ずいぶん久しぶりにバッハの「マタイ受難曲」を聴こうと思いました。
さて、どのCDにしようかと迷いましたが、巨匠たちの厚手のバッハは、暑さの残るこの時期にはまだいささか暑苦しいので(苦笑)、今日はヘレヴェッヘの旧盤を選びました。

新盤ではボストリッジに替わるエヴァンゲリストは、旧盤ではハワード・クルークが担当。
また当時の教会では女性が歌うことがなかったことを考慮した歴史考証派らしく、アルトに関してはルネ・ヤーコプスがカウンターテナーとして歌っています。
さすがにソプラノにボーイソプラノは使っていません。
私自身はクリスティアンではないので、イエスの受難に対して特になにか感じることがあるわけではないんですが、歌詞からもやっぱり楽に聴ける作品とは思えません。
しかしながら、このヘレヴェッヘの演奏は、編成も含めて非常にすっきりとしていて、聴きやすさという点では個人的にはかなり好きです。
「お前の好きなフルトヴェングラーはどうなんだ?」と問われますと…(笑)
フルトヴェングラーは比較的頻繁にこの曲を演奏しています。
録音は第一部の断片も含めて3種類残されており、一番よく知られるのは晩年の1954年4月の録音です

オケはもちろんウィーン・フィル。
エヴァンゲリストをデルモータ、イエスをフィッシャー=ディースカウ、そしてグリュンマー、ヘフゲン、エーデルマンという神々の如き錚々たる歌手陣を配してます。
ちなみに、ソロ楽器も、Vnがボスコフスキー、Vcがブラベッツ、Flがレズニチェク、Obがカメッシュとまさにウィーン・フィルの黄金時代の名手たちが顔を揃えてます。
なお、演奏会場はこの規模の作品のため(当時のバッハですからオケも合唱も含めて当然大編成)、楽友協会ではなくコンツェルトハウスの大ホールでの録音です。
(フルトヴェングラーのコンツェルトハウスでの録音は極めて珍しいのでは?)
このCDは2枚組なので、「フルトヴェングラーのマタイはそんなに速いのか?」とか「フルトヴェングラーのマタイはあっという間に終わる」という感想を時おり耳にしますが、これは完全なる勘違い。
この時代の慣習的なカットで元々14曲がカットされている他、元テープの不調でさらに2曲がこのEMI盤ではカットされてるからです。
他方で初出のチェトラ社のLP盤は、EMIがカットした2曲も含まれてます。
研究によると、このフルトヴェングラー&ウィーン・フィルの演奏会は4月14日から17日までの4日連続で行われ、そのうち3回が録音されているとのことです。
従って、EMIがテープの不調でカットした箇所を残してるチェトラは、他の日の録音を用いた恐らくハイブリッド盤かと思われます。
演奏内容はメンゲルベルクの演奏ほどではないにしても、やはり時代を感じさせます。
もはやこういうバッハを聴くことは出来ないという意味では価値はあろうかと思います。