今回も1986年の全米No.1ヒットの紹介シリーズです。


前回、1986年5月10日付でNo.1だった、
ペットショップ・ボーイズ「ウエストエンド・ガールズ」に代わり、
1986年5月17日付から5月30日付までの3週間No.1だった曲は、


ホイットニー・ヒューストン「グレイテスト・ラブ・オブ・オール」


ファーストアルバム「そよ風のおくりもの(Whitney Houston)」から、
前年10月にNo.1となった、
すべてをあなたに(Saving All My Love For You)」(2012.10.28)
翌年2月にNo.1となった、
恋は手さぐり(How Will I Know)」(2013.2.15)
に続いて、3曲連続No.1を獲得したこの曲。

まさに、彼女が若くして、
ライジングスターからスーパースターへと認知されることとなる、

自らを愛し、信じた道を歩く決意を歌い上げた、
スケールの大きい名作バラードです。


①開演前のステージや控室でこの曲を歌いながら、
 かつてシンガーを夢見ていた少女時代に想いをはせ、
 本番のステージ上で二人が重なり合うシーンが有名なPV。




②90年代のライブステージから。
 ステージ上にあげたやや落ち着きない子供との
 何気ない会話でなごませる、
 絶頂期の余裕の感じられるステージです。




③2010年、アイルランド・ダブリンでのコンサートで、
 地元のZenaという少女との共演をしているシーンから。
 歌の大半をZenaが歌ってますが、
 歌い上げの難しいこの曲を、一生懸命歌っていて微笑ましいです。
 この時期のホイットニーのこの曲のライブ動画は他にもあるのですが、
 かなり声が出なくなっている時期でもあり、
 いかに1986年当時の彼女がすごかったかを感じさせます。



☆Whitney Houston "The Greatest Love Of All"
 from the album "Whitney Houston"
 1986年Billboard Hot100 最高位1位(5/17-31付の3週間)


I believe the children are our future
Teach them well and let them lead the way
Show them all the beauty they possess inside
Give them a sense of pride to make it easier
Let the children's laughter remind us how we used to be

>> 子供たちは私たちの未来なのだから
>> しっかりと教え導いて信じる道を歩ませましょう
>> 彼らが内に秘めている全ての美しいものを表してあげましょう
>> もっと簡単に誇りを持って生きることのできる力を与えてあげましょう
>> 子供たちの笑顔は私たちにもそんな時代があったことを思い出させるわ

Everybody searching for a hero
People need someone to look up to
I never found anyone who fulfilled my needs
A lonely place to be
So I learned to depend on me

>> 誰もがヒーローを捜し求め
>> 尊敬できる誰かを必要としている
>> 私が必要とするそんな人は見つけられていないけど
>> 一人ぼっちのこの場所で
>> 私は自分がそんな人になろうと思ったの

I decided long ago
Never to walk in anyone's shadow
If I fail, if I succeed
At least I live as I believe
No matter what they take from me
They can't take away my dignity

>> その昔決めたこと
>> 誰かの影を踏んで歩くなんてことはしないと
>> 失敗しても、成功しても
>> 少なくとも自分が信じたように生きていこうと
>> 私から何を奪ったしても関係ない
>> この尊厳だけは誰にも奪うことはできないもの

Because the greatest love of all
Is happening to me
I found the greatest love of all
Inside of me
The greatest love of all
Is easy to achieve
Learning to love yourself
It is the greatest love of all

>> なぜって最高の愛というものが
>> 私の中に沸き起こっているから
>> 私は最高の愛というものを
>> 自分自身の中に見つけたの
>> 最高の愛というものは
>> たやすく成し遂げられるもの
>> 自分自身を愛することを学ぶこと
>> それこそが最高の愛の形

I believe the children are our future
Teach them well and let them lead the way
Show them all the beauty they possess inside
Give them a sense of pride to make it easier
Let the children's laughter remind us how we used to be

>> 子供たちは私たちの未来なのだから
>> しっかりと教え導いて信じる道を歩ませましょう
>> 彼らが内に秘めている全ての美しいものを表してあげましょう
>> もっと簡単に誇りを持って生きることのできる力を与えてあげましょう
>> 子供たちの笑顔は私たちにもそんな時代があったことを思い出させるわ

I decided long ago
Never to walk in anyone's shadow
If I fail, if I succeed
At least I live as I believe
No matter what they take from me
They can't take away my dignity

>> その昔決めたこと
>> 誰かの影を踏んで歩くなんてことはしないと
>> 失敗しても、成功しても
>> 少なくとも自分が信じたように生きていこうと
>> 私から何を奪ったしても関係ない
>> この尊厳だけは誰にも奪うことはできないもの

Because the greatest love of all
Is happening to me
I found the greatest love of all
Inside of me
The greatest love of all
Is easy to achieve
Learning to love yourself
It is the greatest love of all

>> なぜって最高の愛というものが
>> 私の中に沸き起こっているから
>> 私は最高の愛というものを
>> 自分自身の中に見つけたの
>> 最高の愛というものは
>> たやすく成し遂げられるもの
>> 自分自身を愛することを学ぶこと
>> それこそが最高の愛の形

And if by chance, that special place
That you've been dreaming of
Leads you to a lonely place
Find your strength in love

