今年は言うまでもなくリヒャルト・シュトラウスの生誕150周年のメモリアル・イヤーですが、あまりシュトラウスの作品を取り上げてなかったので、今日は「祝典前奏曲」を♪
ご存知の通り、この作品は1913年のウィーンのコンツェルトハウスの柿落としのためにシュトラウスに委嘱された作品で、老帝フランツ=ヨーゼフが臨席したオープニング・セレモニー後、ブルックナーの弟子(そして改訂版の張本人)で知られるレーヴェの指揮で、ベートーヴェンの第九とともに初演されました。
C-durのいかにも祝典向きの明るい作品ですが、いかんせん5管編成+バンダというシュトラウスの作品の中でも特にクレイジーな規模と、オルガン付きということもあり、なかなか演奏される機会はありませんね。
今年はメモリアル・イヤーということで、N響も演奏してましたが、これで1時間くらいの大作なら、大量のエキストラを動員する甲斐もあろうものなのでしょうが、わずか10分程の作品。
まともなオケの経営者なら、たかだか10分程の作品に、こんな人件費をかけるわけはありませんよね(笑)
なお、ウィーンのコンツェルトハウスは、留学してたときに聴いた個人的な感想で言うと、やや冷たい響きがするかな?という感じです(あくまでもすぐご近所の楽友協会と比較して)。
オールド・ファンには、ウェストミンスター・レーベルの録音場所の一つとして知られるモーツァルト・ザールやシューベルト・ザールも、このコンツェルトハウスにあります。
基本はウィーン響の本拠地ですが、時おり編成の都合で楽友協会が不向きな場合に、ウィーン・フィルも演奏しています。
なお、コンツェルトハウスの階段の壁には、名誉会員の名を刻した大理石がありますが、そこに書かれてるのは、リヒャルト・シュトラウス、プフィッツナー、オネゲル、ブリテン、フルトヴェングラー、バックハウス、ベーム、パツァーク、バーンスタインなどの錚々たる面々☆
さて、今日聴いたのは

アーベントロート&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の演奏。
1940年3月5日の新ゲヴァントハウスでの録音(「新」ですが、1944年には空襲で失われます)。
これは、長らく登場してこなかった録音です。
元々、ドイツの音楽産業がベルリンに集中していたこともあり、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の戦前・戦中の録音自体が少なくて、それだけでも貴重なのに、その上この作品とは!

しかも指揮はアーベントロートで、オルガンは恐らく名手ギュンター・ラミン。
ドイツ帝国放送によるディスクへの録音です。
時期がもう数年後ならば、極めて音質のいいテープであるマグネットフォンで録音されてたはずですが、これ以上贅沢は言いますまい。
このCDは、ゲヴァントハウス管の歴史を綴った小冊子の付録のCDで、この冊子には当時の貴重な写真が掲載されてます。
煌めくシャンデリアとヴァルカーのオルガンが備え付けられたかつての「新」ゲヴァントハウスの外観・内観と、1944年2月20日の空襲で破壊された無惨な惨状が写真に残されてます。
この破壊のあと、ゲヴァントハウス管はライプツィヒ市内の映画館などで演奏活動を続けています。
因みにCDのカップリングは、やはりアーベントロートの指揮で、ダルベールのチェロ協奏曲と、フンパーディンクの「ムーア風狂詩曲」という激渋の作品の録音なんですが(この2つの録音は以前にTahraから発売済)、フンパーディンクの録音は1945年3月12日の録音。
つまりは、ドイツの敗戦の2ヶ月前、そしてライプツィヒがアメリカ軍に占領される1ヶ月前の録音です!
いったい、どんな気持ちで演奏活動を続けていたのだろう…
ついでに、近い時期にやはり帝国放送のこちらはマグネットフォンで録音された祝典前奏曲を

クルト・シュトリーグラー&ドレスデン国立歌劇場管。
オルガンは聖母教会のオルガニストであったハンス・アンダー=ドナート。
1944年5月17日のドレスデンの聖母教会での録音。
シュトラウスの80歳の誕生日を祝うものでした。
聖母教会のオルガンは、素晴らしいジルバーマンのオルガンで知られてましたが、こちらも1945年の連合国軍の犯罪的なドレスデン大空襲で炎上・破壊され、永遠に失われてしまいました。
その音色を後世に残してくれた貴重な録音です。
音もこの時代では考えられないくらいの圧倒的な鮮明さを保持しており、素晴らしいものです。