先週に引き続き、今回も1986年全米No.1ヒットシリーズです。


前回、1986年3月15日付でNo.1だった、
スターシップ「セーラ」に続き、
1986年3月22日付でNo.1となった曲は、


ハート「ジーズ・ドリームス」


シアトルで70年代前半に結成された、
アンとナンシーのウィルソン姉妹を中心とするロックバンド。

ブログでは、以前「GLEE」で取り上げられたナンバーの紹介のひとつとして、
1987年の彼女たちの2曲目の全米No.1ヒット、
アローン(Alone)」(2010.6.6)
を取り上げてます。

80年代前半にバンドとして停滞期にあった彼女たちが、
ヒットメーカー、ロン・ネヴィソンによってプロデュースされた、
1985年発表の8枚目のオリジナルアルバム、
「ハート(Heart)」からの3枚目のシングルで、

通常バンドのリードボーカルをとる、アン・ウィルソンに代わり、
ギタリストのナンシー・ウィルソンがリードボーカルを取った、
幻想的なサウンドと歌詞をドラマティックに聴かせる
バラードナンバーです。


①ステージ演奏を幻想的で不思議な映像とともに見せているPV。
 アン、ナンシーを中心に男性メンバーも美麗なルックスで、
 当時のハードロックバンドの流行スタイルでもあったんですよね。




②映像としては遠くて見づらいですが、当時の雰囲気が伝わる、
 1987年のライブステージ映像です。




③数年前と思われる、アコースティックサウンドがメインのステージから。
 アンはすでに60歳を迎えてますが、
 二人とも変わらず若々しいボーカルを聴かせてくれてます。



☆Heart "These Dreams" from the album "Heart"
 1986年Billboard Hot100 最高位1位(3/22付)


Spare a little candle
Save some light for me
Figures up ahead
Moving in the trees
White skin in linen
Perfume on my wrist
And the full moon that hangs over
These dreams in the mist

>> ほんの少しのキャンドルを残して
>> 私のためにそれを灯してほしいの
>> 灯りの向こうで人影が
>> 木々の間で揺れているわ
>> リネンの布に包まれた白い肌
>> 手首にはパフュームの香り
>> 空の上には満月が揺らめく
>> 全ての夢はこの霧の中

<**
Darkness on the edge
Shadows where I stand
I search for the time
On a watch with no hands
I want to see you clearly
Come closer than this
But all I remember
Are the dreams in the mist

>> 暗闇の果て
>> 影の中立ち尽くす私
>> 時に彷徨いながら
>> 外した時計を眺めているの
>> あなたをはっきりと確かめたいの
>> もっとここへ近づいてほしい
>> でも私が覚えていることは
>> ただこの霧の中の夢だけ
**>

These dreams go on when I close my eyes
Every second of the night I live another life
These dreams that sleep when it's cold outside
Every moment I'm awake the further I'm away

>> 瞳を閉じるとこんな夢が続いていくわ
>> 夜の間中、私はいろんな人生を生きていくの
>> 現実の冷たい世界ではこんな夢も眠りにつき
>> 目が覚めるたびに、この夢から遠ざかってしまう

Is it cloak 'n dagger
Could it be spring or fall
I walk without a cut
Through a stained glass wall
Weaker in my eyesight
The candle in my grip
And words that have no form
Are falling from my lips

>> これは何かの企みなの?
>> 春でも秋でもあるみたいだわ
>> 私はそのまま突き進むの
>> ステンドグラスの壁の中を
>> 視界がぼやけてくると
>> ロウソクを握り締めて
>> 何気ない言葉が
>> 私の唇からこぼれていく

These dreams go on when I close my eyes
Every second of the night I live another life
These dreams that sleep when it's cold outside
Every moment I'm awake the further I'm away

>> 瞳を閉じるとこんな夢が続いていくわ
>> 夜の間中、私はいろんな人生を生きていくの
>> 現実の冷たい世界ではこんな夢も眠りにつき
>> 目が覚めるたびに、この夢から遠ざかってしまう