>> そしてもしチャンスが訪れ、特別な場所
>> そう、あなたが夢見ていた場所へと
>> たった一人の場所へと導かれるなら
>> 愛の強さを見出すことでしょう


この曲のレコーディング時及び大ヒット時、
彼女はまだ22歳。

経歴からいうと、まだまだここまでのスケールの大きい、
人生を達観したような曲を歌うには、
まだまだ早い時期だったかもしれないのですが、

彼女自身のポテンシャル、スター性が、
そういった若さを吹き飛ばしている感じがします。

「あなたにすべてを」「恋は手さぐり」なども、
実年齢や経験に対して、かなりの大人っぽい曲だったかもしれませんが、

しかし、この曲をアルバム収録曲として決めたのは、
まさしくこの曲を作曲しプロデュースしたマイケル・マッサーが、
彼女がこの曲を歌うのを聴いて一発惚れしたのがきっかけだったというのです。


この曲はもともと60年代から70年代にかけて活躍した、
アメリカの偉大なボクサー、モハメド・アリの孤高の半生を描いた
1977年のドキュメンタリー映画、
「アリ/ザ・グレイテスト(The Greatest)」の中で、
オープニングタイトルとして、
ジョージ・ベンソンに歌われたナンバーです。



☆George Benson "The Greatest Love Of All"
 from the soundtrack album "The Greatest"
 1977年Billboard Hot100 最高位24位


ジャズ・フュージョンのギタリストとして人気の高かったジョージ・ベンソンが、
70年代中ごろからポップチャートでボーカリストとしても
ヒット曲を出し始めていた中の一曲で、
この曲も最高位24位のスマッシュヒットになったにもかかわらず、
意外と知られてない曲でした。

ホイットニーの大ヒットによって、
改めて彼のバージョンも見直されオンエアされるようになり、
ボクは彼の柔らかなボーカルでのこのバージョンも好きなんですよね。

この映画のエンディングでバラードバージョンで歌われている、
「I Always Knew I Had It In Me」という曲は、
もともとアリのテーマ曲「炎のファイター(アリ・ボマイエ)」で、
前年日本武道館でアリがアントニオ猪木との異種格闘技世界一決定戦で戦った際に、
アントニオ猪木に贈られた「イノキ・ボンバイエ」のアレンジバージョンとしても
知られてますね。


ところで、この「グレイテスト・ラブ・オブ・オール」という曲は、
この曲のプロデューサーでもある、マイケル・マッサーの作曲であり、
作詞は、リンダ・クリードという女性作詞家によるものでした。

リンダ・クリードは、70年代フィラデルフィアソウルの人気グループ、
スタイリスティックスの、
「誓い(You Make Me Feel Brand New)」や、
「ユー・アー・エブリシング(You Are Everything)」などの
多くのヒット曲の作詞を手掛けた人として知られ、
この曲を作曲した70年代半ばごろは、まだ20代の気鋭の作詞家でした。

しかし、このころに乳がんに侵され、
自らの苦しみをもってしても、病にひるむことなく、
自分の信じた作詞家としての道を貫きたいと、
作詞家活動を続けていきました。

この曲の詞には、彼女の決意そのものが歌われているんですよね。

そんな彼女の想いを知るマイケル・マッサーが、
たまたまホイットニーがこの曲を口ずさむのを聴いて感激し、
この曲をアルバム収録曲に推したのでした。

当初、アリスタレコードの社長のクライブ・デイヴィスは、
マイケルの作曲した「すべてをあなたに」とこの曲は、
彼女にはふさわしくないと収録に反対したのですが、
マイケルが押し切り、レコーディングにこぎつけ、
結果として両曲とも全米No.1を獲得することとなったのでした。

なお、リンダ・クリードは、この曲がシングルリリースされた直後の、
1986年4月に37歳の若さで他界してしまいました。

まさに、リンダを送り出すことになってしまった曲でもあるんですよね。


ホイットニーはこのあともNo.1ヒットを連発することとなるのですが、
スーパースターとしての第一歩としてカウントするならば、
やはりこの曲ではなかったのかなと思います。

この曲の詞の中に、
自分たちの子供たちに未来を託そうという箇所があります。

ホイットニー自身、母シシー・ヒューストンの未来を背負った子供であり、
自らその信じた道を貫いて、若くして成功したのですが、
同時に重たいものも背負ってしまったのも事実だったかもしれません。

ホイットニーにも、ボビー・ブラウンとの一人娘、
ボビ・クリスティーナがいますが、
彼女もまた重いものを背負い、
父の問題、母の死、自らも自殺未遂や薬物などで苦しみながら、
歌手としての成功を夢見ている一人です。

彼女がどういった道を進むかはわかりませんが、
流されることなく、信じた道を生き続けてほしいですね。


ホイットニーのアルバム「そよ風のおくりもの」では、
4曲のTop40ヒットのほかに、
日本と数か国のみでシングルカットされた、
「オール・アット・ワンス(All At Once)」が
含まれていますが、この曲もマイケル・マッサーの作品です。
この曲も隠れた名バラードとして知られてますね。


1986年の全米No.1ヒットシリーズ、
次回は6月7日の予定です。

ホイットニーよりも一足先にスーパースターに登りつめた彼女にとって、
3曲目の全米No.1ヒットとなる、
3枚目のオリジナルアルバムからのファーストシングル。
静かに心打たれるバラードナンバーです。



そよ風の贈りもの/ホイットニー・ヒューストン

¥1,890
Amazon.co.jp

Muhammad Ali in ’The Greatest’/Michael Masser

¥1,875
Amazon.co.jp