年末から年始にかけて、昨年の音楽界を振り返り、
年間チャートを聴く機会もあったかと思います。

ラジオ日本で毎週オンエアされている、
「全米トップ40 The 80's」でも、
ちょうど先週と今週の2週に分けて、
「全米トップ40 1983年年間Top100」が放送されています。

先週土日が100位~51位、
来る土日が50位~1位のオンエアが放送されます。

土曜の3時間版では50曲フルオンエア。
日曜の「Deluxe Edition」では、
ゲストに湯川れい子さんを迎えての解説付き。


この1983年の年間チャートというのは、
1982年11月末から「全米トップ40」を聴いていた自分にとっては、
ちょうど集計期間的に、これまで聴いてきたTop40ナンバーの
集大成的年間チャートであるので、
とりわけ思い入れがあります。

そんな中、先週放送された100位から51位の中にも、
これまでブログで取り上げてきた曲、アーティストもいくつもあり、
調べてみたら、50曲中16曲はブログで取り上げていました。
この中には、ニール・ダイアモンドの「ハートライト」(59位)も、
入っていました。

来週放送される50位~1位の中にも、かなりの紹介済みの曲が、
入っていることでしょう。
カルチャー・クラブ、デュラン・デュラン、マイケル・ジャクソン、
ポリス、アイリーン・キャラ、ホール&オーツ、etc...


それでも、まだまだ未紹介のアーティスト、曲もたくさんあって、
今回はそんな中から、先週放送された1983年の年間92位に入っていた
異色のロックバンドのヒットナンバーを紹介したいと思います。



ザ・チューブス「シーズ・ア・ビューティ」


もちろん、あの真夏の湘南サウンドの「TUBE」とは違います。


サンフランシスコで70年代に結成されたハードロックバンド。
派手なコスチュームやグラムロック的ステージパフォーマンスで、
ライブ人気の高かったバンドです。


1983年にリリースされたアルバム、
「アウトサイド・インサイド(Outside Inside)」からのシングルカットで、
デヴィッド・フォスターがプロデュース、
Totoのスティーブ・ルカサーがギターで参加している、
華やかでかつ繊細、ハードかつメロディアスなロックナンバー。
彼らにとって、唯一の全米Top10入りシングルです。


①かなりコンセプチュアルな内容のPV。
 このヒット当時に見ていた時には、いまいち意味不明だったのですが、
 この歌詞と照らし合わせてみて、ようやく方向性がわかって、
 ラストの彼女の登場シーンや、最後のエグいオチもなんとなく理解できました。




②発売当時のライブステージから。
 かなりアバンギャルドなステージで知られた彼らですが、
 この曲に関しては、紅白スーツにハイハットスタイルで、
 わりとまとも(?)というか、普通のステージですね。




③2009年、B.B.キングライブ出演時のステージから。
 ボーカルのフィー・ウェイビルがかなり年を取ってきていますが、
 ステージは相変わらずというか、さらに荒々しくなっているようです。



☆The Tubes "She's A Beauty" from the album "Outside Inside"
 1983年Billboard Hot100 最高位10位


Step right up and don't be shy
Because you will not believe your eyes
She's right here behind the glass
And you're gonna like her 'cause she's got class

>> 先へ進むんだ、恥ずかしがらずに
>> だって君の眼を疑うようなことが待ってるからさ
>> あのガラス越しにいる彼女
>> きっと君も好きになるはず、だって彼女は最高だからさ

You can look inside another world
You get to talk to a pretty girl
She's everything you dream about

>> ここでは違う世界が広がってるのさ
>> かわいい女の子と話せるんだから
>> 彼女は君が夢見ていたそのものなんだ

But don't fall in love
She's a beauty
One in a million girls
She's a beauty
Why would I lie?
Why would I lie?

>> でも恋には落ちるなよ
>> 彼女は美しい
>> 百万人に一人の女の子
>> 彼女は最高さ
>> オレが嘘でも言ってると思うかい?
>> 信じられないのかい?

