今日はハンガリー出身の往年の名ピアニスト、ユリアン・フォン・カーロイの録音を

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番
シューベルト 「さすらい人幻想曲」
ヘーガー&バイエルン放送響(ベートーヴェン)
1958年頃の録音。
カーロイはコルトーやドホナーニ(もちろん、指揮者のクリストフの祖父の方)に学び、後にドイツ国籍となっています。
来日したこともあり、十八番はショパンとリストでした。
録音は主にDGとエレクトローラ(独EMI)に残しています(今日では軒並み廃盤ですが…)。
まずは、エレクトローラへの録音である「皇帝」から。
LPからの復刻なので、チリチリノイズはありますが、問題なく聴ける録音です。
残響は多めで、風呂場に近い響きがしますが、ヘルクレスザールでの録音でしょうか?
第1楽章冒頭のカデンツァ的なソロは、カーロイはサラリと片付けます。
ダイナミクスはそれほどでもなく、少なくともルービンシュタインなんかの絢爛たる「皇帝」とかとは対照的です。
そのぶん、第2楽章はその美しさを堪能させてくれます。
ピアノのソロは、前打音からのオクターブ上昇から下ってきますが、その美しさも素晴らしいし、ターンなんかもセンスを感じさせます。
第3楽章の第1主題の処理も実に軽やか。
特に後半のAs-durに転調した第1主題なんかは、特にノリがいいです。
伴奏は、ベテランで当時バイエルン国立歌劇場の首席指揮者だったヘーガーで、放送響との録音は比較的珍しいもの。
「皇帝」の録音も、これのみだったと記憶します。
「さすらい人幻想曲」の方は、やはり「皇帝」に通じるところがあり、第1楽章(に相当するアレグロ・コン・フォーコ・マ・ノン・トロッポ)は、力で押さえつけるのではなく、非常に軽やかなタッチで、先般聴いたリヒテルとは対照的。
これに対して第2楽章(に相当するアダージョ)は、カーロイの良さが全面に出た感じがします。
190小節の3拍目のアルペッジョなんか、実に美しい和音を響かせてくれます。
第3楽章(に相当するプレスト)は、全体的にスタッカート気味で処理してます。
楽譜(小生の手元にあるのはヘンレ版)にあるアクセントも、あまり強調していません。
また、「皇帝」の時と同じく、カーロイのピアノはあまりダイナミクスが大きくないので、楽譜にあるfffからpppまでを、比較的狭いダイナミクスレンジで処理していることになります。
これは、第4楽章(に相当するアレグロ)にも言えることです。
対位法が苦手だと言われたシューベルトが、意趣返し的に書いたと言われるこのアレグロですが(同じような話は、マーラーの第9交響曲の第3楽章にも言われますね)、第1楽章のテーマがそのように扱われ、また断片的に現れたりと、聞き所満載ですが、ここでもカーロイはパワーで片付けてはいませんね。
案外この演奏は、どちらかと言うと非力なピアニスト(決してカーロイがそうだったというわけではありませんが)や、男性に比べてパワーで劣る女性のピアニストなんかには、参考になるのではとも思いました。
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