24日に25分間の一般質問をおこないました。
本会議場で、区政の方向性について質問を通して問います。
足立区議会では、1年に1度しか一般質問にたてません。
あれもこれも取り上げたいテーマがあるのですが、2つと限られた中で今回は貧困問題と介護について行いました。
大きな政治ー国会には関心を持つ人が多いですが、なかなか身近な地方政治には、関心をもってもらいにくいと普段感じます。
自治体がすべき仕事とは何なのか、考えながら今回の質問を組み立てました。
<以下質問の内容です>-------------------------------
テーマの1つめは、誰もが豊かに暮らせる街づくりについて質問します。
現代の貧困とは何か。特徴は極端な格差拡大にあります。国際NGO OXFAMの調査から、8人の大富豪の持つ資産が世界人口の約半分36億人の資産と等しいことが明らかとなりました。マイクロソフト社のビル・ゲイツ氏やZARA創業者など8人の資産の合計は4260億ドル(48兆7000億円)です。現代の貧困は、日本においても非正規雇用の拡大、税の再配分機能の弱体化等により、極端な格差をうみだし・見えない貧困が広がってきています。
子どもの貧困率は16.3%と6人に1人の子どもが貧困にあえいでいます。子どもの貧困は親の貧困の反映です。
2月11日にNHKで放送された「見えない“貧困”」は子どもの貧困をルポした番組です。子どもたちの貧困は見た目ではわかりづらくなっているが、各地の自治体でも始まりだした実態調査からは、相対的貧困とはどういうことか、見えない貧困の可視化が進みだしています。
まず、「子どもたちはどのような困難に直面しているか」の把握について伺います。
当区では全国に先駆け、小学一年生の保護者を対象としたこれまでになかった規模の子どもの健康・生活実態調査がおこなわれ、継続して調査をしていくとしています。
子どもたちは具体的にどのような困難に直面しているのか。実態把握から早期発見、予防に必要な施策が見えてくる、大切なことです。
①区の発行する子どもの健康・生活実態調査平成27年度報告書の中では「今後、『生活困難』と子どもの健康状態との連鎖の解消に向け、この『変えていくことが可能な要因(間接的影響)』に対して有効な施策を検討していきます(第3章)」とある。全体を通しても「生活困難」と「変えていくことが可能な要因」と2つに分けて記されており、生活困難については変えていくことが不可能と考えているかのように受け止められるが、どうか。
②「未来へつなぐあだちプロジェクト」と題した子どもの貧困対策・実施計画では、貧困に関する指標に関して「子どもの貧困の要因とそこから生じている課題は、教育機会の確保や生活環境の安定、保護者の就労など多岐にわたり、かつそれらが複雑に絡み合っていることから、各々の指標に対して目標値を設定することは現時点では、困難だと考えています」とのことですが、具体的にいうとどういった課題に対し、目標値を設定できないと考えているのか、また将来的に指標とすることをめざしているか、どうか。
「見えない“貧困”」の番組には残念ながら足立区の施策は登場しなかったが、大阪府と東京都大田区の実態調査が紹介されていました。
現代の貧困は相対的貧困といわれ、昔のような絶対的貧困、生命を維持するために必要な食料・住居がない状態とは違い、暮らしている社会の標準と比べて何がしかが下回っている状態をいう。だから、戦後の欠乏状態と比べると、貧困状態が見えにくくなっています。
子どもたちは何に困っているのか、可視化する新たな指標に「剥奪指標」があり、大阪府と大田区の調査では項目に入れられています。剥奪指標とは、生活水準そのものを直接的に測定しようとするアプローチで、実際の生活に必要なものやサービスをリスト化し欠損を調べることで実態を把握するものです。
大阪府では200の項目から子どもを取り巻く剥奪状況が調査されました。たとえば、「進路を変更した」「医療機関に受診させられなかった」「キャラクターグッズがない」「家族旅行ができなかった」「お年玉をあげられなかった」「子どもの誕生日を祝えなかった」「新しい服や靴を買えなかった」といった項目です。
相対的貧困の見えづらさの例として「スマートフォン・タブレットを持っている」「自転車」「ゲーム機」「テレビ」など子ども同士のコミュニケーションに必要なものは、生活困難世帯も非困難世帯と同様の所有率となっていることが紹介されていました。「スマホをもっているんだから貧困じゃないでしょ」とは言えないということです。ここに、貧困の見えづらさがあります。
当区の調査票にも、経済的理由のために「ない」ものがあるか、問う項目はありますが、そこであげられているのは「洗濯機」「炊飯器」「電話」といった基本的な家電が主となっています。基本的な家電は持っていても、平均的な家庭が子どもに経験させてあげられることができない、いわゆる「見えない貧困」が区内ではどういう状況なのか、もう一歩踏み込んだ調査を行えないものでしょうか。
