さて、一昨年のとら年、昨年のウサギ年の初めに、
干支にちなんだ曲をいくつか紹介してきました。

2012年、辰年。
干支で唯一の想像上の動物であるわけですが、

さて、たつ→ドラゴン・・・ときて、ちなんだ曲と言うのを
考えてみたのですが、

邦楽だと、「ドラゴン・ボール」や「ドラゴン・クエスト」の
アニメ、ゲーム系。
あるいは、クレイジー・ケン・バンドの「タイガー&ドラゴン」
なんてところが思いつくし、
アーティスト名でも、Dragon Ashとかいるのでわかりやすいですが、

洋楽となるとこれが・・・

アルバムタイトルについたやつだと、
2000年代に大ヒットした、シルバーの単発で人気のラッパー、
シスコ(SisQo)の大ヒットアルバム
「アンリーシュ・ザ・ドラゴン(Unleash The Dragon)」というのがあって、
アルバムタイトル曲もあるのですが、ヒットしたわけではなく、
「トーン・ソング(Thorn Song)」とか、
「インコンプリート(Imcomplete)」の2曲が大ヒットしてますね。

他にも、きっとアルバムタイトルやアルバム収録曲に、
Dragonのついたものはあるのでしょうが、思いつきませんで、

たった一つ思いついたのが、この曲でした。


ピーター・ポール&マリー「パフ(Puff The Magic Dragon)」


1960年代から活躍する、ピーター、ポール、マリーのフォークトリオ。
フォーク全盛期に多くのヒット曲を残し、
また反戦、平和活動家として多くの足跡を残してきました。

1963年に発表されたアルバム「ムーヴィング(Moving)」に収められたこの曲は、
古い詩をもとに作られた、おとぎの国の巨大竜、パフと、
ジャッキー・ペイパー少年との交流と別れを描いた、
とりわけ童謡として広い世代に親しまれた曲です。


①1966年のテレビショーから。




②年代は不明ですが、かなり後年になってからのものと思われます。
 広い世代の観客とともに合唱するステージ。



☆Peter, Paul & Mary "Puff" from the album "Moving"
 1963年Billboard Hot100 最高位2位


Puff, the magic dragon, lived by the sea
And frolicked in the autumn mist in a land called Honah Lee
Little Jackie Paper loved that rascal Puff
And brought him strings and sealing wax and other fancy stuff, oh

>> 魔法のドラゴン、パフ、海の近くに住んでいた
>> ホナリーって呼ばれた秋の霧のたちこめる島で陽気に暮らしてた
>> 小さなジャッキー・ペイパーはいたずらパフが大好きで
>> 紐やらシーリングワックス(封蝋)やかわいいおもちゃを持って遊びに来てたのさ

Puff, the magic dragon, lived by the sea
And frolicked in the autumn mist in a land called Honah Lee
Puff, the magic dragon, lived by the sea
And frolicked in the autumn mist in a land called Honah Lee

>> 魔法のドラゴン、パフ、海の近くに住んでいた
>> ホナリーって呼ばれた秋の霧のたちこめる島で陽気に暮らしてた
>> 魔法のドラゴン、パフ、海の近くに住んでいた
>> ホナリーって呼ばれた秋の霧のたちこめる島で陽気に暮らしてた

Together they would travel on boat with billowed sail
Jackie kept a lookout perched on Puff's gigantic tail
Noble kings and princes would bow whene'er they came
Pirate ships would lower their flags when Puff roared out his name, oh

>> ある日一緒に大海原にボートを漕いで出かけたのさ
>> ジャッキーはパフの大きなしっぽの上で見張りをしてた
>> 彼らの行くところ、高貴な王様や王子たちはおじぎをして
>> パフが大声で自分の名を叫ぶと海賊船はしり込みして旗を降ろすのさ

Puff, the magic dragon, lived by the sea
And frolicked in the autumn mist in a land called Honah Lee
Puff, the magic dragon, lived by the sea
And frolicked in the autumn mist in a land called Honah Lee

>> 魔法のドラゴン、パフ、海の近くに住んでいた
>> ホナリーって呼ばれた秋の霧のたちこめる島で陽気に暮らしてた
>> 魔法のドラゴン、パフ、海の近くに住んでいた
>> ホナリーって呼ばれた秋の霧のたちこめる島で陽気に暮らしてた

A dragon lives forever, but not so little boys
Painted wings and giants' rings make way for other toys
One grey night it happened, Jackie Paper came no more
And Puff that mighty dragon, he ceased his fearless roar

>> ドラゴンは永遠の命があるけど、少年はずっとは生きられない
>> 色のついた旗や大きなリングはやがて他のおもちゃへと変わっていく
>> ある暗い夜にそれは起こった、ジャッキー・ペイパーはもうやってこなかった
>> そしたらでっかいドラゴンのパフは、大声で叫ぶのをやめてしまった

His head was bent in sorrow, green scales fell like rain
Puff no longer went to play along the cherry lane
Without his lifelong friend, Puff could not be brave
So, Puff that mighty dragon sadly slipped into his cave, oh

>> 彼はがっくりとうなだれて、緑のうろこは雨のようにはがれ落ち
>> パフはあの桜の道へ遊びに行くこともなくなった
>> 長い友達がいなくなっては、パフはもう夕刊ではいられない
>> だから、でっかいドラゴンのパフは、哀しい顔して自分の洞穴に帰ってしまった

