80年代という時代は、音楽の多彩な方向性に加え、
MTVなどの映像メディアによるプロモーションビデオ(PV)も、
技術的や、アイデア面などでも素晴らしいものがいくつも誕生しました。


もちろん、いくらビデオばかりかっこよくても、
音楽にのめりこめないと、その価値は十分ではないと思います。


そんな80年代の作品の中でも、
特にビデオの出来がすばらしく、
かつ、その曲そのものから力をもらえる素晴らしい曲を、
紹介したいと思います。



ティアーズ・フォー・フィアーズ(TFF)「シーズ・オブ・ラブ」


イギリスのバースで結成され、81年にデビューした、
ローランド・オーザバルとカート・スミスを中心としたバンド。
いわゆる「英国襲撃」組の一組でもあります。

彼らが1989年に発売した3枚目のオリジナルアルバム、
「シーズ・オブ・ラブ(The Seeds Of Love)」からの
ファーストシングルで、全米2位まで上昇した、
当時のシングル曲ではかなり長めの、5分30秒を越える
壮大な「ラブ」ソングです。



①1990年のMTVアワードでもいくつかの賞を受賞した名作PV。
 今ではごくあたりまえに使われるようなCGテクニックではあるけれど、
 当時はすごく新鮮に感じ、かなり突拍子もない絵柄や背景も、
 曲の世界観とマッチしていて、本当に素晴らしいビデオです。




②近年のライブステージより。
 意外と変わらないというのか、元々老け顔だったか?
 レコードではシンセキーボードを駆使して作られたサウンドを、
 オーケストラや大コーラス隊をフィーチャーして、
 素晴らしいステージになっています。



☆Tears For Fears "Sowing The Seeds Of Love" from the album "Seeds Of Love"
 1989年Billboard Hot100 最高位2位。


High time we made a stand and shook up the views of the common man
And the lovetrain rides from coast to coast
D.j.s the man we love the most
Could you be, could you be squeaky clean
And smash any hope of democracry ?
As the headline says you're free to choose
There's egg on your face and mud on your shoes
One of these days they're gonna call it the blues

>> 潮時だ、ボクたちは立ちあがり、われら普通の人々の考えに揺さぶりをかけた
>> そしてラブトレインで岸から岸へと渡り歩き
>> ボクらの一番大好きなDJの元へ
>> ねえ、ねえ、そんなにきれいなままでいられるのかい?
>> 民主主義の理想を打ち壊せるのかい?
>> 新聞の見出しじゃ、君には選択の自由があって
>> 卵を顔にぶつけられたり、くつを汚されたり、
>> こんな世の中を彼らはブルースって呼ぶんだろうな

And anything is possible when you're sowing the seeds of love
Anything is possible - sowing the seeds of love

>> そう、何だって可能なんだ、君が愛の種を蒔くのならね
>> 何だって可能さ、愛の種を蒔こうよ

I spy tears in thier eyes
They look to the skies for some kind of divine intervention
Food goes to waste
So nice to eat, so nice to taste
Politician grannie with your high ideals
Have you no idea how the majority feels
So without love and a promise land
We're fools to the rules of a goverment plan
Kick out the style, bring back the jam

>> 彼らの瞳に涙があるのを横目で見ながら
>> 彼らは神の思し召しを待ちながら空を見上げている
>> 食料は無駄にされている
>> いいものばかり、おいしいものばかり食べられている
>> 崇高な理想を掲げる煩型の政治家たち
>> あなたには大多数がどう思ってるかなんてわからないだろう?
>> 愛もなければ、約束事だってありゃしない
>> ボクらは政府の取り決めたルールに振り回されっぱなしさ
>> 形式なんてくそくらえだ、自由を取り戻すんだ

Anything
Sowing the seeds
The birds and the bees
My girlfriend and me in love

>> 何だってさ
>> 種を蒔こうよ
>> 鳥たちもミツバチたちも
>> 彼女も僕だって、愛の中で

Feel the pain
Talk about it
If you're a worried man - then shout about it
Open hearts - feel about it
Open minds - think about it
Everyone - read about it
Everyone - scream about it
Everyone
Everyone - read about it, read about it
Read in the books in the crannies and the nooks there are books to read
Chorus

>> 痛みを感じて
>> そのことを話すんだ
>> もし君に悩みがあるなら、それについて叫べ
>> 心を開いて、それを感じよう
>> 気持ちをゆだねて、そのことを考えよう
>> みんな、その本を読むんだ
>> みんな、それを叫ぶんだ
>> みんな (みんな)
>> みんな、本を読むんだ、本を読むんだ
>> 本を読むんだ片っぱしからそこにある本を読むんだ
>> コーラス!

