたいさぁ・・・。吸血鬼なんて、現代小説が発端の超歴史の浅い化け物だろ?あんなものを怪異の王と言うのはどうなんだ?そもそも吸血鬼の伝来由来を調べたところで、かの有名な『串刺し公爵』に既存の狼男なんかを混ぜただけの存在だし、ぶっちゃけた、話。怪異の中では下の下の下くらいのそんざいなんじゃないの?でも、アルクェイドには萌えるね。あれ、僕の嫁・・・・・。」
途中から何を言っているかわからなくなっていた。
不毛だな。などと思いつつ。
そんな時、待望のノックの音が聞こえた。