久しぶりに、全米トップ40、AT40を聴きはじめた1982年の頃の話から。


この1982年という年は、自分にとって、
20歳になった年で、
つらい失恋を味わった年で、
祖母が亡くなった年で、
誕生日前後に山形で運転免許をとった年(いまやペーパーですが)で、

AT40自体を聴きはじめたのはこの年の11月末からですが、
その前くらいから聴いた曲にいろいろと影響を受け、
音楽にのめり込んでいくきっかけになった年です。

なんとなく好きでなんとなく聴いていた音楽を
少しでも自分のものにしようと、
聴きまくっていた時代だったと思います。

それでも、「全米トップ40 The 80's」で、
自分が聴きはじめたよりも前の
1980年~82年前半あたりのオンエアを聴いていると
まだまだ知らない曲がいっぱいあったな、
いい時代だったなといまだに夢中になれるんです。

1982年の年末と翌年始の2週間にわたって放送される
「全米トップ40」の年間Top100で、
1982年の大ヒット曲を聴いている中で、
何曲も心に留まった曲があったのですが、

先日の「The 80's」の放送(1982年4月17日付)を聴いていた中で、
そんなことを久々に思い出して、
いつか訳してみたいと思っていた曲を
今回は紹介したいと思います。


エルトン・ジョン「エンプティ・ガーデン」


1982年発表の16枚目のオリジナルアルバム、
「ジャンプ・アップ(Jump Up)」からのファーストシングルで、

サブタイトルの「Hey Hey Johnny」にあるとおり、
1980年12月に射殺された親友、ジョン・レノンに捧げた
トリビュートソングです。


①エルトンのピアノ演奏シーンをメインに、
 閉じられた扉をイメージに使用したPV。




②2007年の60歳を祝うステージ上で演奏されたライブより。
 ジョンとの思い出を大事にするエルトンは、
 めったなことでこの曲をライブで演奏することはないそうで、
 非常に貴重な演奏だそうです。



☆Elton John "Empty Garden (Hey. Hey Johnny)" from the album "Jump Up!"
 1982年Billboard Hot100 最高位13位


What happened here
As the New York sunset disappeared
I found an empty garden
Among the flagstones there

>> 何が起こったんだろう
>> ニューヨークの夕日が沈もうとしている時間
>> ボクは何も生えてない庭を見つけたんだ
>> ただ敷石に囲まれてるだけの

Who lived here
He must have been a gardener that cared a lot
Who weeded out the tears and grew a good crop
And now it all looks strange

>> ここに住んでたのは誰だったのだろう
>> 彼は気配り上手な庭師だったに違いない
>> 雑草を取り除き、素敵な草花を植えていたからさ
>> だから今は全てがおかしな状態に見えるよ

It's funny how one insect
Can damage so much grain

>> おかしなもんだね、たった一匹の虫けらのために
>> 根こそぎダメージを受けてしまうのだから

And what's it for
This little empty garden by the brownstone door
And in the cracks along the sidewalk
Nothing grows no more

>> 何のためにあるんだろう
>> こんな立派なドアのそばの小さな何も生えていない庭は
>> 歩道沿いにひび割れて
>> もう何も育つことはないのだろう

Who lived here
He must have been a gardener that cared a lot
Who weeded out the tears and grew a good crop
And we are so amazed

>> ここに住んでたのは誰だったのだろう
>> 彼は気配り上手な庭師だったに違いない
>> 雑草を取り除き、素敵な草花を植えていたからさ
>> ボクらは本当に驚いたものさ

We're crippled and we're dazed
A gardener like that one
No one can replace

>> ただ動くこともできずボーっと眺めていただけで
>> そんなすごい庭師だったから
>> 誰も代わることなんてできないんだ

And I've been knocking but no one answers
And I've been knocking most all the day
Oh and I've been calling oh hey hey Johnny
Can't you come out to play

>> ずっとノックし続けてもだれも応えてくれない
>> 一日中ずっとノックし続けているというのに
>> ああ、ボクは呼び続けるよ、ヘイ、ヘイ、ジョニーと
>> また遊びに出てこないのかって

And through their tears
Some say he farmed his best in younger years
But he'd have said that roots grow stronger
If only he could hear

>> そして涙ながらに
>> 彼は若き日に最高のものを作り上げたんだと誰かが言うんだ
>> でも彼ならこの根っこがとても強く育ったからだよって言ったはずさ
>> もし彼がその言葉をを聞けるというならね

Who lived there
He must have been a gardener that cared a lot
Who weeded out the tears and grew a good crop
Now we pray for rain

>> ここに住んでたのは誰だったのだろう
>> 彼は気配り上手な庭師だったに違いない
>> 雑草を取り除き、素敵な草花を植えていたからさ
>> だからボクらは雨に祈るんだ

