ギーゼキングが弾いたラフマニノフは、第2番と第3番の協奏曲があり、特にメンゲルベルク&コンセルトヘボウ管と共演した1940年のライブ録音は、何度も紹介してきました。

これまで、第2番はこの録音しかありませんでしたが、最近になって戦後のシュレーダー&ヘッセン放送響との録音が登場しました。
他方で第3番は他にバルビローリ&ニューヨーク・フィルとの1939年の録音があります。

トスカニーニ退任後、フルトヴェングラーの招聘に失敗し、まだひよっこのバルビローリが着任したニューヨーク・フィルは、そのあとに拳銃をポケットに忍ばせて、楽員を容赦なくクビにしたロジンスキーが着任するまで暗黒時代と言われてますが(苦笑)。
これも何度か書いたことですが、ラフマニノフはギーゼキングの演奏を聴き、ホロヴィッツと並んで自身の作品の良き擁護者だと評価したとのことです。
ギーゼキングは、同業者からも評価が高く、エトヴィン・フィッシャーやヴィルヘルム・ケンプといった人たちと親交を結んでいたそうです(およそこの二人のレパートリーにラフマニノフの作品は想像できませんが)。
また後輩たちだと、ホロヴィッツがベルリンにデビューした折りに、ギーゼキングの演奏を聴き、そのピアニズムに驚嘆したとか(後のナチを巡る両者の関係はともかく)。
またアラウは、ギーゼキングのベートーヴェンの解釈には留保をつけながらも、その他については絶賛してます。
巨体から繰り出すダイナミックな音と、その体型からは想像もつかないような繊細な弱音を出すこと、ペダルを極力使わずに透明感を保つ能力、そして聴き手には直接は関係ないですがクラシックの音楽家史上屈指の暗譜能力、そしてそれを武器にした途方もないレパートリーの広さ。
まぁ、彼の素晴らしさを挙げだしたら、きりがないですね。
このバルビローリとの共演盤も、メンゲルベルク盤と同じく、第1楽章のカデンツァは、ラフマニノフ自身やホロヴィッツも弾くことのなかったオシアのいわゆる大カデンツァを弾いており、録音として彼の次にこの大カデンツァを弾いたのは、ヴァン・クライバーンかしら?
また、この時代の多くのラフマニノフ弾きとは異なり、ノーカットで演奏しています。
1956年にロンドンのアビーロードのスタジオでベートーヴェンの「田園ソナタ」を録音中に突如として倒れ、そのまま他界したギーゼキングですが、実はカラヤン&フィルハーモニア管とラフマニノフの第3番の協奏曲を録音する予定もありました。
結局、ギーゼキングはこの曲の商業録音を残せなかったばかりか、カラヤンも結局この曲を一度も録音しなかったので、ギーゼキングの急死は二重の意味で損失だったと言えるかと思います。
そんなことを考えながら、このバルビローリとの共演盤を聴きました♪
音は年代相応ですが、ファンならば是非!