ここのところ、フルトヴェングラーの未発表音源は、あらかた掘り尽くされた感じで、ほぼ皆無に等しい状態でした。

新たにリリースされるCDも、 LPやSPからの復刻、いわゆる「板起こし」。

そりゃまあドイツ盤、フランス盤、イギリスetc.と元の媒体の状態で多少は違うだろうけど、所詮は音源は同一、よほどのマニア以外、一般の音楽ファンにとっては、正直どうでもいい話(笑)。



そんな中、今まで全く公開されていなかった音源が、フランス・フルトヴェングラー協会から登場ビックリマーク


チャイコフスキー 交響曲第4番

フルトヴェングラー&ルツェルン祝祭管


1949年8月24日のルツェルン音楽祭でのライブ。

音源は78回転のアセテート盤。



この年のフルトヴェングラーの活動は精力的でした。

1月には、友人のアンセルメが率いるスイス・ロマンド管に客演してこの年をスタートし、その後ミュンヘン・フィル、パリ音楽院管に客演。

その後、2月から4月までは、ウィーン・フィルとともに、ウィーンでの公演とEMIへの録音を行ってます。

5月には、単身でイタリアに入り、スカラ座管等をふり、6月にはベルリン・フィルとドイツ・ツアーを敢行してます。

そして7月末からは、ザルツブルク音楽祭に登場し、ウィーン・フィルとのオーケストラ・コンサートと、オペラでは「魔笛」と「フィデリオ」を振ってます(録音あり)。


そして8月下旬に、いよいよルツェルン音楽祭に登場。


この録音の24日には、チャイコフスキーの第4番の他に、ブラームスのドッペル・コンツェルト(シュナイダーハンのVnにマイナルディのVcという豪華ソリストで、録音もあり)、シュトラウスの「ティル」が演奏されました。


27日と翌日にはハイドンの「天地創造」(ゼーフリート、W.ルートヴィヒ、クリストフという素晴らしい歌唱陣)を振ってます。

こちらは、録音されたという記録はありますが、どうやら放送後に消去(!)された模様。

フルトヴェングラーのハイドンの録音は、交響曲が3つあったのみなので、これはぜひ残して欲しかったです。
しかも、この「天地創造」の演奏は、稀代の名演だったと言われてます…


さらにこのあとには、メニューインとルツェルン祝祭管で、ブラームスのヴァイオリン協奏曲のEMIへの録音を行ってます。


そして、9月に入り、今度はブザンソン音楽祭に登場し、コロンヌ管を振り、同月末のウィーン・フィルとの定期演奏会から1949/50年のシーズンを開始してます。



さて、前置きが長くなりましたが、フルトヴェングラーのチャイコフスキーの第4番。

言うまでもなく、1951年のウィーン・フィルとのEMIへの商業録音は有名で、彼がウィーン・フィルとEMIに残した録音の中でも、特に優れた演奏かと思います。

ロシアっぽさは案の定抑制し、あくまでも交響曲の本流であるドイツのソナタ形式の絶対音楽としての把握の仕方かと思います。



一方、新発見のルツェルン盤。

冒頭、スイスというお国柄を示すように、複数の言語でのアナウンスから始まります。

フルトヴェングラーの登場に対する拍手もしっかり録音されています。

また楽章間のインターバルもしっかり録られてます。


ただ、悲しいかな78回転の限界、数分単位でディスクの面が変わるたびに、音質はかなり変動します(苦笑)。


オケは正規の商業録音とは異なるものの、やはりフルトヴェングラーらしさはよく出ていますね。

特に第1楽章のコーダは、一旦かなりテンポを落とした後でのアッチェレが実に効果的で、まさにアゴーギクの達人。


第2楽章は、やはりObをはじめとする木管陣が聴きどころかと思いますが、かなりノイズに覆われてしまっているのは致し方ないところ。
とは言え、寂寥感はこの音質でも、十分に伝わってきます。


第3楽章は、マイクのセッティングのお陰か、この音質でも、弦のPizz.はかなり拾えています。


第4楽章は、やはり冒頭に打楽器も入るため、音がやや割れ気味です。
基本のテンポの設定は、EMI盤よりもさらに遅めに感じますので、恐らくその他の指揮者と比べると、かなり遅めに感じるでしょう。

楽章の最後、金管による運命の動機から、ティンパニの弱音のトレモロを経て、冒頭の第1主題が回帰するまでのクレシェンドとアッチェレは、まさにフルトヴェングラー!

この快感は、この劣悪な音質からも十分に伝わってきます♪


終演後も「ブラーヴォ」の嵐と拍手が長く収録されています。


また、別トラックには、研究用の協会盤らしく、修復前の音と修復後の音の比較のためのサンプルとして、第1楽章のコーダが2種類収められています。



久しぶりのフルトヴェングラーの大物の未発表音源の登場に、狂喜乱舞の私でした(^-^;)




ついでに、こちらは有名なウィーン・フィルとの商業録音