『終わらないバラード
~a shade story~』Vol.18〈信一〉島崎の見舞いに行った翌日。
朝登校すると、はやくもクラスの中では昨日の話で盛り上がっていた。
だが、みんな、口をそろえて何度も言っていたのが、
「ベッドから出てこなかった」
「あゆみの顔が見たかったぁ~!」
何なんだ。
昨日顔を合わせたんじゃないのか。
どういうことだ。
オレは昨日のあいつを思い返した。
あの驚きよう。
髪の毛……
もしかして、オレに驚いたんじゃなくて、見られたことに驚いたのか❗️❓
みんなが帰ったあとに、ベッドから出てきたところを、オレがタイミング悪く見てしまった❗️❓
じゃあ、あいつの、あの姿を見たのは、オレだけ……
キーンコーンカーンコーン。
野本がやってきて、H.R.が始まった。
「昨日、島崎の見舞いに行ってくれた者、ありがとう。
島崎も、声が元気そうだったので、先生も安心した。
それから、島崎が昨日ベッドから出たがらなかったのはな、実は今、抗がん剤の影響で、髪がほとんど抜け落ちてしまったからなんだ」
クラス一同、緊張が走る。
「そんな姿を、島崎は見られたくなかったらしい。
だから、みんなは顔が見られなくて寂しかったと思うが、島崎はもっと寂しい思いをしている。
そんな気持ちを、理解してやってくれ。
昨日お母さんから連絡をいただいたが、とっても喜んでいたって言っていた」
野本はなぜかオレの方をちらりと見た。
「みんなも、島崎に負けないようにがんばって、少しでもはやくまたこの教室に戻ってくることを願おう」
はいっ‼️
と大きな返事。
今しかない。
その瞬間、勇気を持ってガタッと立ち上がった。
みんなが一斉にオレの方をみた。
「オレも島崎について一言言いたい。
昨日、オレも見舞いに行ってきた」
えっ?と教室がざわめいた。
「みんなは見なかったと思うけど、オレは、あいつの、その、アタマを見てしまった」
えぇっ!?
「あいつにすげぇ怒鳴られてさ。
オレもすぐに出てきたから話してはいないんだけど、
あいつは今、ものすごく大変な思いをして、がんばってる」
野本が、頷きながらオレを見ている。
「白血病は、少なくとも、1年は入院しなければならないらしくて、もしかすると、一緒に卒業できない可能性もある」
それを聞いて高石が「えぇっ!!」とショックを受けたようだった。
どこかですすり泣く声がした。
「あいつは途中から転校してきたから、入学式も一緒じゃなかったし、卒業まで仲間がいないなんてかわいそうじゃん。
そこで、オレはオレなりに考えた。
みんなで、あいつに、何かできないかって。
島崎が、元気が出るように、クラス全員が参加してできること。
2つ考えたんだけど、1つは…みんなで千羽鶴を作って渡すことにしねぇか」
シーンと静まり返った。
オレは、息を呑んだ。
そのとき、声を発したのは、康一郎だった。
賛成ッ❗️信ちゃん、ナイッスアイデアだよっ❗️❗️
その大きな明るい声が、クラスの氷を打ち砕いた。
あたしも賛成❣️
うんッ❣️
作ろう❗️❗️
心がポカポカしてきた。
「それと、2つめなんだけど、
夏休みに、島崎を誘ってみんなでどっか行って思い出を作りたい。」
おぉ❗️
それ、いい❗️
行きたーい❣️
ずっとオレの話を聞いていた野本が、
「なかなかいいアイデアだな。
だが、今年はみんな受験だぞ。
夏休みは、時間的に難しい者もいるんじゃないのか」
一瞬、みんな黙り込む。
すると、秀才・北島が、手を挙げた。
「オレは行くよ!
勉強は、焦ってやるものじゃない。
あとで取り返せばいい。
むしろ、受験が近づいてきた時に、今回の思い出が大きな励みになって、最後まで頑張れると思うんだよね」
みんな、安心した様子。
行こう❗️
行こうぜ‼️
楽しみだ~❣️
こうして、場所はあとで決めることになり、全員一致で行くことに決まった。
H.R.後、康一郎がやたら褒めてきた。
「信ちゃ~ん❗️
オレ、見直しちゃったよ~❗️
内緒で島崎のお見舞いに行くなんてかっこよすぎるぜ
」
」べ、別にそんなんじゃねぇけどよ

「森山」
野本に廊下に呼び出された。
「お前、1人で見舞いに行ってくれたそうだな。
島崎のお母さんが、森山君にお礼を言ってくださいと何度も言ってたよ。
それと島崎がな、お前に"ありがとう"と伝えてくれと言ってた。
ーーお前、何かしたのか?」
いえ、別に。
平静を装って答えた。
心の中で、とても小さな、小さな炎がゆらめき出したようだった。
喧嘩では決して味わうことのなかった、新しい感覚。
クラスメートたちとの距離が、また少し縮まった気がした。
また明日。
学校へ行くのが楽しみだな。
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つづく。
