人知れず微笑まん-カリヨン

遺書を書き終えて、

ベランダに降り注ぐ陽光を見たとき、

その陽光には何の感慨もわきはしませんでしたが、


ふと、息子の顔を思い浮かべ、

日常の瑣末な事柄ですが、

伝えておかねばならないことがあって、

そのことをメールしたのです。


そうすると、

その高校生の息子から電話がありました。


「お母さん、聴こえる?」

受話器の向こうに、カリヨンの音色が聴こえているのです。


カリヨンが鳴る時間は決まっています。

その鳴る時間には、息子はそこを通ることはないのです。


私の心と身体がいうことを利かなくなってから、

子供達とも離れ一人で生活して数年になりますが、


以前、

そのカリヨンをもう聴くことができないと

息子に話したことがあります。

そのことを覚えていたのでしょう。

私の何気ないメールから、何かを感じたのでしょうか。




※カリヨンについて
カリヨン【(フランス)carillon】
さまざまな音高をもつ多数の鐘を一組みにした打楽器。
教会の鐘楼などにつるし、手や機械で打ち鳴らす。組み鐘。カリロン。
[ 出所:大辞泉 ]


※ずっと前に、お知り合いから、うかがっていたものです。
心に残っておりましたので、今回記事にさせて頂きました。
記憶を辿りながら纏めさせて頂いておりますから、
当然のことながら、文責は、私、heihachiroにあります。

この方は、今日も「ベランダに降り注ぐ陽光を」ご覧になられたとのことです。

とてもとても、繊細な方です。