今回は、1985年の全米No.1ヒットシリーズです。


前回、1985年4月13日付から4週間1位であった、
USA・フォー・アフリカの「ウィ・アー・ザ・ワールド」に代わり、
1985年5月11日付でNo.1になったのは、


マドンナ「クレイジー・フォー・ユー」


アルバム「ライク・ア・ヴァージン」が破竹の勢いでヒット中の彼女が、
そのほぼ同じ時期にレコーディングされた、
ハロルド・ベッカー監督、マシュー・モーディーン主演の青春映画、
「ビジョン・クエスト/青春の賭け(Vision Quest)」のサントラからの
ファーストシングルで、

マドンナにとっても初のバラードヒットであり、
一介のダンスポップシンガーからの大きな成長をとげた、
印象的なラブバラードです。


①映画のシーンをメインに構成されたPV。
 マドンナ自身のスタイルは、「ライク・ア・ヴァージン」のままですね。




②1985年の「ヴァージンツアー」でのライブステージから。
 当時の若々しさ、熱さがそのまま伝わってくるステージです。




③2004年の「リインヴェンションツアー」でのライブステージから。
 マドンナの声がだいぶ太くなっているのが、
 ②と聴き比べてもわかるかと思います。



☆Madonna "Crazy For You" from the soundtrack album "Vision Quest"
 1985年Billboard Hot100 最高位1位(5/11付)


Swaying room as the music starts
Strangers making the most of the dark
Two by two their bodies become one

>> 音楽が始まるとフロアが揺らめき始める
>> 見知らぬ同士が暗闇の中動き出し
>> お互いの体と体を一つにするの

I see you through the smokey air
Can't you feel the weight of my stare
You're so close but still a world away
What I'm dying to say, is that

>> タバコの煙ごしにあなたを見つめる
>> 私の視線を強く感じるはずよ
>> こんなに近くにいるのにまだ心は遠いまま
>> あなたに言いたくて仕方ないの、それは

I'm crazy for you
Touch me once and you'll know it's true
I never wanted anyone like this
It's all brand new, you'll feel it in my kiss
I'm crazy for you, crazy for you

>> あなたに夢中だってこと
>> 一度触れてみれば、本気だってわかるはずよ
>> こんなに誰かを求めたことって一度もなかった
>> 本当に初めての気持ちよ、私のキスで感じてほしい
>> あなたに夢中なの、夢中なのよ

Trying hard to control my heart
I walk over to where you are
Eye to eye we need no words at all

>> この気持ちを抑えるなんてとてもできない
>> あなたのいるところならどこだって歩いていくわ
>> 目と目を合わせれば、もう言葉なんていらないでしょう

Slowly now we begin to move
Every breath I'm deeper into you
Soon we two are standing still in time
If you read my mind, you'll see

>> ゆっくりと今私たち動き出すの
>> 息をするたびあなたに深く入り込んでいく
>> すぐに私たち二人一緒に立ち上がる
>> もし私の心が読めるならば、きっとわかるはずよ

I'm crazy for you
Touch me once and you'll know it's true
I never wanted anyone like this
It's all brand new, you'll feel it in my kiss
you'll feel it in my kiss

>> あなたに夢中だってこと
>> 一度触れてみれば、本気だってわかるはずよ
>> こんなに誰かを求めたことって一度もなかった
>> 本当に初めての気持ちよ、私のキスで感じてほしい
>> あなたに夢中なの、夢中なのよ

Because I'm crazy for you
Touch me once and you'll know it's true
I never wanted anyone like this
It's all brand new, you'll feel it in my kiss
I'm crazy for you, crazy for you
Crazy for you
Crazy for you

>> だってあなたに夢中なんだもの
>> 一度触れてみれば、本気だってわかるはずよ
>> こんなに誰かを求めたことって一度もなかった
>> 本当に初めての気持ちよ、私のキスで感じてほしい
>> あなたに夢中なの、夢中なのよ
>> あなたに夢中
>> 夢中なのよ

It's all brand new, I'm crazy for you
And you know it's true
I'm crazy, crazy for you
(repeat)

>> 初めての気持ちよ、あなたに夢中なの
>> 本気だってわかるはずよ
>> とても、あなたに夢中なのよ


この1985年のNo.1ヒットというのは、
フォリナーの「アイ・ウォナ・ノウ」に始まって、
ここまでの6曲、すべてバラードナンバーが続きました。

また前年からの流行でもある、
サントラからのNo.1ヒットでもあり、

この「ビジョン・クエスト」のサントラにも、
Top40ヒットとなった、ジャーニーの、
「オンリー・ザ・ヤング(Only The Young)」や、
Top40入りはしなかったもののヒットした、
スタイル・カウンシルの
「シャウト・トゥ・ザ・トップ(Shout To The Top)」。
ほかにも、ドン・ヘンリー、サミー・ヘイガー、ディオ、
REOスピードワゴン、フォリナー、ジョン・ウェイトと、
マドンナ以外のアーティストはロック系で占められている
サントラアルバムになっています。