You can say anything you like
But you can't touch the merchandise
She'll give you every penny's worth
But it will cost you a dollar first

>> 好きなように言うがいいさ
>> でもあの商品に触れちゃダメだぜ
>> 彼女は君にいくらでも小銭くらいの価値をもたらせてくれるけど
>> 君が支払うのはドル札になるんだから

You can step outside your little world
You can talk to a pretty girl
She's everything you dream about

>> 君のちっぽけな世界からぬけだせるのさ
>> かわいい女の子と話せるんだから
>> 彼女は君が夢見ていたそのものなんだ

But don't fall in love
She's a beauty
One in a million girls
One in a million girls
Why would I lie?
Why would I lie?

>> でも恋には落ちるなよ
>> 彼女は美しい
>> 百万人に一人の女の子
>> 百万人に一人の女の子
>> オレが嘘でも言ってると思うかい?
>> 信じられないのかい?

Step outside your world

>> 君の世界から抜け出すんだ

But don't fall in love
She's a beauty
One in a million girls
One in a million girls
Why would I lie?
Why would I lie?

>> でも恋には落ちるなよ
>> 彼女は美しい
>> 百万人に一人の女の子
>> 百万人に一人の女の子
>> オレが嘘でも言ってると思うかい?
>> 信じられないのかい?

But don't fall in love
If you do you'll find out she won't love you
One in a million girls
One in a million girls
Why would I lie?
Why would I lie?

>> でも恋には落ちるなよ
>> もし君がさがしあてたって彼女は見向きもしてくれないのさ
>> 百万人に一人の女の子
>> 百万人に一人の女の子
>> オレが嘘でも言ってると思うかい?
>> 信じられないのかい?


この曲は、当初ボクの拙い耳で聴いていた英語の理解不足があって、

たとえば、サビの
>> But don't fall in love...she's a beauty を、
>> Nobody knows...she's a beauty と聴いていて、

もっと外に目を向けたら、すごい女の子がいるよ、
って言っているのはわかるのだけど、
なんで彼女は見向きもしてくれないのかというところが、
いまいちわからなかったんですよね。

外にはすごい女の子がいるから見てみなよ、
でも恋したって無駄さと言っているのが、
どこに落とし所をつけたらいいのかわからなかったんですが、

この詞がわかってPV見てると、確かにその意味はわかってきます。
最後に出てくる美女は・・・だったと。
しかも、グロなオチがつくお伽話だったということですね。


派手なコスチュームやかなりアバンギャルドなステージで
知られるバンドとして有名だったとはいえ、
この曲の音的には、かなりかちっとまとまったサウンドと言うか、
デヴィッド・フォスタープロデュースで、
Totoのスティーブ・ルカサーがゲスト参加しているときけば、
納得の華麗で繊細な音をしています。


チューブスは、アリゾナ州フェニックスとスコッツデールの高校に通う、
仲間たちが組んでいた二つのロックバンドが、
60年代末にサンフランシスコで合体して生まれたバンドで、

ボーカルでソングライターのフィー・ウェイビルを中心に、
ジャーニーの初期ドラマーでもある、プレイリー・プリンスなど、
かなり大所帯のバンドで編成されていました。

メジャーデビューする前から、ボーカルのフィー・ウェイビルの、
派手な化粧や、ミラーサングラスや、奇抜なコスチューム、
そしてドラッカーと見間違うような危ないステージが話題を呼び、
ライブではかなりの盛況を博していました。
1973年にA&Mレコードとレコード契約を結んでいます。

その代表的なところで、
1975年のデビューアルバム「チューブス・ファースト(The Tubes)」からの
シングルであるこの曲。



「White Punks On Dope」

「シーズ・ア・ビューティ」で知った人には、
ちょっとびっくりな、全く違う初期の彼らのステージです。

おかげで、この曲の邦題もなぜか「ホワイトパンクス音頭」
とついてしまったのですが(笑)

このファーストアルバムは、アル・クーパーのプロデュースで、
ライブではとても人気が高く、イギリスではレコードもそこそこ売れましたが、
アメリカでのレコードの売り上げはさっぱりでした。

