歯科医院を経営しています。自費診療がメインのため、消費税の負担が大きく悩んでいます。

 

 非常勤歯科医師への支払いを給与ではなく、業務委託として取り扱えば、消費税の負担が抑えられるのではないかと思うのですが、業務委託に変更しても問題ないでしょうか?


 給与を業務委託として取り扱った場合、給与であれば消費税を控除できませんが、業務委託であれば控除することができ、消費税の負担が軽減される可能性があります。

 

 

 しかし、非常勤歯科医師への支払いを業務委託とすることは、相当難しいかと思います。業務委託が認められなかった場合、給与となるため、クリニックの消費税の計算に影響を及ぼします。

 

 

 また、その非常勤医師が業務委託の報酬を事業所得として確定申告をしていれば、給与として申告をし直す必要もあります。

 


 業務委託契約として取り扱うためには税務上、業務委託契約書の有無にかかわらず、下記の要件を踏まえ総合的な判断が必要とされています。

(1)代替性があるか
 →業務を受けた人に代替して他人が業務を遂行することが認められない場合は、給与の要素が大きい。


(2)時間的な拘束があるか
 →出勤時間など報酬の支払者から作業時間を指定される場合は給与の要素が大きい


(3)作業の具体的な内容や方法について指揮監督はどちらにあるか
 →報酬の支払者から、業務の具体的な指示がある場合は、給与の要素が大きい


(4)成果報酬であるか
 →成果物がなくても、働いた時間あたりで報酬をもらえる場合は給与、成果物がないと報酬をもらえない場合は業務委託


(5)材料又は用具等はだれが準備するか
 →報酬の支払者が業務に係る材料や用具等を揃えている場合は給与の要素が大きい


 非常勤歯科医師は、上述の(1)~(5)のいずれも給与になる要素が大きいです。
業務委託契約書を整備し、無理くり業務委託として処理をしたとしても、税務調査で業務委託ではないと言われる可能性は十分にあります。

  クリニックのHPが古いので、新たにHPをリニューアルしました。そのHPは診療案内のほか、ネットから予約できるシステムも導入したため、高額の費用がかかってしまいました。

 

 その費用を支払った年に全額を経費計上しても問題ないでしょうか?

 


 HPは原則、広告宣伝費として経費計上することができます。

 ただし、ネット予約機能部分はプログラムの性質を有しているため、その部分は一括して経費計上できず、「ソフトウェア」として資産計上し5年間にわたり経費計上することになります。


 クリニックのHPは、一般的に頻繁に更新され、HPの作成費用の効果は1年以上に及ばないと考えられるため、支払った年に広告宣伝費として処理します。

 

 なお、1年を超えて更新する予定がないようなHPについては、支払った年に経費計上するのではなく、HPの使用年数にわたり経費計上することになります。

 

 

 また、ネットから予約できるようなプログラムの性質を有している部分は、ソフトウェアに該当し、5年間にわたって経費計上することになると考えられます。

 

 なお、プログラムの部分と診療案内のようなプログラム以外の部分が区分できない場合は、HP作成費用の全額を資産計上する必要があります。

 

 なので、少しでも支払った年に経費計上できる金額を多くしたければ、見積書や請求書でプログラム部分を明確に区分してもらう必要があります。


 前述した通り、HPの作成費用は支払った年に全額を経費計上できない場合があります。利益対策のためにかけ込みでHPを作成したとしても、あまり経費計上できなかった!ということがないようにご注意ください。

 Q.クレジットカードで事業に関する支払いをしたのですが、お店から受け取った利用明細書をなくしてしまいました。

 

 クレジット会社から送られてくる請求明細書で経費計上してもらえますか?