その中で、マドンナはこのバラードの「クレイジー・フォー・ユー」と、
ロック系に近いダンスナンバー「ギャンブラー(Gambler)」の2曲が
収録されており、サントラのメインアーティストとなっています。

映画は、マシュー・モーディーン演じる
レスリングのチャンピオンを目指す青年の挑戦と、
相手役のリンダ・フィオレンティーノ(デビュー作)との恋を描いた青春映画で、
映画自体はあまり大きなヒットにはなりませんでしたが、
サントラアルバムはヒットしました。


この曲はマドンナはもちろんのこと、
周囲のスタッフにとっても新たな挑戦となった曲でした。

きっかけは、音楽プロデューサーのフィル・ラモーンが、
映画のプロデューサーに、この映画のメインテーマを歌わせる
シンガーがいると話をもちかけ、

はじめはまだ若く、見かけも少しずれた感じの彼女に、
果たしてそれだけの歌が歌えるのかと心配されたのですが、
フィル・ラモーンの強引な押しによって、
レコーディングが開始されたのです。

曲はジョン・リンドとジョン・ベティスによるバラードで、
最初はレコーディングでもあまりいい出来でなかったそうなのですが、
レコーディングプロデューサーである、
ジョン・“ジェリービーン”・ベニテスのミックスにより、
彼女の性質や映画のイメージを高めるよう作り直され、
この作品が生まれたとのことです。

ちなみに、ジェリービーンは、
マドンナのデビュー作「バーニング・アップ(Madonna)」の
プロデューサーでもあり、
のちに個人名義でダンスヒットも出している、
ダンスミュージックのサウンドプロデューサーですが、

彼にとっても、こういったバラードのプロデュースは初めてで、
しかし、この挑戦が彼にとってもいい結果を生んだことは
間違いありません。

映画のサントラは1985年の3月に発売され、
その第1弾シングルとして、この曲がリリースされるに当たり、
当時、「ライク・ア・ヴァージン」のアルバムが大ヒットし、
セカンドシングルの「マテリアル・ガール(Material Girl)」も
ヒットチャートを上昇中であったタイミングで、
さらに3枚目のシングルの「エンジェル(Angel)」のリリースも
決まっていたことから、

これらのサウンドと毛色の全く違うこのバラード曲を、
シングルリリースすることに、
ワーナー・ブラザーズは初めいい顔をしなかったそうです。

しかし、このレコーディングと映画プロデューサーの説得に、
ワーナーの会長が折れて、リリースが決まったとのことです。

チャート的には、この前週まで4週間1位であった、
「ウィ・アー・ザ・ワールド」の勢いの前に、
2位どまりの可能性もあったのですが、
チャリティーレコードゆえ、一気に売れてしまったこともあって、
ラッキーにも、1位を獲得することができたのでした。

彼女にとっては、2曲目の全米No.1であり、
初めてのバラードヒットで、

これが、のちにいろいろなタイプの歌を歌えるシンガーとしての
成長の一歩だったことは間違いありません。


最近のマドンナですが、
ブログでも紹介した、今年2月のスーパーボールのハーフタイムショウでの
パフォーマンスで初披露された新曲、
「ギミ・オール・ユア・ラヴィン(Gimme All Your Luvin')」は、
ラッパーのニッキー・ミナージュとM.I.A.がフィーチャーされ、
Billboard Hot100では最高位10位のヒットとなり、

1980年代から90年代、2000年代、2010年代と、
4ディケイドでTop10ヒットを放った女性シンガーとして、
記録されることになりました。
(同じ4ディケイドでは、シェールが60年代から90年代までで、
達成しています)

この曲も含まれる最新アルバム「MDNA」も全米1位となり、
オリジナルアルバムでは5作連続、通算8作目のNo.1アルバムになっています。

セカンドシングルの「ガール・ゴーン・ワイルド(Girl Gone Wild)」は、
一部で放送禁止になるなどの過激な内容で、
まだまだとどまるところを知らない彼女ですね。



次回、「'85 US No.1」シリーズは、来週5月18日の予定。
またもや映画サントラからのヒットで、
スコットランド出身のロックバンドの初全米ヒットにして、
初の全米No.1となる、エモーショナルなロックナンバーです。



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