さて、今回も1983年年間チャートの中から、
思い出のヒット曲の紹介をしたいと思います。

今回の曲は、実際には1982年末にピークを迎えている曲で、
ちょうど「全米トップ40」聴きはじめの頃、
かなり夢中になった曲の一曲でもあります。


ジョー・ジャクソン「ステッピン・アウト(夜の街へ)」


イギリスで70年代後半から活躍するマルチミュージシャン。
ビートロックでスタートしてから、レゲエ、サルサ、ジャズ、
ラウンジミュージックと幅広い音楽性を持ち、
現在でも音楽通にも高い人気を誇っています。


彼の1982年発表のアルバム、
「ナイト・アンド・デイ(Night And Day)」からの
ファーストシングルで、

都会の夜のライトの中を走る車に乗った気分で、
ピアノとベース音が流れるように響く、
大人のおしゃれなナンバーです。


①曲同様、夜の高速、街の明かり、窓の明かりと人、舞踏会…
 映像のしゃれっ気も素敵なPVです。




②1986年の中野サンプラザでのライブから。
 この時点ですてにアレンジが全く変わって、
 静かで少し重めの幻想的なバージョンになっています。




③90年代のライブでは、ラウンジミュージック風なアレンジでも
 演奏されているようです。



☆Joe Jackson "Steppin' Out" from the album "Night And Day"
 1982年Billboard Hot100 最高位6位


Now -
The mist across the window hides the lines
But nothing hides the colour of the lights that shine
Electricity so fine
Look and dry your eyes

>> 今
>> 窓の向こうの霧が視界を遮っている
>> でも光輝くライトの色は隠せやしない
>> 電飾の街がとても素敵で
>> 眺めていると涙さえ乾いてくるんだ

We -
So tired of all the darkness in our lives
With no more angry words to say can come alive
Get into a car and drive
To the other side

>> ボクたち
>> 生きている間に起こる全ての闇にすっかり疲れてしまった
>> もう怒りの言葉さえ発することなく生きていこうじゃないか
>> 車に乗り込んでドライブだ
>> あの別の世界へと

Me babe - steppin out
Into the night
Into the light
You babe - steppin out
Into the night
Into the light

>> ボクとベイブ、出かけよう
>> 夜のしじまへ
>> 光の中へと
>> 君とベイブ、出かけたいんだ
>> 夜のしじまへ
>> 光の中へと

We -
Are young but getting old before our time
We'll leave the T.V. and the radio behind
Don't you wonder what we'll find
Steppin out tonight

>> ボクたち
>> 今は若いけれどいずれボクらの時代の前に年をとってしまうのさ
>> TVから離れて、ラジオも奥にしまっておこう
>> 何を見つけられるかを期待して
>> 今夜出かけようじゃないか

You -
Can dress in pink and blue just like a child
And in a yellow taxi turn to me and smile
We'll be there in just a while
If you follow me

>> 君は
>> 子供みたいなピンクとブルーのドレスを着て
>> 黄色のタクシーの中でボクに振り返って微笑むんだ
>> ちょっと時間があればそこに行けるよ
>> ボクと一緒にいてくれればね

Me babe - steppin out
Into the night
Into the light
You babe - steppin out
Into the night
Into the light

>> ボクとベイブ、出かけよう
>> 夜のしじまへ
>> 光の中へと
>> 君とベイブ、出かけたいんだ
>> 夜のしじまへ
>> 光の中へと

Me babe - steppin out
Into the night
Into the light
You babe - steppin out
Into the night
Into the light

>> ボクとベイブ、出かけよう
>> 夜のしじまへ
>> 光の中へと
>> 君とベイブ、出かけたいんだ
>> 夜のしじまへ
>> 光の中へと


1982年の暮れ、「全米トップ40」を聴きはじめたボクは、
アメリカってずいぶん色んなタイプの音楽がヒットしてるんだなと思い、

ロック、ダンスポップ、バラード、R&B、カントリー…

そんな中で、これらの王道を行くヒット曲たちとはちょっと異質な、
夜のムードを感じさせる、大人のおしゃれなナンバーがあるなあと
夜遅いくらい中でラジオを聴きながら、夢の世界へと引っ張ってくれる曲、

一つが、以前にも紹介したドナルド・フェイゲンの「I.G.Y.」
そしてもう一曲が、この「ステッピン・アウト」でした。

後年ジャズアレンジや、ラウンジミュージック風に演奏されているのもいいのですが、
やっぱりこの曲に関しては、ヒットしている時に聴いていた思い入れもあるのですが、
オリジナルのちょっとスピーディで、流れるようなピアノとリズム隊の奏でる
キラキラした感じが大好きですね。

