3月に入りました。

記録的寒さの続いた2月から、
ようやく春の足音が近づいてくるのかといった暖かい日も訪れ、
一日も早く、色々な意味で凍えるような日々から、
抜け出した気分になってきますね。


さて、3月最初の今回は、
1986年の全米No.1ヒットを紹介するシリーズです。


前回、1986年2月15日と22日の2週間No.1だった、
ホイットニー・ヒューストンの「恋は手さぐり」に代わり、
1986年3月1日と8日の2週間No.1となったのは、


Mr.ミスター「キリエ」


昨年12月に、やはり1985年のNo.1ヒットシリーズで紹介した、
ブロウクン・ウィングス(Broken Wings)」(2012.12.15)
に続き、セカンドアルバム、
「ウェルカム・トゥ・ザ・リアル・ワールド(Welcome To The Real World)」
からのセカンドシングルで、

軽快かつ壮大なスケール感あふれるなサウンドで、
キリスト教の聖書の一節でもあり、祈りの主文としても用いられている、
「Kyrie Eleison(主よ、憐み給え)」という言葉により、
自ら進むべき道を追い求める姿を描いたロックナンバーです。


①ステージでの演奏シーンをメインに、
 オフショットなどで構成されたPV。




②ヒット当時のフロリダ州での野外ライブステージから。




③数年前から、リチャード・ペイジがボーカリストの一人として同行している、
 リンゴ・スター&ヒズ・オールスター・バンドとして、
 2010年、カリフォルニア州ランチョ・ミラージュでのライブから。



☆Mr.Mister "Kyrie" from the album "Welcome To The Real World"
 1986年Billboard Hot100 最高位1位(3/1,8付の2週間)


Kyrie eleison
Kyrie eleison
kyrie

>> キリエ・エレイソン
>> 主よ、憐み給え
>> 主よ

The wind blows hard against this mountainside
Across the sea into my soul
It reaches into where I cannot hide
Setting my feet upon the road

>> 風はこの山の斜面に激しく吹き付け
>> 海を渡り、我が魂の中へと
>> 隠れようのない場所へとやってくる
>> しっかりとこの道の上に足を立たせようとする

My heart is old it holds my memories
My body burns a gemlike flame
Somewhere between the soul and soft machine
Is where I find myself again

>> 我が心は老いぼれても記憶は保たれ
>> 我が体は宝石の輝きのごとく燃ゆる
>> この魂と柔らかき肉体の間のどこかに
>> 再び自分自身を見つけることだろう

Kyrie eleison
Down the road that I must travel
Kyrie eleison
Through the darkness of the night
Kyrie eleison
Where I'm going, will you follow
Kyrie eleison
On a highway in the light

>> キリエ・エレイソン
>> この道が果てるまで旅を続けなければ
>> 主よ、憐み給え
>> 夜の闇を抜け
>> 主よ、憐み給え
>> 我が行く道をお守りください
>> 主よ、憐み給え
>> 光指すこの旅路の上を

When I was young I thought of growing old
Of what my life would mean to me
Would I have followed down my chosen road
Or only wished what I could be

>> 若き日に年を重ねることについて考えたとき
>> 我が人生に何の意味があるのかと問いかけた
>> このまま選ばれし道にただ従うべきなのか
>> それともを切なる願いに望みを託すべきなのか

Kyrie eleison
Down the road that I must travel
Kyrie eleison
Through the darkness of the night
Kyrie eleison
Where I'm going, will you follow
Kyrie eleison
On a highway in the light

>> キリエ・エレイソン
>> この道が果てるまで旅を続けなければ
>> 主よ、憐み給え
>> 夜の闇を抜け
>> 主よ、憐み給え
>> 我が行く道をお守りください
>> 主よ、憐み給え
>> 光指すこの旅路の上を

Whoa, oh, oh
Whoa, oh, oh
Whoa, oh, oh
Whoa, oh, oh

Kyrie eleison
Down the road that I must travel
Kyrie eleison
Through the darkness of the night
Kyrie eleison
Where I'm going, will you follow
Kyrie eleison
On a highway in the light

>> キリエ・エレイソン
>> この道が果てるまで旅を続けなければ
>> 主よ、憐み給え
>> 夜の闇を抜け
>> 主よ、憐み給え
>> 我が行く道をお守りください
>> 主よ、憐み給え
>> 光指すこの旅路の上を

(repeat)


「ブロウクン・ウィングス」同様、
ヒット当時、非常に影響を受け、好きだったナンバーです。

「ブロウクン・ウィングス」が切なさを感じさせる
茫洋とした中に、希望を見出そうとする曲でしたが、

この曲は、まさに悩みを振り払い、
道を進もうとする力強さとスピード感にあふれ、
ワクワクする気持ちにさせてくれます。

もちろん、その一つが彼らのサウンドテクニックによるものでもありますが。

「ブロウクン・ウィングス」も聖書の中で語られている、
神とイエス・キリストとの関係をもとに歌われた曲ですが、

この曲は、まさに「主イエス・キリストへの祈り」そのもので、
そこに至る心情も含めて、シンプルに書かれた歌詞です。

訳詞については、今回はそういった作りであることも考えて、
それっぽい言葉づかいで書いてみましたが、
リチャード・ペイジ自身の言葉として、
もう少し男っぽく訳してみるというものでもよかったですね。