③子どもたちが奪われているものは何か把握を進めるために、物的資源の欠如・つながりの欠如・教育経験の欠如について調べる「剥奪指標」を当区の調査項目に、より加えるべきと考えるがどうか。
大田区に暮らす小学5年生のA君は、両親ともに非正規雇用で、父親は体が悪いといいます。剥奪指標のうち「新しい服を買う」「おこづかいを渡す」「家族旅行」「宿題の場所が家にない」の4つが当てはまり、大田区は3つ以上を要支援とするため基準を満たすことになります。A君は自分の将来が楽しみかという問いに「そう思わない。もし無事に大人になれても大人になったあとも大変だと思うので」と答え、自己肯定感をもてないといいます。
大田区では全小学5年生と保護者を対象に調査し、21%が何かしらの支援を要する世帯でした。
④当区では「生活必需品が不足している世帯」は約16%というが、剥奪指標について調査すると、より支援を必要としている子どもたちの姿が浮き彫りとなるのではないか。今の、歯磨きや読書状況からより踏み込み、足立区の未来を担う子どもたちの実態把握を進めるべきと考えるが、どうか。
⑤調査の対象に子どもの貧困当事者である子どもも加えるべきと思うが、どうか。
次に、平等な機会・義務教育の保障についてです。
小学5年生のBさんは、小学生になってからはお下がりばかりで、新しい服を買ってもらったことがないといいます。働く母親に代わって、学校が終われば友達と遊ばずに家に帰り、洗濯物をたたむなど家事をおこない、親の帰りを待つといいます。
中学3年生のC君は、制服をお姉さんのお下がりのブラウスで過ごしたといいます。バスケットボール部のキャプテンを務めるが、部活を続けることを諦めました。C君のお母さんは病院でパートの仕事をし、月々14万円ほどの手取り収入に、児童手当を加えた約20万円の収入でC君と高校3年生の姉、小学生の妹と3人の子どもを育てます。C君は「家の事を見たら仕方がないかなって。かといってお母さんがちゃんと仕事をしていないとかじゃなくてやってくれているんで、自分も我慢できるところは我慢」しなきゃいけないと語ります。
自治体の貧困調査を手がける専門家は、こういった日本の子ども・若者の状態を「自助努力の限界にある」と指摘します。
子どもたちに必要なことは、自分の将来が見通せるようになることです。経済的条件で進路が見えなくなることがないように、親がどうであれ、子どもが教育を受けられるように、社会資源を投入することが、今求められる自治体の役割です。足立区は全国自治体と比べても優秀な財政状況である強みを活かし、子どもたちが自分の力で未来を切り開いていけるようサポートしてほしいと考えます。
自治体ができることのひとつに、「義務教育の無償化」があります。
全国で取り組む自治体が増えてきており、給食費無償化は55自治体、修学旅行費・教材費・給食費等すべて税金でまかなう「完全無償化」したところは、山梨県早川村を始め7自治体あります。
一方で、埼玉県北本市(きたもと)の中学校では、給食費が3ヶ月未納の子どもには給食の提供を止めると通知をだし、物議を醸したことがありました。子どもの給食費は、食堂での食い逃げ対策とは質の違う問題であり、学校教育費用の「負担」の問題です。親の経済状況がどうであれ、子どもが犠牲をこうむり、自己肯定感を傷つけられることがあってはならなりません。
①当区においては給食費の未納状況はどうか、また未納の理由はどうなっているか。
②未納者にはどのように対応しているのか、問います。
給食費の無償化は国会でも具体的な数字をあげた論議の段階にきています。
2016年3月には経済財政・諮問会議にて、民間議員より学校給食費の無償化が提案されました。同4月の参議院・厚生労働委員会では、福島みずほ議員が「オスプレイ2機分だ」と迫ったことに対し、政府参考人から4460億円が無償化に必要と認識が示されました。
③区単独での無償化実施は難しいものがあるかもしれません。政府に給食費無償化を実施するよう要望していくべきと思うがどうか。
④そして、貧困世帯にのみ的を絞った選別主義でなく、誰でもが享受できる普遍主義の視点からも、区としてもどうすれば給食費無償化が可能になるか、具体的な数字をあげた検討をすべきと考えるがどうか。
無償化に向けて、学校給食費の公会計化もひとつの手段とされています。
群馬県では平成19年に県下市町村・教育委員会に「学校給食の公会計処理への移行について」が通知され、自治労・学校事務協議会政策部の調査によると県下100%が公会計に移行しており、全国でも約3割の510自治体が公会計としているといいます。