 


 A.支払の内容が分かれば、経費計上は可能です。

 

 経費計上するために、領収書等の保存は必須ではなく、実際に支払ったかどうかが分かればいいためです。

 

 しかし基本的には、お店から受け取った利用明細書も保管いただく必要があります。

 

 クレジットカード請求明細書には購入した日付や金額、お店の名前などが記載されているため、一見請求明細書から経費計上しても問題ないように思いますが、何を購入したのか分かりません。

 

 何を購入したのか分からないと、例えばアマゾンで1万円支払ったとしても、事務用品を購入したのか、スタッフ用の飲料を購入したのか分かりません。

 

 商品の内容が分かる利用明細書やレシートを保管していることが最もいいですが、なくしてしまった場合は、何を購入したか後から見ても分かるように、自身でメモ書きをしておくようにしましょう。


 しかし、消費税を計算するうえでは、クレジットカード請求明細書だけでは足りず、お店からもらう利用明細書やレシートも保管しなければなりません。

 

 なぜなら、消費税の計算をするうえで経費として認めてもらうためには、領収書等の保存が必須となるためです。

 

 上述に記載したように、メモ書きだけではだめで、利用明細書やレシートなど領収書のかわりとなる書類の保存が必要なのです。

 

 歯科医院は消費税の免税事業者や課税事業者であっても、簡易課税(売上だけをみて消費税を計算する方法)を採用されているところが多いので、自費診療を多く行っているクリニック以外は、利用明細書を保存しなくても大きな影響はないのかもしれません。

 

 しかし、余計なリスクを負わないためにも、クレジットカードを利用した際は、忘れずに利用明細書も取っていただければと思います。

 令和6年6月1日に事務所を下記の通り移転しました。

 

  〒220-8120

   横浜市西区みなとみらい2-2-1

   横浜ランドマークタワー20階

 

 これを機に、気持ちを新たに、より一層業務に専心する所存でございます。

 

 独立して約1年経過しましたが、歯科専門税理士は税理士全体を見てもあまりおらず、覚えていただきやすいこともあってか、最近はご紹介やご相談をいただくことも増えてきました。

 

 本当にありがたい限りです。

 

 これに満足せず、自身の知識や経験をあげ、歯科医師の先生方のお役にたてるよう、これからも日々精進してまいります。

 

 大岩佐衣税理士事務所

   大岩 佐衣

 

 

 医療法人の理事長をしています。

 現時点では、後継者がおらず、第3者に事業譲渡することも考えていないため、このまま後継者が見つからなければ、数年後には医療法人を解散させたいと思っています。

 

 医療法人を解散させることになった場合、テナント契約の違約金は発生するのでしょうか?

 


 契約期間の満了まで借りず、中途解約をする場合には、テナント契約の違約金が発生する可能性があります。


 歯科医院として使用するテナントを借りる場合、行政から賃貸借契約期間につき指導があります。

 

 行政は安定して継続的に事業を続けてほしいと考えており、2~3年の短い賃貸借契約では、申請時に却下される可能性があるので、10年など長い期間で賃貸借契約をするクリニックが多いかと思います。

 

 賃貸借契約の中途解約の違約金については、契約パターンにより異なります。

 

 賃貸借契約には、定期建物賃貸借契約と普通建物借家賃貸借契約の2パターンがあります。


(1)定期建物賃貸借契約


 更新はなく、貸主との合意できた場合のみ再契約できる可能性があります。

 契約期間満了までに中途解約をした場合には、あらかじめ決めた定期の期間を借りないと契約違反となってしまうため、残存期間分の違約金を支払う必要があります。


(2)普通建物借家賃貸借契約


 更新は、基本的に借主が希望すれば可能となります。

 契約期間満了までに中途解約をした場合の違約金の取り扱いは、契約内容により様々です。数か月分の家賃相当額の違約金を支払う契約となっている場合もあれば、一定の期間前までに解約の予告をすれば違約金は発生しない場合もあります。

 定期建物賃貸借契約は更新もできなければ、中途解約も原則としてできず、できたとしても多額の違約金が発生してしまう可能性があります。

 

 また、普通建物借家賃貸借契約でも違約金が発生する可能性があるので、契約書を改めてご確認いただければと思います。