「キリエ(Kyrie)」というのは、
ラテン語で「主よ」という呼びかけに相当する言葉で、
その主に向かって、「我を憐れんでください」と願う部分が、
「エレイソン」という言葉になります。

ちなみに、カイリー・ミノーグなどの、
名前がカイリーのスペルは、「Kylie」と"l"なので、
果たして出典が同じなのかはわかりません。

新約聖書の「マルコによる福音書」などの一説に出てくるエピソードに、
キリストと弟子たちの一行がエルサレムに向かう途中、
エリコという町で出会った群衆の中に二人の盲人を見つけます。

その二人の盲人は、「主イエス・キリスト」ということをわかり、
彼に向かって、「主よ、われを憐れんでください」と叫びます。
すると、イエス・キリストは、「何を求めているのか。」と尋ね、
盲人二人が「目を開けていただきたいのです。」と答えると、
その二人の目が見えるよう開かせました。
二人は喜び、主イエス・キリストに求道していくというエピソードです。

たぶん、その場で見ていれば、
彼らが盲人であったことはわかるだろうし、
実際、群衆やイエスの弟子たちからは、
こうした彼らの行為を止めようとしていたというのですが、
イエスは彼らに、わざわざその憐れむ内容を尋ね、彼らに答えさせ、
それにより、彼らを開眼させ、従わせるようにしたというのです。

ここがポイントなんですよね。

この曲の詞の世界のベースとなっているのが、このエピソードであり、
一人の人間として、ただ今ある状況のまま生きるべきなのか、
願いをかなえるため、それを明確に叫び、追い求めるべきか。

> Would I have followed down my chosen road
> Or only wished what I could be

詞のこの部分で若き日に悩んだ自分について語っているところです。


実は、ボクの祖母は、故郷の日本キリスト教会系の教会で、
オルガン弾きをしていた人で、
その息子である父も、学生時代、牧師の勉強をしていました。
まあ、普通のサラリーマンになっちゃいましたけどね。

それで、ボクも小学生時代のほんの一時期、
教会学校に通っていた時期があったし、
家でも、食事の前に祈りをするとかやってました。

残念ながら、ボクはそこまで信仰心がなく、
ミッション系の学校には通ったものの、
全く興味なしで、その後きてしまっています。

とはいえ、高校からの親友が、
某地域の教会で教会学校で教えたり、日曜礼拝の司式(司会)をやったりしていて、
ちょっとボクのうちからは遠いので、
クリスマス時期だけ、毎年礼拝にはお世話になってるんです。

なので、こういったエピソードも、
何気に知っている部分と、あんまり理解してなかった部分を比べると、
知らないことの方がいまだに多いです。

特に、「主よ憐み給え」という言い方は、
讃美歌などで聞くことはあっても、
そのままを、牧師の祈りの一節として聞いた覚えが、
ほとんでないんです。

このあたりは、宗派の違いもあるんですよね。


いずれにしろ、そういった詞の宗教的背景をベースにしていることもあるのですが、
やはりこの曲の魅力は、スパッとした切れのいい、
かつ壮大なイメージを抱かせるギター、キーボードメインのサウンドと、
リチャードの男っぽいボーカルによるところが大きいですよね。


現在、リチャード・ペイジがボーカルの一人として参加している、
リンゴ・スター&ヒズ・オールスターバンドが、
絶賛来日公演中です。

25日は、Zepp Tokyoでのライブだったそうですが、
あのクラスの箱で、リンゴやリチャード、
それにスティーブ・ルカサー(Toto)や、グレッグ・ローリー(ジャーニー)らが
見られるってなかなか素敵ですよね。
今更ながら行きたかったです。
3月2日は幕張メッセのようですね。



「'86 US No.1」シリーズ。
次回は、3月15日の予定です。

こちらも20年のバンドキャリアと、2度の改名を経て、
前シングルで初のNo.1を獲得したサンフランシスコのロックバンドの
2曲連続No.1ヒットの2曲目。

こちらは打って変わって、イントロのキーボードとハーモニカの優しいメロディと、
せつない歌声が響く、ミディアムラブバラードです。



さて、グラミー賞からちょっと間が開いてしまいましたが、
ここしばらく、エンタメ業界で続いている授賞式などのイベントでの
スペシャルライブがいくつも会場を盛り上げていましたね。

そんな中から、いくつかピックアップして、
次回まとめて紹介したいと思います。



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