昨日は九響の第九を聴いてきました。
なんだかんだで、やはり素晴らしい作品です。
そしてあれこれとクリスマスプレゼントを買ったりと、世間並のクリスマスを過ごしてます。
それにしても、今年はブルックナーを生で2回聴けたのが収穫でした。
そのうちの一つが第6番でした。
この曲のレファランスとしてよく聴くのが、クレンペラーによる演奏です。
クレンペラーというと、マーラーとブルックナーとで比較すれば、マーラーの録音の方が多く、世評も高いですよね。
インタビューで彼は両方とも同じくらい好きだと述べ、それに対してインタビュアーが「では何故マーラーの演奏のほうが多いのか?」と問われ、「マーラーは就職の世話もしてくれたからなぁ」と(笑)
しかしこれは恐らくフェイクで、実態は戦後彼が拠点としたフィルハーモニア管の所在地、英国のブルックナーへの無理解が理由でしょう。
彼はヘイワースへの対話で、EMIのプロデューサーにしてフィルハーモニア管のボスであるウォルター・レッグを引き合いにだし、こう語ってます。
「例えば、私はブルックナーの第6交響曲をとてもやりたかった。しかしこの曲は人気が無い。レッグはいつもこう言った『今ではない』と」。
商売人であるレッグからすれば当然の感覚なのでしょうが、ブルックナーの第8交響曲を第3楽章のみとは言え史上初めて録音したクレンペラーにしてみれば、レッグの認識や英国の現状は周回遅れに感じられたのでしょうね。
そこでクレンペラーは言わば「禁じ手」に出ます。
自らがシェフを務めるフィルハーモニア管と同じくロンドンに拠点を置くBBC響にアプローチし、ブルックナーの第6交響曲と「テ・デウム」をやってしまうのです
1961年1月の録音です。
手兵のベルリン・フィルがやりたい曲をやってくれないから、カラヤンがベルリン
放送響に話を持ちかけるようなものでしょうか?(違うか(笑))
さらにクレンペラーは無言の圧力をフィルハーモニア管にかけます。
同年夏には、アムステルダムのコンセルトヘボウ管に客演し、やはりブルックナーの第6交響曲をやります。
自分の支配下のオケではやらない曲を、客演先のオケのみでやるというのは、そうそうないと思います。
しかしそこは保守的な英国のなせるわざか、なおもこの曲をやろうとせず、遂にフィルハーモニア管がクレンペラーとこの曲を録音したのは、1964年になってから。
ご存知のように、レッグが身を引いたため、これによりクレンペラーのやりたいものがかなり自由に出来るようになったわけです。
なかなかこの曲をやろうとしなかったレッグや、受け入れなかった英国の聴衆の保守的な頑固さもさすがですが、80歳近くになっても頑強に粘りきったクレンペラーもさすがです!
それではみなさま、良い年の瀬をお迎えくださいませ。