キリストのことばを、あなたがたのうちに豊かに住まわせ、知恵を尽くして互いに教え、互いに戒め、詩と霊と賛美の歌とにより、感謝にあふれて心から神に向かって歌いなさい。(新改訳)

 

逐語訳

 

Ὁ 「ホ」 冠詞

 

λόγος 「ロゴス」 ことば

 

τοῦ 「トゥー」 ~の 冠詞 属格

 

Χριστοῦ 「クリストゥー」 キリストの 属格

 

ἐνοικείτω 「エノイケイトー」 住む ἐνοικεωの命令形

 

ἐν 「エン」 ~の中に

 

ὑμῖν 「ユミン」 あなたがた(に) 与格

 

πλουσίως, 「プルシオース」 豊かに

 

ἐν 「エン」 ~によって

 

πάσῃ 「パセー」 すべての

 

σοφίᾳ 「ソフィアイ」 知恵

 

διδάσκοντες 「ディダスクーテス」 教える διδάσκω の現在分詞

 

καὶ 「カイ」 ~と、そして 英語のand

 

νουθετοῦντες 「ヌーテトゥーテス」 訓戒する νουθετω の現在分詞

 

ἑαυτούς, 「エアウトゥース」 互いに 再帰代名詞

 

ψαλμοῖς 「プサルモイス」 詩篇 複数 与格

 

ὕμνοις 「ヒュムノイス」 聖歌 複数 与格

 

ᾠδαῖς 「オーイダイス」 歌 複数 与格

 

πνευματικαῖς 「プニューマティカイス」 霊的な、霊に関係のある

 

ἐν 「エン」 ~によって 

 

τῇ「テーイ」 冠詞

 

χάριτι 「カリティ」 感謝 χαριςの与格 「恵み」という意味でよく使われる。

関連語のχαρισμα「カリスマ」は「賜物」

 

ᾄδοντες 「アドンテス」 αδω「歌う」の現在分詞

 

ἐν 「エン」 ~によって

 

ταῖς 「タイス」 冠詞

 

καρδίαις 「カルディアイス」 心

 

ὑμῶν 「ヒュモーン」 あなたがたの 

 

τῷ 「トーイ」 冠詞 与格

 

θεῷ 「テオーイ」 神に 与格

 

εν「エン」という前置詞は多くの西洋語のinに相当するが、時には「~によって」という意味にもなる。そもそもギリシャ語の前置詞はその後の名詞の格によって意味が大きく変化する傾向がある。

 

日本語、少なくとも新改訳では住まわせなさい、教えなさい、戒めなさい、歌いなさいはすべて命令形の動詞でそれぞれ平行、独立した命令のように書かれているが、原文で命令形は「住まわせなさい」のみで、教える、戒める、歌うの部分は上記のとおり現在分詞で、「住まわせなさい」と対峙させている。それらを命令の手段と解釈するなら、「教え、戒め、歌うことによりキリストの言葉を豊かに住まわせなさい」という意味づけになるだろう。詳訳聖書ではそれらを「~する時」と解釈し、「教え、戒め、歌う時に、キリストの言葉を豊かに住まわせなさい」という意味づけを行っている。

 

そもそも「住まわせなさい」と訳される命令文であるが、「ことば」は主格、「住まわせ」は3人称の命令形なので、命令の対象は文法的には「キリストのことば」にかかっており、直訳すれば、「キリストのことばがあなたがたのうちに豊かに住みなさい」となる(はず?)が、どの訳でもここは「豊かに住まわせなさい」「住むようにしなさい」という使役表現の命令として訳されている。どうしてそうなるのか、今の自分の実力ではわからない。少なくともコイネーギリシャ語にはlet (英)や lassen(独)のような使役助動詞はなさそうだし。聖書中では使役表現はどのように表現されているのか、これからまた勉強していきたいと思う。