ただ当時、日本でもKISSやアリス・クーパーといったロッカーたちが、
ド派手なメイクやステージで大変な人気を誇っていて、
このチューブスも、コアなファンの間では、
話題のキワモノバンドだったようです。

4枚目のアルバム「リモートコントロール(Remote Control)」では、
プロデューサーにトッド・ラングレンを迎え、
かなり音にもこだわった作品を作って話題となります。

ちょうどこのころ、LAでの彼らのコンサートの前座として、
あのYMOが海外初公演を開いて、盛況を浴び、
その後、チューブスが初来日公演を中野サンプラザで行った時にも、
YMOがゲスト出演しています。
一見全くタイプの違うバンド同士のようですが、
不思議な縁でひかれあってるんでしょうね。

彼らに転機が訪れたのが、1981年。
レコード会社をキャピトルレコードに移籍して、
最初のアルバム「不思議なチューブス(The Completion Backward Of Principle)」で、
プロデューサーにデヴィッド・フォスターを迎え、
Totoのスティーブ・ルカサーや、
シカゴのビル・チャンプリンといったメンバーも参加し、
ステージングはそのままに、
これまでのサウンドを一新したかのような、
如何にもデヴィッド・フォスターというサウンドを作り上げました。

ファーストシングル「もう待てない(Don't Want To Wait Anymore)」は、
如何にもデヴィッド・フォスターという壮大なバラードで、
AORファンからも隠れた名曲として知られる一曲です。
初めて全米トップ40入り(35位)も果たしました。

そして、1983年に発売されたこの曲が収録されたアルバム、
「アウトサイド・インサイド」では、デヴィッド・フォスターファミリーが、
多数参加しています。
Totoからもスティーブ・ルカサー、ボビー・キンボール、デヴィッド・ペイチなど、
シカゴのビル・チャンプリンや、パティ・オースチン、ジェイ・グレイドン、
EW&Fのモーリス・ホワイトなどなどの豪華メンバーで、
かつバンドとしても8人体制での大掛かりな作品となりました。

この曲もフィー・ウェイビルとデヴィッド・フォスター、
スティーブ・ルカサーの共作で、
間奏のギターやアレンジにTotoっぽさが出てるなあという曲で、
彼らにとって、唯一のTop10入りシングルとなりました。

この縁から、翌1984年にフィー・ウェイビルが初のソロアルバム、
「リード・マイ・リップス(Read My Lips)」を、
デヴィッド・フォスタープロデュースで発表しています。

1985年には、4枚目のアルバム以来のトッド・ラングレンプロデュースで、
「ラブ・ボム(Love Bomb)」というアルバムも発表し、
再びアバンギャルド路線かと思わせたのですが、
このタイミングで、フィー・ウェイビルがバンドを脱退し、
実質的解散状態になってしまいます。

この解散時期の間に、フィー・ウェイビルは色々なアーティストの作品に参加し、
中でもリチャード・マークスと深いつながりをもつようになり、
この二人で、当時の人気女性ロックバンドであったヴィクセンの
「エッジ・オブ・ア・ブロークン・ハート(Edge Of A Broken Heart)」を
共作しヒットさせています。

1993年にバンドは再び、フィー・ウェイビルの復帰により再開し、
1996年に10年ぶりに新作アルバムを発表すると、
ライブ活動を中心に現在でも、時にすごいコスチュームで派手なステージを
繰り広げているようです。


80年代前半には、まだまだブログで未紹介のアーティスト、曲も多く、
これから順次、思いついたままに紹介していきたいと思います。

「全米トップ40 The 80's」はラジオ日本で、
土曜の24時(日曜の0時)から3時間の放送。
次回は、1983年年間チャートPart2(50位~1位)です。

最近は、PCからRadiko(radiko.jp)にアクセスすると、
地方でも関東地区のラジオを聴けるようですね。
ラジオ日本が関東以外から聴けるのかどうかは、
ボクは知らないんですが。
(関西からFM YOKOHAMAや千葉のBay FMを聴いてる人を知ってるので)

もし可能ならば、ぜひ聴いてみてください。


Outside Inside/Tubes

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