この曲の描かれている世界は、ニューヨークの夜そのもので、
実際この時期、ニューヨークのアパートメントに暮らして、
PVのようにピアノを弾きながら曲を書いていた彼が、
想像していた世界を繰り広げているような曲なんですよね。
元々のニューヨーカーというわけでなく、
よそ者(イギリス人)であるところの視点で書かれているからなのか、
自分たちにも受け入れられやすいイメージなんだろうなと思います。
(「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」(By Sting)な世界ですよね)


ジョー・ジャクソンは、1954年イギリスのバートン・アポン・トレント生まれ。
幼少時から体があまり丈夫でなく、外で遊んだりすることができなかったため、
家で音楽に親しむようになり、バイオリン、ピアノを習得していきます。

奨学金でロンドン・ロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージックに入学し、
クラシックを学んでいた彼が、やがてロックに目覚め、
いくつかのパブなどで演奏をしながら、デモテープを作り、
そんな中で、後に彼のパートナーとなっていく、
デヴィッド・カーシェンバウムに認められて、A&Mレコードと契約。

1978年にファーストアルバム「ルック・シャープ(Look Sharp)」で
デビューしたこの時期は、ロンドンのミュージックシーンが、
パンクからニューウェーブへと移行していく時期であり、
彼が最初に手掛けた音はまさにこういったニューウェーブの音を意識した
ビートロックタイプの音楽で、エルヴィス・コステロなども、
こういったシーンから出てきています。

このアルバムから「奴に気をつけろ(Is She Really Going Out With Him?)」が、
イギリス、アメリカなど数カ国でスマッシュヒットとなり、
ミュージシャンとしてはまずまずのスタートを切ります。

ところが、このビートロックスタイルには早々に飽きがきて、
色んな形の音楽を模索し始めます。

3枚目の「ビート・クレイジー(Beat Crazy)」ではレゲエを取りいれ、
4枚目の「ジャンピン・ジャイブ(Jumpin' Jive)」では、
スウィング・ジャズをベースにしたジャイブミュージックが主体となっていきます。

そして5枚目のアルバムである、1982年の「ナイト・アンド・デイ」では、
ジャズを意識してニューヨークに移住し、
クラブめぐりをしながら曲を書き溜め、
当時のレコード盤ではA面が夜のサイド、B面が昼のサイドとして曲が収められ、
そのA面に入っているのが、この「ステッピン・アウト」です。

イギリス、アメリカ共、最高位6位と彼にとって最大のシングルヒットとなり、
日本でも決して名の知れたシンガーではなかったものの、
曲先行で大人のイメージが受け入れられ、かなりのヒットとなりました。

日本ではこのシングルのB面に収められたのが、
アメリカでのセカンドシングルとしてヒットした、アルバムのB面に入っている
「危険な関係(Breaking Us In Two)」で、
午後のけだるい雰囲気の中で聴くとかなりはまるナンバーです。
この曲も機会があれば紹介したい曲の一つですね。

ジャズ、ラテン音楽に取りつかれた彼は、正式にニューヨークに移住し、
さらに1984年の6枚目のアルバム、
「ボディ・アンド・ソウル(Body And Soul)」では、
ホーンセクションを取り入れたり、
よりニューヨークっぽい洗練された音楽を展開し、
「ホワット・ユー・ウォント(You Can't Get What You Want)」がヒット。

さらに、レコーディングスタイルなどにもこだわりを持ちだし、
ライブレコーディングや、オーケストラとのコラボレーションなど、
その方向はジャズやクラシックの方面へと進んでいきました。

そのこだわりの姿勢が行き過ぎたのか、90年代に入って、
うつ病から音楽に対する情熱がうすれ、
音楽界からの引退を決意したものの、
やがて、うつ病を克服した頃から音楽活動を再開し、
自らのバンドを率いての音楽制作に専念するとともに、
ライブ活動も再開させます。

21世紀に入り、再び原点回帰のロック、バンドミュージックをベースに、
コンスタントな音楽制作と、ライブ活動を続けており、
日本にもしばしば来日を果たしているようです。

80年代の当時は、かなりの気難し屋で、
雑誌などの取材にもかなりてこずったという話もよくきかれました。
ポップチャートでのヒット曲は多くはないものの、
個性的で、何より音の世界にのめりこめる曲を作ってくれる存在として、
これからの活動にも期待したいと思います。



次回も80年代前半のヒットから選曲したいと思います。




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