「桜の森の満開の下」 坂口安吾著 | 50代からの読書

50代からの読書

子どもの頃から本が好き。若い頃はおもしろいと思えなかった本も今なら感動することもあり、読書を通して自分の変化を感じます。読書の記録を通して、50代の心の一端を残してみます。

 

「桜の森の満開の下」美しいけど怖しい

 

 

短編。ストーリーはシンプル。

 

山で自分の思うままに暮らす男。望みを通すためなら殺人も窃盗もいとわない。

でも山にある桜の森が満開になるとき、その下に足を踏み入れたときだけ、強い怖れの気持ちが湧く。

ある女をさらってきて自分のものにした時から、自分の意思を失いその女の意のままに行動させられるようになる。

 

女が男が知らなかった都会の知識を持ち込んで混乱させていく過程は、明治以降の日本人が新しい概念を取り入れようとすることを連想したし、満開の桜は心の中にある自然への畏敬の念かしらと思う。

 

というような連想はわくものの、なにか捉えどころのない話。バシバシと人を斬り捨てていくし、桜の花も恐ろしさしかもたらさない。救われない虚しい気持ちになる。

 

坂口安吾

1906-1955年、新潟県生まれ