今日は日本のオーケストラの父的存在の近衛秀麿がベルリン・フィルを指揮した録音を


モーツァルト 協奏交響曲 K297b

エーリヒ・ヴェンツケ(Ob)
アルフレート・ビュルクナー(Cl)
オスカー・ローテンシュタイナー(Fg)
マルティン・ツィラー(Hr)


曲目は偽作説もありますが、そんなことはこの録音の貴重さを前にしてはどうでもいいこと。

管楽器のソリストたちは、フルトヴェングラー時代とカラヤン時代の初期のベルリン・フィルを支えた名手たち。

1937年1月の録音です。




近衛は言うまでもなく、近衛文麿元総理の弟。
日本の様々なオケの創設に関わり、自らは作曲と指揮をこなした人。

オケをいろいろ作ったり、お金の使い方のスケールの大きさという点では、イギリスのビーチャムに似たものを個人的には感じます(^^)

ベルリンでエーリヒ・クライバーに指揮を、マックス・フォン・シリングスに作曲を、さらにはパリではダンディに学んだという、総理の弟で五摂家筆頭の貴族の出自という特別な立場はあったにせよ、当時の日本人の音楽家の望みうる最高の環境で学べた人かも知れません。

フルトヴェングラーとも親交を結び、フルトヴェングラーの本番やプローべに数多く立ち会い、その時のことは後年インタビューで語ったり、日本フルトヴェングラー協会の会長として活躍することで還元されました。

そして恐らくヨーロッパで一番最初に指揮者として認められた日本人だったかも知れません、ベルリン・フィルを筆頭に数々のヨーロッパのオケを、同盟国のドイツが敗れる直前まで振り続けました。

ベルリン・フィルに関しては、他にもハイドンの交響曲やムソルグスキーの「禿山の一夜」を録音していますね。

実演では、「新世界」や「未完成」、ケンプをソリストに迎えた「皇帝」、さらには自身の編曲による「越天楽」なんかも振っているそうです。


このモーツァルトの録音は、SPからの復刻なので、針音があるのは致し方ないんですが、おもいのほかに管楽器の艶が出ています。

特に第2楽章の膨よかな音楽は、時代を感じさせるとは言え、個人的には「こういうのがモーツァルトだろ!」と、ささやかながら昨今のヒストリカル派の音楽作りにチクリとしたくなる、そんな素敵な音楽です。


最近になって、少しだけ戦後の日本時代の近衛の録音も復活しているので、いわゆる近衛版と呼ばれる楽譜を使った演奏で楽しむのも一興かと思います。


あとは、世界史上初のマーラーの第4交響曲の録音も、久しぶりに復活して欲しいですね♪

1930年に極東の日本で、まだ本場ですら十分に理解されていなかったマーラーの交響曲を録音されたことに、もしマーラー自身が生きていたら、さぞや驚いたかと思います。


なおこのCDに他に収録されているのは…

・シュトラウス 「ばらの騎士」第3幕のワルツ
・シュトラウス  「サロメ」より「7つのヴェールの踊り」
・ヨハン・シュトラウス  「南国のばら」

以上、ワルター&ベルリン・フィルの1930年の録音。


・ニコライ  「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
・ワーグナー  「マイスタージンガー」第3幕への前奏曲

以上、ベーム&ベルリン・フィルの1936年の録音。


ワルターの戦前の録音は、ウィーン・フィルとのものが有名ですし、やはりベームの戦前の録音は、ドレスデンとのものが有名ですし、その意味ではありがたいCDです。