And with every drop that falls we hear
We hear your name

>> そして雨粒が降る音を聞くたびに
>> ボクらは君の名前が聞こえる気がするのさ

And I've been knocking but no one answers
And I've been knocking most all the day
Oh and I've been calling oh hey hey Johnny
Can't you come out to play

>> ずっとノックし続けてもだれも応えてくれない
>> 一日中ずっとノックし続けているというのに
>> ああ、ボクは呼び続けるよ、ヘイ、ヘイ、ジョニーと
>> また遊びに出てこないのかって

And I've been knocking but no one answers
And I've been knocking most all the day
Oh and I've been calling oh hey hey Johnny
Can't you come out, can't you come out to play

>> ずっとノックし続けてもだれも応えてくれない
>> 一日中ずっとノックし続けているというのに
>> ああ、ボクは呼び続けるよ、ヘイ、ヘイ、ジョニーと
>> また君が来ないかって、また遊びに出てこないのかって

Johnny can't you come out to play in your empty garden
Johnny can't you come out to play in your empty garden
(repeat)

>> ジョニー、また遊びに出てこないかい、この何もない庭先に



詞の内容はもちろん知っていましたが、
改めて自分で訳してみて、感動と切なさで目頭が熱くなる歌詞です。

ジョン・レノンという存在を、
自分の近くにある家の庭の庭師に例えていますが、

このブラウンストーンのドアという、
ニューヨークの高級住宅をたとえたこの家とは、
まぎれもなく、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの暮らしていた
ダコタハウスのことであり、
彼が撃たれた場所でもありますね。

この親友同士であるエルトンとレノン(ダブルジョンって言われてたみたいですね)は、
70年代前半にフィル・スペクターのセッションで知り合って意気投合し、
1974年にレノンが発表した、
「真夜中を突っ走れ(Whatever Gets You Thru The Night)」
のレコーディングにエルトンが参加し、全米No.1を獲得。
また、エルトンがビートルズの
「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ(Lucy In The Sky With Diamonds)」
をカバーした際にもレノンがボーカル&ギターで参加し、
これもまた全米No.1を獲得しています。

この1974年の11月、
マジソンスクエアガーデンのエルトンのコンサートにレノンが参加し、
「真夜中を突っ走れ」、「ルーシー・・・」と、
「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア(I Saw Her Standing There)」を
共演したのが、レノンが観衆の前でライブを行った最後のものになったことで
エルトンにとっても忘れられない思い出となったことなのでしょう。

ショーン・レノンの名付け親でもあり、
一時別居生活を送っていたヨーコとのヨリを戻すきっかけになった、
この二人の交流は、気軽で親しいものにも思えるのだけど、

年齢的にもレノンの方が7歳年上で、
キャリアも圧倒的に長いレノンのことを、
この曲の歌詞の中で、
身動きできないほど驚くべき庭(存在)であると書いていて、
自分には到底届かない偉大な存在だとリスペクトしているのが、
感じられます。

もう一つ好きな個所。
人々が嘆き悲しみ、彼は若い日に偉大なことをなしえたと言うだろうが、
彼がもし聞いてたら、根っこがしっかりしていて強くなったからさと
言っただろうというところで、

これだけの存在でありながら、
自らのルーツを大切にし、育て上げていったという気持ちが、
レノンにはあったと、エルトンは考えていたんでしょうね。


こんないかにもエルトンがレノンへの想いをしたためた
素晴らしい歌詞も、書いているのはエルトン自身でなく、
盟友バーニー・トーピンなんですよね。

ここ最近、スターシップの「シスコはロックシティ」や、
ハートの「ジーズ・ドリームス」など、
バーニーのかかわった歌詞を紹介する機会が多いですが、
本当になんという才能を持った人なんだろうなと思います。

エルトンとのコンビも、
70年代のエルトン黄金時代の共演から、
70年代後半から一時コンビを解消していたのが、
80年代に入って少しずつコンビ作品を復活させ、
この「ジャンプ・アップ」というアルバムでも、
半分近くがエルトン、バーニーコンビの作品です。

音楽スタイルが時代に合わせいろいろ変わっていっても、
このコンビによる作品は常にベースとなって、
エルトンの世界を表現する「ルーツ」となっていってるのでしょうね。


エルトンのトリビュートソングと言うと、
ブログでも依然取り上げた、
キャンドル・イン・ザ・ウィンド(Candle In The Wind)」(2010.9.7)で、
ノーマ・ジーン(マリリン・モンロー)とダイアナ皇太子妃があまりにも有名ですが、

ボクはこの曲でエルトン・ジョンという存在の偉大さを知ったし、
ジョン・レノンが射殺されたことの重大さを気づかされたし、

エルトンのナンバーの中でも最も好きな中の一曲で、
ボク自身の「ルーツ」になっている曲です。


Jump Up/Elton John

¥1,723
Amazon.co.jp