(Mr. England sowing the seeds of love)

>> (ミスターイングランド、愛の種を蒔こうよ)

Time to eat all your words
Swallow your pride
Open your eyes
Time to eat all your words
Swallow your pride
Open your eyes

>> 君の言いたいことをぐっと我慢する時
>> プライドを抑えて
>> 瞳を開くんだ
>> 君の言いたいことをぐっと我慢する時
>> プライドを抑えて
>> 瞳を開くんだ

High time we made a stand and shook up the views of the common man
And the lovetrain rides from coast to coast
Every minute of every hour - I love a sunflower
And I believe in lovepower, love power, lovepower

>> 潮時だ、ボクたちは立ちあがり、われら普通の人々の考えに揺さぶりをかけた
>> そしてラブトレインで岸から岸へと渡り歩き
>> いつも何時だって、ボクはヒマワリが大好きさ
>> そしてボクは信じているラブパワーを、愛の力、ラブパワーを

Sowing the seeds
An end to need
And the politics of greed
With love

>> 種を蒔こうよ
>> 無駄遣いの生活も
>> 欲まみれの政治も終わりだ
>> 愛の力で


曲そのものが、ビートルズの、
「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」から、
かなりの影響を受けている、サイケデリックな部分と、
組曲を思わせるようなち密な構成で練り上げられていて、
それだけでも相当な聴きごたえであるのだけど、

なんといっても、この曲の詞に見られる、
「自ら愛をもって種を蒔こう」という力強いメッセージと、
ボーカル、コーラスのアンサンブルが絶妙で、
ファースト、セカンドバースから、ブリッジで大きく盛り上がった後の、
サードバースで、ふっと力が抜け、
それまでコーラスに徹していたカート・スミスの静かなボーカルで、
語りかけるようにメッセージが再構築されるあたりは、
ふっと涙さえ浮かんでくるような感覚になります。

以前ブログで紹介したシンプリー・レッドの「スターズ(Stars)」同様、
当時のイギリスのサッチャー首相による経済政策に対する不満、
一部の富裕層にみられるおごり高ぶりと、
その感覚に麻痺してしまっている人たちに対する、
人々へ蜂起を促すメッセージがテーマになっています。
「スターズ」より直接的で、社会主義的なところもあるのかな。

おりしも、バブル崩壊直前であったことを知るのは、
このすぐ後になってしまうのですが。


彼らは、1983年に「チェンジ(The Hurting)」というファーストアルバムで、
イギリスで、シングル「チェンジ(Change)」とともにNo.1となりました。
いわゆる「英国襲撃」の勢いで、アメリカでも発売されましたが、
当時は78位に終わっています。

その後、1985年に発売された名作と言われるセカンドアルバム、
「シャウト(Songs From The Big Chair)」でアメリカでも大ブレイクを果たし、
「ルール・ザ・ワールド(Everybody Wants To Rule The World)」と、
「シャウト(Shout)」の2曲を立て続けに全米No.1にしました。
「マザーズ・トーク(Mother's Talk)」などのシングルヒットも含め、
個性の異なる作品がそろった彼らの代表作といえるアルバムとなりました。
翌、1986年には、唯一の来日公演も行われています。

今回のこの曲は、それから4年後の1989年に発売された、
3枚目のアルバム「シーズ・オブ・ラブ(Seeds Of Love)」に収録されていますが、
前作の成功による新作へのプレッシャーがピークに達していて、
ローランドとカートの不仲も噂される中、
作品もこれまでのアルバムを手掛けてきたプロデューサーとはあわなくなり、
セルフプロデュース形式になっていきます。
バンドも、ほぼ2人のプロジェクト的なものとなってくる中、
アメリカのクラブでピアノを弾きながら歌っていた、女性シンガー、
オリータ・アダムズに心を惹かれ、
アルバム参加を要請することになります。

この曲には入っていませんが、彼女は、アルバム中の美しいデュエットナンバー、
「ウーマン・イン・チェインズ(Woman In Chains)」他でボーカルに参加し、
ピアノもフィーチャーされています。

彼女の存在が、彼らの危機とアルバム製作を救った女神的存在でした。

特に彼女に心酔したローランドが、彼女自身のアルバムの制作を手掛け、
翌年の彼女のソロデビュー作「ゲット・ヒア(Get Here)」の大成功にもつながっています。


そんな成功を収めた彼らでしたが、やはり一度表面化した溝は解消できず、
アルバムのツアー終了後に、カートが脱退。
以後、2001年に再結成するまで、ローランドが中心でTFFを継続していきます。

ともにTFFとカートのソロがそれぞれ何作か発表されたのち、
再結成後の2004年に久々の共同制作のアルバム、
「Everybody's Happy Ending」を発表。
以後、ツアーを中心に活動を続けています。

今年の春には、アジアツアーも行われていたようなのですが、
台湾まで来ていて、なぜか日本には来てくれませんでした。
来てくれていたら、絶対行ったのに。


この曲は夏の曲というわけではないのですが、
曲中に出てくる「ヒマワリ」の種こそが、彼の好きな花。
この曲での音へのこだわりを見てもわかる、
かなり気難しいタイプのローランドですが、
こういった部分に内なる暖かさも見出すことができて、
愛せずにはいられない曲なのです。


そんなローランドは1961年の今日8月22日生まれ。

同じ8月22日生まれのミュージシャンには、
ブルースシンガーのジョン・リー・フッカー、
ロックバンド、リヴィング・カラーのバーノン・リード、
バングルズのデビー・ピーターソン、
バックストリートボーイズのハウイー・D、
女性シンガーソングライターのトーリ・エイモスなど。
日本では一風堂の土屋昌巳さん、
今は亡き岡田有希子さんなど。



そして、お恥ずかしながら、ボクも今日一つ年をとりました。^^



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