There's something out there
I can't resist
I need to hide away from the pain
There's something out there
I can't resist

>> そこにいる何かが
>> 私の行く手を阻むの
>> この痛みから逃れなくちゃいけないのに
>> そこにいる何かが
>> 私の行く手を阻むの

The sweetest song is silence
That I've ever heard
Funny how your feet
In dreams never touch the earth
In a wood full of princes
Freedom is a kiss
But the prince hides his face
From dreams in the mist

>> 甘美な歌は静寂
>> ずっとそう思っている
>> おかしいわ、あなたの足が
>> 夢の中では地面についていないのよ
>> 森の中ではたくさんの王子たちが
>> キスで自由な気分にしてくれる
>> でも王子の顔は見えないのよ
>> この霧の中の夢では

These dreams go on when I close my eyes
Every second of the night I live another life
These dreams that sleep when it's cold outside
Every moment I'm awake the further I'm away

>> 瞳を閉じるとこんな夢が続いていくわ
>> 夜の間中、私はいろんな人生を生きていくの
>> 現実の冷たい世界ではこんな夢も眠りにつき
>> 目が覚めるたびに、この夢から遠ざかってしまう

These dreams go on when I close my eyes
Every second of the night I live another life
These dreams that sleep when it's cold outside
Every moment I'm awake the further I'm away

>> 瞳を閉じるとこんな夢が続いていくわ
>> 夜の間中、私はいろんな人生を生きていくの
>> 現実の冷たい世界ではこんな夢も眠りにつき
>> 目が覚めるたびに、この夢から遠ざかってしまう

<** **>間は、アルバムバージョンの歌詞です。
②のライブはアルバムバージョンで歌ってますね。


明確に伝えたいメッセージがあるというのではないけれど、
きっとこんな白日夢感や、
現実が夢に届かないもどかしさを感じたことがある人は
多いんじゃないかなと思わせるような、
心の琴線に触れる歌詞ですよね。

これが、スターシップの
「シスコはロックシティ(We Built This City)」と同じ、
マーティン・ペイジとバーニー・トーピンのコンビによる作品なんですよね。

元々はスティーヴィー・ニックスのソロ作品のために書かれたのだそうですが、
スティーヴィーが結局アルバムに取り上げず、お蔵入りになっていました。

この曲が日の目をみるのには、
やはりその「シスコはロックシティ」で共作に参加していた、
「セーラ」のソングライターでもあり、
キーボーディストでもある、ピーター・ウルフでした。

彼はプロデューサー、ロン・ネヴィソンからの依頼で、
ハートに提供する曲を探していたところ、
マーティン・ペイジからこの曲を渡され、
自らデモテープを作ってみたところ、
ロン・ネヴィソンから気に入られ、
さらにハートにこのデモテープを渡したところ、
特にナンシーがこの曲を気に入り、
アルバムに取り上げることになったのです。

ナンシーがこの曲を取り上げたのには、
もう一つ理由があり、
彼女が友人として交流のあった、
白血病を患っていたシャロン・ヘスという女性のことを思い浮かべ、
どうしてもこの曲を自分で歌って、彼女に捧げたいと思ったのだそうです。

残念ながら、この曲の含まれるアルバム「ハート」を製作途中に、
シャロンさんは他界してしまったそうですが、
現実の世界では生きられなくても、
夢の世界では違う幸せな人生を生きてほしいという
願いが込められているのだそうです。

通常、ハートは姉のアン・ウィルソンがボーカルをとっていますが、
そういったことから、この曲はナンシーがボーカルをとり、
しかもレコーディングの際には、風邪で体調を崩し、
声がかすれた状態になったのが、
かえって功を奏し、この曲の雰囲気を高めたのだということです。


ハートは、60年代半ばに、
シアトルで結成されたアーミーというバンドが母体で、
その後、ホワイト・ハート、ホーカス・ポーカスとバンドが改名し、
その間に、アン・ウィルソンがボーカリストして加入、
1972年にハートと改名後、
ライブに参加していた妹ナンシー・ウィルソンが加入し、
1976年に、「ドリームボート・アニー(Dreamboat Annie)」
というアルバムでデビュー。

