7月のある日の休み時間、私はTに、教室の外に呼び出された。
何の用だろう。
心臓がばくばく鳴った。
私が彼のことを好きなことは、私があまりにも騒ぐので周知の事実となりつつあり、彼も知っているはず…。もしかしたら、彼も私のことを意識し始めているかもしれない。まさか、告白される…!?告白されちゃう!?!?
わくわくしながら呼び出された場所へ行くと、Tは神妙な顔をして立っていた。
「非常に言いづらいんやけど…」
彼は口ごもり、なかなか言葉が続かない。
彼は何やらブツブツと言い訳じみたことを言い始めたのだが、告られる心の準備をしていた私はイマイチそれを聞いていなかった。
「今日、一緒に帰れる?」
彼がようやくはっきりと発したその言葉に私は耳を疑った。文字通り、舞い上がってしまった。
しかし、舞い上がりつつも彼の話をよくよく聞いてみると、何かと言いづらい事情があるようだった。
彼は、バスケ部の仲間に、
「今度の試合で5回以上ファールをしたら罰ゲーム」
と言われていたようで、見事に5回ファールをしてしまったらしい。
そしてその罰ゲームというのが、私と一緒に帰ること、だというのだ。
今思えば、他人を罰ゲームに利用するとは相当失礼な話である。人権問題などに発展しそうな重大案件である。
しかし当時の私は罰ゲームであれ何であれTと一緒に帰れるというのを、この上ない幸せに感じた。
放課後、私は彼と無事一緒に帰ることになったのだが、彼は電車通学、私はバス通学だったため、一緒に帰る、とは言っても5分くらいのものだった。
きゅんきゅんしている私の横で、Tはずっと、私を罰ゲームにしてしまっていることについての申し訳なさを語っていた。
本当にごめん、本当に申し訳ない。
専制君主のような性格だった彼が、私が罰ゲームにされていることに対して相当な申し訳なさを感じていることに、そしてその真摯さと人間性に、私は素直に感動した。ちゃんとした人だなと思った。
彼のことが大好きだと再確認でき、彼を選んで間違いはないと確信した、私の中での大事な出来事である。