今日は

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番

アラウ(Pf)
クレンペラー&フィルハーモニア管

1957年11月のロンドンでのライブ。


この年の10月から11月にかけて、クレンペラー&フィルハーモニア管は、ベートーヴェンの全ての交響曲と協奏曲を演奏するというイベントを行い、大成功を収め、このライブもその一つ。


アラウの「皇帝」と言えば、翌年のガリエラ&フィルハーモニア管のEMIへの録音をはじめ、ハイティンクやデイヴィスとのフィリップスへの録音、他にもモントゥーやヨッフム(個人的には、史上最高の「皇帝」)、N響への客演など様々なライブがあります。

なにせ、ベートーヴェンで一時代を築いたピアニストですものね。


他方で、これでもかというくらいベートーヴェンの交響曲を録音したクレンペラーですが、どういう訳か「皇帝」に関しては、このアラウとのライブと、晩年の有名なバレンボイムとのEMIへの全曲録音があるのみ。

因みに第4番は、5種類もあるのに…



さて、クレンペラーとアラウ、個人的にはかなりタイプの違う音楽家だと思います。

剛直でいらぬロマンを排するタイプのクレンペラーに対し、ケンプほどでないにしても思索的なアラウ、というのが私のイメージ。
音が硬質というのは似てると思うけど。


二人はどうやらナチス登場以前のベルリンで共演したことがあるらしい。

言うまでもなく、クレンペラーはベルリンのクロール・オーパーの指揮者だったし、アラウはご存じの通り、ベルリンのマルティン・クラウゼの下で研鑽を積んでいたので、有りうる話です。


とは言え、年齢はクレンペラーの方が20歳近く上で、しかもベートーヴェンには確固たる信念を持ち、その上に相当な頑固者(笑)

アラウとクレンペラーの音楽づくりを押し付けられたらしい。


余談だけど、アメリカ亡命時代のクレンペラーの有名な逸話:

シュナーベルとベートーヴェンの協奏曲で共演したクレンペラー。

両者の息が合わず、たまらずクレンペラーが「ここに指揮者がいるんだぞ!」

すると、さらに一枚上手のシュナーベルは「ここにピアニストがいる。だが、ベートーヴェンはどこにいるんだい?」

さすがのクレンペラーもぐうの音も出なかったらしい(爆)


まあ、同年代のシュナーベル相手でこれだから、年下のアラウ相手なら、言わずもがなである。


この両者、実は1954年にも共演したことがあり、ここでもモメたらしい

ショパン ピアノ協奏曲第1番

アラウ(Pf)
クレンペラー&ケルン放送響


アラウ曰く「私が彼にショパンを教えてあげなければならなかった。なにしろ彼はショパンを振ったことがないのだから。しかも彼はショパンを弾いたことすらなかった」。

アラウの憤懣のほどが伝わってくるのは、アラウが2点誤認してること。

まず、クレンペラーはショパンを一応振ったことはあり、現に1950年にはノヴァエスをソリストに迎えてウィーン響と第2番の協奏曲を録音しています。

第二に、クレンペラーはピアノの腕前も相当で、指揮者になる決意を固める前、まだピアニストをめざしていた頃には、アントン・ルビンヒュタイン・コンクールにも出場したほど。

プライベートでは、ショパンも弾いて楽しんでいたらしい(あの怖い容貌と音楽性からは想像つかないがw)。



まぁ、そんなこんなで、両者の間は音楽上では決して良好な関係ではなかったらしい。



本題に入ると、このCDにはやはり同じ時期の両者による第3番と第4番の録音も収められていて、こちらはなかなかの内容です。

ところが、この「皇帝」は、いまいち息が合ってない。

解説によると、第1楽章冒頭のピアノのカデンツァ部分にあたるトリルにまで、クレンペラーが口を出してきたそう(笑)

ソリストに任せておけばいいものを…



Es-durの堂々たる音楽をそのまま剛直にストレートに表現しようとする指揮者に対して、もう少しじっくり打鍵して、その返りも味わいたいソリスト。

そのぶつかり合いというか、チグハグな感じを「楽しめる」方には、なかなか興味深い録音です。

なお、アラウは例によって、いくつかミスをしてますが、まぁ完璧な技巧を売りにしたピアニストではないので、特に瑕疵には感じませんでした。


因みに、余白に収録されたソナタの方は秀演です♪




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