アンとナンシーの姉妹を中心に、
迫力のあるボーカルとソリッドなロックサウンドで、
早くから人気を確立し、
「マジック・マン(Magic Man)」「バラクーダ(Barracuda)」
といったヒット曲も放っていました。

80年代に入り、その人気に陰りが出て、
アーミーのころからのオリジナルメンバーである、
ロジャー・フィッシャーとスティーブ・フォッセンが脱退したこともあり、
バンドが低迷期に入っていました。

その状態から脱却を目指して、
新たに起用されたプロデューサーが、ロン・ネヴィソンでした。
彼は、70年代にはレッド・ツェッペリンやシン・リジィ、UFOといったハードロック系から、
ジェファーソン・スターシップ、ベイビーズといったUSロック作品を手掛け、
80年代にはサバイバーのアルバム、
「バイタル・サインズ(Vital Signs)」を大ヒットさせたり、
ハートのヒットの後には、
シカゴの「ルック・アウェイ(Look Away)」のNo.1ヒットや、
ダム・ヤンキーズ、バッド・イングリッシュ、
KISS、オジー・オズボーンといったハードロック系バンドの
大ヒットアルバムを手掛けるなど、
売れる作品を作るヒットメーカーとして知られています。

低迷をしていたハートを再生させるために、
彼女たちのオリジナル作品にこだわらず、
この曲や、アルバムからのファーストシングルである、
「ホワット・アバウト・ラブ(What About Love)」(最高位10位)、
「ナッシン・アット・オール(Nothin At All)」(最高位10位)では、
外部のソングライターに依頼し、

サウンドや曲のイメージもグラマラスでドラマティックな作りにし、
ヴィジュアルイメージもさらに美麗に華々しい感じにしたこともあり、
古くからのファンにはかなり驚かれたものの、
より広い層から支持される結果となりました。

そういえば、「ナッシン・アット・オール」の
日本盤12インチシングルレコードは、
ハート型のディスクじゃなかったかな?
(別のシングルだったかもしれません)

ドラマティックバラードの「ホワット・アバウト・ラブ」、
ハードポップな「ネヴァー(Never)」(最高位4位)では、
アン・ウィルソンがパワフルなボーカルを聴かせ、
「ジーズ・ドリームズ」では、
アダルトコンテンポラリーのファンからも支持されたこともあって、
彼らにとって初の全米No.1ヒットとなったのでした。

ロン・ネヴィソンとは、
この次のアルバム「バッド・アニマルズ(Bad Animals)」や、
「ブリゲード(Brigade)」でも手腕を発揮して、
「アローン(Alone)」(全米No.1)、
「愛していたい(All I Wanna Do Is Make Love To You)」(最高位2位)
といった大ヒット曲を生み出しています。

90年代に入り、ハードロック系の人気に陰りが出てくると、
彼らは原点回帰したアコースティックベースな作品を作り、
ソロ活動や、メンバーの度重なる変更などで、
現在では、アンとナンシーのプロジェクトとして、
レコーディングメンバーとライブメンバーが異なる形で、
活動を続けています。

アン・ウィルソンは、元々太りやすい体質だったところ、
ボーカリストとしての力量を上げるために、
一時かなりの巨体だったこともありましたが、
いわゆる「脂肪吸引」などを行って、
健康に影響の出ない形で活動を続けているのだそうです。

最新作は昨年2012年のアルバム「Fanatic」で、
今年、彼らはロックの殿堂入りも果たしています。


「'86 US No.1」ヒットシリーズ。
次回は来週3月29日の予定。

オーストリア、ウィーンのラップ系シンガーソングライター。
ウィーンが生んだ世界的作曲家をネタにラップしたナンバーで、
世界的大ヒットとなった、異色作です。
英語バージョンとドイツ語バージョンで、
歌詞が違ったりするのですが、
ブログではおそらく英語バージョンの歌詞を取り上げることになると思います。



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