文科省も2016年6月「教員の負担軽減等の観点から、学校給食費等の学校徴収金会計業務を、学校の教員ではなく、学校を設置する地方自治体が自らの業務として行うための環境整備を推進」することを通知で示しました。
教育機会の平等のための財政を保障することが、区の役割であり、民ではない自治体だからこそできる子どもの貧困対策です。
⑤当区も公会計化すべきと考えるがどうか。
次に、貧困の連鎖を断ち切る進学の保障について伺います。
千葉県が高校生を対象に実施したアンケートでは、アルバイトをする子どものうち51%が「生活費を補助するため」にアルバイトをしていると答えています。
高校2年生のDさんは、母親の収入18万円のところ、アルバイトを2つ掛け持ちし、月に7万円を自分で稼ぎ、生活費、通学費用にあて、進学費用の積み立てをおこなっています。毎日家に帰ると疲れ、学校も欠席しがちとなってしまうそうです。学校の担任は、日常生活から生活に困っているという雰囲気を感じることはほとんどなく、バイトをしないといけないほどの困窮状態にあることを知らなかったといいます。「見えない貧困」の一端です。
中間層を含む多くの世帯が「学費を負担する」ことが困難な現状をみれば、ごく一部の貧困層を救うだけでは解決できないところまできていると、とらえるべきです。
これまで経済開発協力機構(OECD)加盟国で、国の給付型奨学金がないのは日本とアイスランドのみでした。アイスランドは学費が無料なので、実質的には日本のみが公的な給付型奨学金制度をもちませんでしたが、2018年度から導入することが決定されました。
政府による給付型導入を機としてとらえ、区でも対象者を増やし、制度全体を「貸与」から「給付」へ変えていく流れを加速させるべきと考えます。
社会の入り口で、子どもが多額の負債を背負わせられています。2月22日付東京新聞は1面で「大学に進学することが人生のリスクになりかねない」と、奨学金返還が人生のリスクとなっている状況に警鐘を鳴らしています。一人ひとりの問題で済む話ではなく、社会的にとらえ、解決を図るべき問題です。
学生支援機構の奨学金で貸与型のものは、住民税非課税世帯では成績基準が取り払われ、要件を満たせば無利子の奨学金を借りられるようになる見込みといいます。
①国の流れに呼応し、区でもさらなる奨学金制度の充実を図るべきと考えるがどうか。
②区の開始した「償還免除型」制度は、進学を断念していた人を後押しする「奨学」ではなく、優秀な子を重んじる「育英」が優先されているが、生活費を子どもがアルバイトでまかなっていることを考えると、成績不振を本人だけの責任にすることは実態を無視しているに等しい。成績要件を緩和し、「償還免除型」制度をきちんと子どもの貧困対策に位置付けるべきと考えるがどうか。
③従来からおこなっている育英資金・貸付制度の利用状況を問う。成績要件や連帯保証人など要件が厳しいことから利用が少ないとたびたび指摘がされているが、現状はどうか。
次に、セーフティネットとしての生活保護について伺います。
生活保護を担当する自治体職員が、威圧的とうけとれるTシャツをきて世帯を訪問していた問題がありました。改善策として小田原市では職員を4人増員、また生活保護を「支える制度」としての職員の研修をおこなうといいます。
行政の生活保護に対する認識に問題を感じると、足立区民のかたより声を受けました。
困窮している人なら一定の条件で「無差別平等」に保護を受ける権利があり、誰でも無条件に申請できるものですが、当区ではどのような状況でしょうか。
①窓口での対応状況はどうか。窓口に相談に来られた件数に対し、保護に結び付く件数はどれほどか。人数と割合は。来訪者に優しい窓口になっているか。
②申請者の生活現場を見分して、決定判断が行われているかどうか。
③窓口にボランティア等を配置し、来訪者が相談しやすい体制を作るべきと考えるがどうか。
④職員配置標準―国の参考標準は80対1だがどのような基準で配置されているか、また現状はどうか。
⑤最後のセーフティネットとして区民を支える制度としての認識を職員が持って従事できるよう、援助の職員研修を実施しているか、どうか。
テーマの2つめに、尊厳ある暮らしを守る介護サービスの充実について質問します。
2015年6月閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」に基づき社会保障の削減が方針化されてきています。
「骨太方針」は「自助を基本に公助・共助を適切に組み合わせた持続可能な国民皆保険」にするという基本方針を掲げました。簡単に言えば、高齢者が自分の金で自ら介護をやることを基本として、少しは国が出すということです。
介護保険については「介護保険制度改革に向けて、高齢者の有する能力に応じ、自立した生活を目指すという制度の趣旨や制度改正の施行状況を踏まえつつ、軽度者に対する生活援助サービス・福祉用具・貸与等やその他の給付について、給付の見直しや地域支援事業への移行を含め検討を行う」とされました。
