前回に引き続き、今回も1985年の全米No.1ヒットシリーズです。
ちょうど、この年の秋から冬にかけてのNo.1ヒットは、
1週または2週でコロコロ変わる、目まぐるしいチャートだったんですよね。


前回、1985年11月2日付でNo.1だった、
スティーヴィー・ワンダー「パートタイム・ラヴァー」に代わり、
1985年11月9日付でNo.1となったのが、


ヤン・ハマー「マイアミ・ヴァイスのテーマ」


アメリカでは、1984年秋から約5年間にわたってアメリカNBCで放映され、
記録的大ヒットとなった、刑事ドラマのTVシリーズ、
「特捜刑事マイアミバイス(Miami Vice)」のテーマ曲。

チェコ(ヒット当時はチェコスロバキア)出身のシンセキーボーディスト、
ヤン・ハマーにとっては、唯一の全米Top40ヒットシングルで、
歌なしのインストルゥメンタルナンバーとしては、
1982年の映画「炎のランナー(Chariots Of Fire)」(ヴァンゲリス)以来の
全米No.1ヒットとなりました。


①TVシリーズのシーンを使いつつもオリジナルのアクションもあったりする
 意外と知られていないこの曲のPV。




②ヤン・ハマー・グループとしてのライブステージから。



☆Jan Hammer "Miami Vice Theme"
 from the soundtrack album "Miami Vice"
 1985年Billboard Hot100 最高位1位(11/9付)


このイントロのキーボード音が聞こえてくると、
テレビシリーズの映像が脳裏に浮かんできますね。

当時、日本で放映された際のオープニング
(日本語表記と日本語でのナレーション付き)が
こんなのでした。



オープニングテーマは、この本テーマ曲をエディットしたバージョンになってます。
アメリカオリジナルでは、こういういかにもなナレーションは
入っていないのですが、そこが日本らしいのでしょうね。


このTVシリーズは、製作総指揮マイケル・マンによる、
いかにも80年代な新しいタイプの刑事ドラマとして、
エポックメイキングな作品といわれています。

主人公である、ソニー・クロケット刑事役にドン・ジョンソン、
ソニーの相棒であるリカルド・タブス刑事役にフィリップ・マイケル・トーマス。
ソニーはアルマーニに身を包み、フェラーリを乗り回す一見派手な、
しかしマイアミに潜む麻薬などの犯罪に敢然と立ち向かう、
スタイリッシュでかっこいい刑事ドラマでした。

日本でも、柴田恭兵、舘ひろしの「あぶない刑事(デカ)」や、
藤竜也、世良公則の「ベイシティ刑事(コップ)」などは、
「マイアミバイス」の影響を受けている刑事ものですよね。

1984年から1989年にかけて、アメリカでは5シーズン放映され、
記録的大ヒットになったのは、
こういったスタイリッシュさとともに、
リアリティあふれる映像、そして音楽にも力が入れられ、
5シーズンの中で3種類のサウンドトラックアルバムがリリースされています。

この曲の含まれるファーストシリーズのサントラには、
フィル・コリンズの「夜の囁き(In The Air Tonight)」や、
ティナ・ターナーの「あなたのとりこ(Better Be Good To Me)」といった
既存のヒット曲も収録されているほか、
このサントラのために作られた、
グレン・フライの「ユー・ビロング・トゥ・ザ・シティ(You Belong To The City)」は、
Billboard Hot100でも最高位2位を記録。
さらにこのグレン・フライ自身がゲスト俳優として出演した回のサブタイトル、
「運び屋のブルース(Smuggler's Blues)」もそのままのタイトルで、
Billboard Hot100最高位13位を記録するヒットとなっています。


この曲を演奏しているヤン・ハマーは、
1948年チェコスロバキア・プラハ生まれの64歳。
医者でベースプレイヤーでもある父と歌手の母との間に生まれ、
ジャズピアノを通して音楽を志し、
プラハの音楽芸術アカデミーに進みます。

ところが1968年に当時のソ連がチェコスロバキアに侵攻を始めた際、
難を逃れるためにアカデミーを中退してアメリカに渡り、
ボストンのバークリー音楽院で勉強を続けます。

このころから、サラ・ヴォーンやエルヴィン・ジョーンズといった
ジャズミュージシャン、シンガーたちと活動を共にし、
さらに、マハヴィシュヌ・オーケストラに参加して、
レコーディングやライブでのピアノ、
作曲編曲などの活動を行っていきます。

1975年には初のソロアルバムをリリース。
さらにジェフ・ベックとのアルバム制作と世界ツアーの参加と、
方向性がジャズからロック、フュージョンと広がっていきます。

1978年に自らのグループ、ハマーを率いて、
ジャーニーのニール・ショーンらとともにアルバムを制作したり、
80年代に入っては、ミック・ジャガーのソロアルバムにも参加したりしています。

その80年代に入ってからは、TVドラマの音楽やCMの音楽なども手掛け始め、
その流れから、彼に製作総指揮のマイケル・マンから声がかかり、
作られたのが、この「マイアミバイスのテーマ」です。

この曲が全米No.1ヒットとなった4年ぶりの歌なしのインストナンバーで、
その1982年にヴァンゲリスによって全米No.1となった「炎のランナー」以外にも、
この年代では、少ないながらいくつかのインストヒットがありました。
マイク・ポストによる、TV番組のテーマ曲、
「ヒルストリート・ブルース」や「私立探偵マグナム」や、
ハーブ・アルパートの「ルート101」、
「マイアミバイス」と同じ1985年には、
デヴィッド・フォスターが映画「セントエルモス・ファイアー」の
テーマ曲でTop40ヒットを記録しています。

ヤン・ハマーは現在もコンスタントに作品リリースや、
コンサート活動を続けており、
2006年には、このサントラにも収められている、
「クロケットのテーマ(Crokett's Theme)」のニューレコーディングを
ラッパーのTQをフィーチャーして行っています。

また、主演俳優であるドン・ジョンソンは、
1986年には自らの音楽活動としてアルバムリリースを行い、
「ハートビート(Heartbeat)」を全米Top5ヒットにしています。


「'85 US No.1」ヒットシリーズ。
次回は、11月16日の予定。

60年代から活躍を続けてきたアメリカの西海岸のロックグループが、
グループの核となるメンバーが次々よ抜け、
新たなグループとして3度目の改名をし、
初めてリリースしたアルバムから、
彼らにとっては初の全米No.1ヒットとなった、
明るく勢いのある「ロックンロール・地元賛歌」です。


Miami Vice/Various

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