先日も紹介したモーツァルト・イヤーのDGのBOXの姉妹編がこちら

内容は、宗教曲、オペラのアリア集、セレナード集。


「ポストホルン」(ライトナー&バイエルン放送響)、「ハフナー」(ライトナー&バンベルク響)、「グラン・パルティータ」(レーマン&ベルリン・フィル)というセレナード集も、ドイツ好きの私にはたまらない渋い指揮者陣だし、何よりいずれも初CD化だったはず。


しかし、歌好きとしては、オペラ・アリア集を紹介せざるを得ません(笑)


ヨッフム&バイエルン放送響の「フィガロ」のファンダンゴという、これまた珍しい録音も入ったこのアリア集。


個人的に特に興味を惹かれた3点を。


まずはアンネリース・クッパーによる「フィガロ」の「楽しい思い出はどこに」(1952年)。

クッパーは1940年代から1960年代にかけてバイエルン国立歌劇場で活躍した名ソプラノ。

今日ではだいぶ忘れられてしまいましたが、1952年のザルツブルク音楽祭で、クレメンス・クラウスの指揮でシュトラウスの「ダナエの愛」の「正式な」世界初演でダナエを歌ってます(録音あり)。

この作品は、本来は1944年のザルツブルク音楽祭で、やはりクレメンス・クラウスの指揮で初演されるはずで、ゲネプロまで行ってましたが、直前に起きたヒトラー暗殺未遂事件の影響で中止になってしまい、フルトヴェングラーの取りなしで、どうにか公開ゲネプロという形で「初演」されたという、曰く付きの作品。


さて、ここに聴くクッパーの伯爵夫人は、やや影を帯びた声ですが、実にスマートに歌っていきます。

とにかく、モーツァルトの音楽に不可欠な(だと思う)流れの良さが際立ちます。

伴奏はライトナー&ヴュルテンベルク(シュトゥットガルト)国立歌劇場管。



お次は、ヴァルター・ルートヴィヒが歌う「ドン・ジョヴァンニ」から「彼女こそ私の宝」(1952年)

ルートヴィヒは1932年から1945年までベルリン市立歌劇場(ベルリン・ドイツ・オペラ)の第1テノール。

戦前のドイツを代表するリリック・テノールであり、また「マタイ」のエヴァンゲリストとしても有名でした。

1948年には46歳にしてウィーン国立歌劇場と契約、十八番のモーツァルトを歌いまくります。

記録によると、ベルモンテを22回、タミーノを30回、そしてこのCDにも収録されたドン・オッターヴィオを8回歌ってます。

しかも1950年までのたった2年間だけで!


いかに彼がモーツァルト・テノールとして人気があったかが分かりますし、フルトヴェングラーは1949年のザルツブルク音楽祭での「魔笛」で、彼をタミーノに起用しています(因みに、ルートヴィヒはフルトヴェングラーのお気に入りの歌手の一人)。


このCDで歌うドン・オッターヴィオを聴くと、この年代の歌手にしては非常に抑制が聴いた表現で、発声法はともかく今日でも十分に聴ける内容です。

因みに彼は歌手引退後は、教師を務めるとともに、医学博士号を取得するというインテリ!

伴奏はやはりライトナー&ヴュルテンベルク(シュトゥットガルト)国立歌劇場管。



最後は、ヨーゼフ・グラインドルが歌う「ドン・ジョヴァンニ」の「カタログの歌」(1954年)

グラインドルは今さら紹介するまでもない、戦後のバイロイトのバス役を一手に引き受けた不世出のワーグナー・バス。

戦中はベルリン国立歌劇場の、戦後はベルリン市立歌劇場の主力メンバーでした。


そんな彼が歌うモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」、それも騎士長ではなくレポレッロというのが驚き。

騎士長ならフルトヴェングラー指揮のザルツブルク音楽祭での録音はあるのですが、レポレッロは本当に意外。

論より証拠で、戦後に頻繁に客演したウィーン国立歌劇場で、彼は5回「ドン・ジョヴァンニ」に出演してますが、いずれも騎士長。


さて、そのレポレッロ。

これが、ワーグナーを歌う時の荘重な歌い口とは異なり、とても軽やかに歌います。

ドンナ・エルヴィーラを、主人の女遍歴のカタログでからかうかのような雰囲気が、とてもよく表現できており、個人的には大いに驚いたとともに、大満足(^-^)

伴奏は、レーマン&バイエルン放送響。



いやいや、やっつけ仕事みたいなコンピレーションアルバムを出すことも多いこの業界にあって、ことこのBOXに関しては、DGのセンスのいい心憎いチョイスに感服しました。




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