私は、学校のスピーチコンテスト以外にも、高円宮杯全国中学生英語弁論大会の都道府県予選に出る予定をしていた。イカツイ名前であるが、スピーチコンテストのことである。文化祭の次の日が地区大会の本番だったので、文化祭の準備期間中も私はスピーチの練習を繰り返していた。
私の周りで英語ができ、かつ弁論ができる人は君しかいない、という適当な言い訳をつくり、ただ2人で過ごしたいというだけの理由で私はTをスピーチの練習に付き合わせた。付き合わせた、と言っても一回だけであるが、廊下の端のほうでスピーチを披露したのはいい思い出である。
携帯電話の使用について、という、彼の中学一年生の時の弁論と丸かぶりするようなテーマだったが、彼は割と真面目に聞いてくれた。しかし、真面目に聞いてくれた割には「英語できそうな発音」とか「真面目そうな内容」など、君は本当に聞いていたのか、と疑いたくなるような適当なフィードバックを返してくれた。
フィードバックは適当だったものの、私の目的は彼との時間を過ごすことだったので、それができて満足だった。
都道府県大会では、私は2位に入り、11月の全国大会に駒を進めることができた。
当時は、「発音がとても綺麗」という評価をされ、三ヶ月かかって発音を母音から矯正した甲斐があった、と喜んだが、どうやらスピーチの世界において「発音が綺麗」は「発音以外褒めるところがあまりない」とほぼ同値だと大学に入ってから知り、少し切ない気分になっている。