*Puff, the magic dragon, lived by the sea
And frolicked in the autumn mist in a land called Honah Lee
Puff, the magic dragon, lived by the sea
And frolicked in the autumn mist in a land called Honah Lee

>> 魔法のドラゴン、パフ、海の近くに住んでいた
>> ホナリーって呼ばれた秋の霧のたちこめる島で陽気に暮らしてた
>> 魔法のドラゴン、パフ、海の近くに住んでいた
>> ホナリーって呼ばれた秋の霧のたちこめる島で陽気に暮らしてた

*repeat


この歌は、もともと1959年に作詞家のレナード・リプトンが、
古いオグデン・ナッシュの詩"Custard The Dragon"にインスパイアされて、
作った詞に、メンバーのピーター・ヤーロウが曲をつけて完成されたものです。

「パフ」はおとぎの国、ホナリーの島に暮らす暴れん坊の陽気なドラゴンで、
息や鳴き声から「パフ」と呼ばれていた。
その「パフ」と仲良しなのが、小さかったジャッキー・ペイパーで、
いろいろなたわいないおもちゃで遊んだり、
時に船に乗って、その大きな体で威嚇して、王様たちや海賊たちをひれ伏させたという
そんなこどもの大好きなお伽話。
でも、パフは不老の竜なのに、少年はいつか大人になって、
パフの元から去って行ったというせつなく寂しい話なのです。

ところが、この曲のヒットした時代背景から、
この曲が反戦歌と捉えられていたり、
あるいはヒッピー文化の中で、ドラッグソングと捉えられて、
シンガポールでは放送禁止になったこともあったそうです。

子供の歌と言うところから、童謡として大ヒットしたこの曲は、
日本でも「おかあさんといっしょ」でよく歌われていて、
60年代から70年代にかけて子供だった人たちには、
特に親しまれている曲です。


1961年にデビューした、ピーター・ヤーロウ、
ノエル・ポール・ストゥーキー、マリー・トラヴァースの
3人組である彼らは、略してP.P.M.として知られ、
ニューヨークのグリニッジ・ビレッジでショーを開き、
多くのフォークソングを歌って、人気を確立していきました。

ファーストアルバム「ピーター・ポール&マリー(Peter, Paul & Mary)」には、
代表的なフォークソングである、「500マイル(500Miles)」、
「花はどこへいった(Where Have All The Flowers Gone?)」などを
収録してロングヒットさせました。

彼らはこの「パフ」の大ヒットを初め、
「天使のハンマー(ハンマーソング)(If I Had A Hammer (Hammer Song)」や、
ボブ・ディランの作品として知られた、
「風に吹かれて(Blowin' In The Wind)」、
全米No.1になった、ジョン・デンバーの作品、
「哀しみのジェットプレイン(Leaving On Let Plane)」
などの大ヒットを発表していきました。

と同時に、アメリカの公民権運動や、反戦平和活動のために尽力し、
それらの集会の場で、彼らは歌い続けていきました。

1970年に一度解散するものの、1978年に反原発運動のために再結成し、
その後もライブ作品を中心に、長く活動してきました。

日本ではこれらのナンバーが、フォークブームとあって、
大変な人気を得たところから、何度も来日公演を行い、
多くの広い世代に親しまれています。

2007年には、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんを支援する曲として、
メンバーのポールが「Song For Megumi」という曲をレコーディングして、
話題となりました。

女性メンバーのマリーは、2009年白血病のため他界。
トリオとしての活動はかなわなくなってしまいましたが、
彼らの足跡は、これからも多くのシンガーとファンたちにひきつがれていくことでしょう。


さて、おまけなのですが、
またもや、最近話題の作品に、この「パフ」がからんでいるのです。


由紀さおりが、アメリカのジャズオーケストラ、
ピンク・マルティーニとの共演で、
ロンドンのロイヤルアルバートホールでのコンサートを大成功させ、

1969年のヒットというコンセプトでレコーディングされた、
「1969」というアルバムが、
アメリカ、ヨーロッパで大きな話題となり、

自らの大ヒット曲である「夜明けのスキャット」をはじめ、
日本の歌謡曲である「ブルーライト・ヨコハマ」や「夕月」、
ラテンの大ヒット「マシュケナダ」や、
フレンチポップスの「さらば夏の日」などを収録したこの作品が、
アメリカのiTunesのダウンロードチャートでNo.1を記録するという、
快挙を達成しましたが、

この「パフ」も、その1曲として歌われているのです。




由紀さんは、童謡歌手としても長くお姉さんの安田祥子さんと、
コンビで活躍していたけれど、
それとはまったく異なった、彼女独特なボーカルの世界で、
この曲が表現されているのにはちょっとびっくりしました。

日本語詞もうまくはまってますね。



さて、伝説の巨大竜と少年の冒険と言う、
同じようなコンセプトで、
童話をファンタジー作品として、
1980年代に大ヒットした映画がありました。

次回は、その映画の主題歌として世界中で大ヒットした曲を
紹介したいと思います。
タイトルにも詞にもアーティスト名にドラゴンはでてきませんが。




ムーヴィング/ピーター、ポール&マリー

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1969/由紀さおり

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