この方針に基づき介護保険の自己負担が引き上げられ、サービスの抑制、切り捨てが行われつつあります。
当区でも昨年10月よりすでに要支援1、2が介護保険から区の総合事業へと移行しました。他区の事例ですが、ヘルパー訪問がこれまで週3回だった方が総合事業化により2回に減らされ、倒れ、発見が遅れ、死亡となった事例が、介護事業所研修で報告されています。特に独居のお年寄りが、じわじわ追い詰められています。
1点目、総合事業化の問題点について伺います。
①2016年介護事業者の倒産件数は前年比1.4倍で108件と倒産が全国的に増加しています。区内では、総合事業化に伴いサービス単価切り下げの悪影響はでていないかどうか。
②サービスAを受けている人はどれくらいか。新規指定業者の参入はあるか。利用者の声、意見にはどのようなものが寄せられているか。
③「NPO、ボランティア等によるサービスの開発を進める」とあるがボランティア主体のサービスは開始されているか。またどうおこなっていくのか。
④訪問介護において利用者が満足する処遇のためには専門性が必要だが、無資格者をなぜ使おうとするのか。コストが安ければいいということなのか、どうか。
2点目、今後の介護保険の方向について伺います。
①要介護1と2を、介護保険から外すべきではないと考えます。
大西ひでと高松市長は「要支援の人の一部サービスは、全国一律の保険給付から外れ、市区町村の独自の事業に移行している最中です。これに現場は四苦八苦しています。このサービスの担い手として、民間事業者が期待したほど手をあげてくれない。小さな町村は人材が少ない。簡単に移行できる話ではないのです。その検証もできていない段階で、今度は『要介護1、2』を移行する話が出てくる。あまりにも時期尚早だと感じました」
「高松市では『要介護1、2』の人の約6割が認知症です。保険給付から外したら、対応が難しい事例が出てくる。保険料を払っているのにいつまでも介護保険のお世話になれない人が増えれば、保険としての信頼がなくなってしまいます」と意見を述べています。
もっともだと思いますが、足立区は要介護の保険はずしについてどういう認識をもっておられるでしょうか。
②政府に対して要介護1、2を介護保険から外すなと要求すべきだがどうか。
③政府は「自助」を掲げ介護サービスを抑制しようとしています。そして足立区は「協創」を掲げ自治体責任を縮小しようとしています。
高齢者が人として尊厳の守られた生活を送るためには、「介護サービスの充実」が必要であり、自治体が介護から撤退することではありません。
政府は、墜落する危険なオスプレイに2017年度予算で、391億円も使い、足立区は基金を毎年積み増しています。介護に金を使うべきと考えます。
政府は介護保険自己負担3割を導入しようとしていますが、導入しないよう政府に要望すべきと思うがどうか。
④介護職員の平均給与は月額26万円といわれ、他の産業より10万円低くなっています。その結果、介護職員の離職が増え、新規雇用が困難になっています。介護分野の有効求人倍率は2016年3月時点で4.79と全産業平均1.35よりはるかに高い現状です。2020年代初頭には全国で25万人が不足すると政府は推計します。新聞報道では事業所は「求人広告に全く反応がない」「介護を志す人材は枯渇している」と悲鳴を上げています。
政府は介護報酬介護職員給与1万円上げるために介護報酬を1.14%引き上げる方針を出しているが、それでは全く足りません。
当区では、待機児解消・保育士確保にあたって「奨学金返済支援」や「住居借り上げ支援」など独自施策をおこなっている。介護職についても待遇改善・事業所を支援するために、区独自策をとるべきと思うがどうか。
⑤要介護・認定率を抑制した自治体には財政援助を行うとし、厚労省は要介護認定や給付費のデータに基づく目標を立てるよう求めていますが、明らかに介護抑制につながることを懸念します。当区において、介護認定の目標をたてて、必要とする人がいるにもかかわらずサービスを切り捨てるようなことはないか。
⑥そもそも介護保険は被保険者の権利であり、勝手に抑制されるものではないと考えるがどうか。
給付を旨とする施策を訴えると、「お金がない」というような言葉が聞こえてきます。当区の場合は本当に「ない」わけではなく、優先順位の問題かと思います。
また、22日から始まった、東京都議会では、知事報酬削減に続き議員報酬2割カット、費用弁償は廃止、政務活動費月10万円の削減が可決されました。お金の「やりくり」の問題ですね。
足立区で区民ファーストを考えたときの「ベストミックス」はどこにあるか、皆さんと共に考えていきたいと決意を述べて、質問を終わります。