さて、当初の予定からだいぶ遅くなってしまいましたが、

昨年11月に行われた、今年のグラミー賞のノミネーションコンサートの中で、
アッシャーとともにトリビュートステージをつとめた、
ソングライターであり、シンガーであるヴァレリー・シンプソン。

彼女がそのステージで披露した曲は、
1960年代に亡き夫とともに作り上げ、
マーヴィン・ゲイとタミー・テレルによってヒットした、
「ユア・オール・アイ・ニード(You're All I Need To Get By)」

(「2012 The 54th Grammy Nominees~2012グラミー賞一週前予想」で紹介しました)


60年代、70年代と多くのR&Bの名曲を作り上げてきたソングライター夫婦が、
1985年、自らのデュエットソングで、
ポップチャートで大ヒットさせた曲を今回紹介します。


アシュフォード&シンプソン「ソリッド」


長く築き上げてきた、R&Bのテイストと、
80年代のブラックコンテンポラリーのテイストをミックスさせた、
愛の絆の強さを歌いあげたラブソングです。



①前段として、ケンカをして逃げ走ってきた彼女のもとに、
 彼が追いかけてきて、愛を込めた告白をし、
 二人の絆の深さをより強くさせたという、
 歌詞に沿ったイメージで作られたPV。
 夫婦の中の良さ、力強さにあふれていて素敵な作品です。




②年代はわかりませんが、かなり後年になってからの
 野外でのライブから。
 本人たちが「新しい『ソリッド』」よ。」と言ってる通り、
 歌詞もだいぶ変えて歌われています。



☆Ashford & Simpson "Solid" from the album "Solid"
 1985年Billboard Hot100 最高位12位


And for love's sake, each mistake, ah, you forgave
And soon both of us learned to trust
Not run away, it was no time to play
We build it up and build it up and build it up

>> そしてこの愛のため、犯してきた過ちを、あああなたは赦してくれたのね
>> そしてすぐ、私たち二人は、わかりあうことを知った
>> もう逃げることも、いらぬことをする時間もないんだ
>> 私たち築いていく、築いていく、築いていく

And now it's solid
Solid as a rock
That's what this love is
That's what we've got, oh, mmm…

>> そして今強い絆に
>> 岩のような硬い絆になった
>> それはこの愛が何なのかを
>> 私たちが勝ち得たものなの

Solid (Oh)
Solid as a rock
And nothing's changed it (Ooh)
The thrill is still hot, hot, hot, hot, hot, hot, hot, hot

>> 硬く
>> 岩のような硬い絆になった
>> もう何にも変えられないの
>> このスリルはまだ、ホット、ホット、ホット・・・

Oh…oh…oh…ah…

You didn't turn away
When the sky went gray
Somehow we managed
We had to stick together (Ooh…ooh…ooh…ooh…)

>> 振り返らないで
>> 空はすっかり灰色になってしまったけど
>> なんとかうまくやってきたさ
>> ボクらはひとつにならなくちゃ

You didn't bat an eye
When I made you cry
We knew down the line
We would make it better (Ooh…ooh…ooh…ooh…)

>> 君は瞬き一つしてなかった
>> ボクがを泣かせた時だって
>> お互いしっかりと分かりあい
>> よりよい関係にしていこうとしてたんだ

And for love's sake, each mistake, ah, you forgave
And soon both of us learned to trust
Not run away, it was no time to play
We build it up and build it up and build it up

>> そしてこの愛のため、犯してきた過ちを、あああなたは赦してくれたのね
>> そしてすぐ、私たち二人は、わかりあうことを知った
>> もう逃げることも、いらぬことをする時間もないんだ
>> 私たち築いていく、築いていく、築いていく

Now it's solid
Solid as a rock
And nothing's changed it (Ah…)
The thrill is still hot, hot, hot, hot, hot, hot, hot, hot

>> 硬く
>> 岩のような硬い絆になった
>> もう何にも変えられないの
>> このスリルはまだ、ホット、ホット、ホット・・・

Oh…oh…oh…ah…

Oh, knock-knock on wood
You understood
Love was so new
We did what we had to (Ooh…ooh…ooh…ooh…)

>> ああ、何度も何度も願いをかけたこと
>> 君はわかっていたね
>> 愛はまた新たなものになり
>> ボクらはすべきことをやってきたんだ

And with that feeling we were willing to take a chance
So against all odds, we made a start
We got serious (Ooh), this wouldn't turn to dust
We build it up and build it up and build it up

>> チャンスをつかむためなら、そんな苦しみだって構わないわ
>> どんなに見込みのない状態だって、私たちはスタートできたの
>> 私たち真剣に向き合った、この気持ちは無にはしないさ
>> 私たち築いていく、築いていく、築いていく

And now it's solid (Ooh)
Solid as a rock
That's what this love is (Oh)
That's what we've got, oh (Oh, oh)

>> そして今強い絆に
>> 岩のような硬い絆になった
>> それはこの愛が何なのかを
>> 私たちが勝ち得たものなの

Solid (yes, it is)
Solid as a rock (Ah)
And nothing's changed it (Ooh)
The thrill is still hot, hot, hot, hot, hot, hot, hot, hot

>> 硬く (そうさ堅く)
>> 岩のような硬い絆になった
>> もう何にも変えられないの
>> このスリルはまだ、ホット、ホット、ホット・・・

Solid


歌詞を見ていて思ったんですが、
この詞は、二人の愛の絆がとても堅いことを歌っているとともに、
神との愛と信頼、
そして強いつながりについても歌われているような気がします。

