好きなフルトヴェングラーを聴くときは、常にスコアを前にしてしっかりと聴きます。

そしてやはり他の演奏家で聴くときよりも、体調の良いときに聴かないと、そのパワーに負けてしまうので、時期を選びます。


今日はそのなかでも、特にこちらの精気を吸いとられそうな「運命」を♪


同曲異演の録音の多いフルトヴェングラーの録音の中にあっても、この作品は「エロイカ」、「第九」、そしてブラームスの第1交響曲と並んで、録音数の多い作品です。

彼が録音活動を始めた1926年にDGに録音したのは、この曲と「魔弾の射手」の序曲でした。


因みに、現在存在するフルトヴェングラー指揮の「運命」の録音は、全てで12種類存在するはずです。

そのうち商業録音は、上記の1926年のDGへの録音(但し音質が劣悪なので、本家DGからはなかなかCD化されないしょぼん)、1937年のHMV(EMI)への録音、そして没年の1954年のHMV(EMI)への録音です(1954年録音のみがウィーン・フィルで、他の2つはベルリン・フィル)。

ということは、他の9種類はライブ録音か放送用録音ということとなり、録音場所もベルリンやウィーンの他に、パリ、ローマ、ストックホルム、コペンハーゲンと様々ですが、ローマでの録音を除いてはいずれもベルリン・フィルかウィーン・フィルとの録音です(ローマ盤はローマRAI管との録音)。


今日は12種類の録音の中から、1937年のHMVへの録音を♪



1937年10月8日と11月3日に、ベルリンにあった旧フィルハーモニー近くのベートーヴェン・ザールでの収録。

言うまでもなく、SP時代の録音です。


1926年のDGへの録音は、かつてはアコースティック録音とされてきましたが、最近の研究では電気式録音の初期のものとのことです。

とは言え、同じ電気式録音でも、1926年盤とこの1937年盤との間では、音質には雲泥の差があり、この間の技術革新を感じさせられます。


音はもうフルトヴェングラー&ベルリン・フィル全盛期のもの。

この当時、ベルリンにいて、ベルリン・フィルを振ったり、フルトヴェングラーのプローベや録音にも立ち会った故・近衛秀麿氏をはじめ、当時のフルトヴェングラーの演奏に接する機会をもった人の多くは、「フルトヴェングラーの最盛期は1930年代」と仰っておられます。

その当否はともかく、晩年、特に病を得た1952年以降の演奏とは明らかに違うのは、今日の水準からしてレベルの低いこの録音からも伝わってきます。

まずはこの分厚い響き。

これこそが、長らくドイツのオケが、そしてベルリン・フィルが持っていた響き♪

少なくとも、アバドとラトルという2代にわたる非ドイツ系の指揮者によってスポイルされてしまった今のベルリン・フィルには、到底期待できない響きです。


そして、振幅の大きかったフルトヴェングラーのデュナーミクも、思いの外この録音は拾えていて、第3楽章冒頭のppの入りとかもしっかり収まっています。
また、その探り探りの入りかたは、ライバルのトスカニーニとは本当に対照的だなぁと思います。

第4楽章に入っても、やはり全盛期と言われる時期のフルトヴェングラーらしく、素晴らしい覇気です。
収録時間の短いSP盤での録音のため、盤面が替わるたびに、多少音質にムラがでるのは致し方ないですが、それでもppもffも納得できるレベルで収録されてます。

コーダの凄まじいアッチェレランドは、大戦中の1943年の放送用録音や、1947年の復帰演奏会の録音には及びませんが、これは商業録音ゆえにアンサンブルを優先させたからかも知れません。


なお、第1楽章再現部の303小節のFgは、この時代の演奏の慣習通り、Hrに吹かせてます。


因みに、この1989年か1990年に発売された東芝EMI盤では、カップリングとして、盟友メニューインのソロによるベートーヴェンの2つのロマンス(1953年の商業録音)、そして比較的珍しいストックホルム・フィルを振った「レオノーレ」序曲の第3番の録音(1948年11月のストックホルム音楽祭でのライブ録音。マイクの位置が遠いようですが、登場の拍手から収録されてます)が収められています。