英語の言い回しの多い詞でもあるので、
うっかりすると意味が通じなくなるのですが、

Knock-knock on woodという言い方は、
木を何度も叩くことで、
良いことが起きますようにと願いをかけるという、
クリスチャンの間で行われている願かけのしぐさのことで、

そんなことからも、男女のつながり→神とのつながりについて、
願いを込めていたんじゃないかなと考えたんですよね。

エイミー・スチュワートの70年代大ヒットにも、
「ノック・オン・ウッド」という大ヒット曲がありました。


音的にも、70年代のモータウンやアトランティックといった、
老舗のR&Bのテイストを生かしつつ、
仕上げは80年代のブラックコンテンポラリー風で、
ディスコノリとも違って、むしろロックのノリに近い、
ちょっとハードなビートを持った曲でもあります。


ニコラス・アシュフォードは、1941年サウスカロライナ州フェアフィールド生まれ、
ヴァレリー・シンプソンは、1946年ニューヨーク・ブロンクス生まれ。

1963年に、ニューヨークハーレムのバプティスト教会で出会った二人は、
初め、デュオとして何曲かをシングルとして発売したもののヒットせず、

それぞれ別のグループで歌ったり、バックアップシンガーとして活動しながら、
夫婦で曲を書く、ソングライターとしての仕事を始めます。

レイ・チャールズの「レッツ・ゴー・ゲット・ストーンド(Let's Go Get Stoned)」や、
アレサ・フランクリンの「クライ・ライク・ア・ベイビー(Cry Like A Baby)」などの
R&Bヒットを書いたことで注目された二人は、

モータウンとのソングライティング契約を結び、
当時のモータウンの看板シンガーであったマーヴィン・ゲイが、
同じレーベルの女性シンガー、タミー・テレルと、
デュエットを組んだ際、多くのヒット曲を提供しました。


その代表的なヒットナンバーが、
「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ(Ain't No Mountain High Enough)」


③マーヴィン・ゲイとタミー・テレルのデュエット




④アシュフォード&シンプソンの二人もライブで歌いました。




マーヴィンとタミーのこのバージョンは、
R&Bチャートで9位、ポップチャートでも19位のスマッシュヒットとなり、

この曲は後に、シュープリームスからソロに転向した、
ダイアナ・ロスがカバーして、全米No.1ヒットにまで押し上げる、
モータウンR$Bの代表的1曲となりました。

ニコラスとヴァレリーの二人は、この曲の他にも、

「恋はまぼろし(Ain't Nothing Like The Real Thing)」
「君との愛に生きて(If I Could Build My Whole World Around You)」
そして、先日のグラミー賞で、
アッシャーとヴァレリー・シンプソンのデュエットで披露された
「ユア・オール・アイ・ニード(You're All I Need To Get By)」
といったナンバーをマーヴィンとタミーに提供し、大ヒットさせています。

1970年にタミーが24歳の若さで、脳腫瘍で他界してしまった後も、
マーヴィンのソロ、ダイアナ・ロス、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ、
シュープリームス、グラディス・ナイト&ザ・ピップスといった、
モータウンを代表するシンガーたちに曲を提供していきました。

1973年にモータウンを離れ、ワーナーブラザーズに移籍した頃から、
再びアシュフォード&シンプソンとしてのデュエットの活動も復活させ、

あまり大きなヒットは出せなかったものの、
コンスタントに作品を発表し続けました。

1979年には、アルバム「ステイ・フリー(Stay Free)」からのシングル、
「ファウンド・ア・キュア(Found A Cure)」で初のTop40入りを果たします。

ワーナー時代にもソングライターとしてのコンビネーションも発揮し、
クインシー・ジョーンズがプロデュースし、
チャカ・カーンを初めとする豪華ミュージシャンの参加したアルバム、
「スタッフ・ライク・ザット(Stuff Like That)」に作品を提供し、
またバックボーカルとしても参加して大成功を収めました。

この縁でつながったチャカ・カーンへ提供した曲が、
先日ブログでも紹介した、ホイットニー・ヒューストンのカバーでも知られる、
「アイム・エヴリ・ウーマン(I'm Every Woman)」でした。

1982年にはキャピトルレコードへ移籍し、
1985年にリリースしたアルバム「ソリッド(Solid)」のタイトル曲である
今回の曲で、彼らにとって最大のポップチャートである12位となり、
R&Bチャートでも唯一のNo.1ヒットとなったのでした。

その後も大きなヒットは出なかったものの、コンスタントに作品を発表するとともに、
ニューヨークにライブレストランをオープンし、
若手のアーティストをパフォーマンスさせるなどの活動なども行ってきました。

2009年には初来日し、ブルーノート東京でのライブも実現しています。

2011年8月22日、ニコラスは咽頭がんのため、70歳で他界してしまいました。
レゲエスタイルのルックスで気さくな人柄だったニコラスは、
レイ・パーカーJr.の「ゴーストバスターズ」のPVのラストで、
一瞬登場もしてましたね。

二人のパフォーマンスが見れなくなったのは残念ですが、
奥様であるヴァレリーが、まだまだボーカリストとして
グラミー賞のトリビュートステージで素晴らしい歌声を聴かせているだけに、
まだヴァレリーには頑張って活動を続けてほしいものです。


さて、次回のブログでは、先日のグラミー賞受賞式のステージで、
パフォーマンスでも大活躍し、アデルに続く5部門での受賞も果たした、
ロックバンドの、今回のグラミー受賞ナンバーを紹介したいと思います。


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