今回の記事は、無印良品バイトについて。





私は高校生のころから大のムジラー(無印良品オタクのような人の呼び名)で、お菓子も文房具もスキンケアも無印良品だった。

ファンの人になら伝わると思うんだれど、自然、素材、無垢、厳選、安心、安全、シンプル、ミニマリスト、無駄がない、飽きない、身体によい、などこれら全てが見事に当てはまると思っている。「無印の商品だったらとりあえず安心」みたいな根拠のない自信と、底も大きさも見えない愛があった。ラブ。

大学生になったら絶対バイトする!と心に決めていた。





最寄りの無印良品は神奈川県内の某イオンにある店舗で、小さめだった。本当はこの店舗希望だったけれど学生のアルバイト募集枠はなかったから、同じ沿線の別店舗で探した。

そして面接後を経て(なにかの間違いで採用をいただき)働くことになったのが、都内の高級住宅街にある路面店。フロア全てが無印良品、ガラス張りの綺麗なお店だった。いい立地なだけにお金持ちやマダム、芸能人やモデルなどもよく来た。





どのスタッフがどの売り場でも大丈夫なように最初は全てのフロアで研修をし、そのあと自分の担当フロアと売り場の「デパ」と「ライン」というものも決まる。

最初無印良品の研修では、店舗にある「ムジグラム」と呼ばれるマニュアル本を使う。これが確か3,000ページもあった。しっかりした企業なだけあってさすがだ...!と、ただただ驚いた記憶があある。分厚いにも程があるよね。

企業理念からおたたみ(衣料品をたたむ呼び名)、サッカー(商品をお包みする呼び名)、三角ゾーン(カゴと小銭を置くケースでできるゾーンの特別な呼び名)とか細かい所まで決まりがあったな、懐かしい。

シフトが被っていると、店長や各フロアのエースのような存在の人がマンツーマンで教えてくれた。3,000ページのマニュアルがあるだけに、メモを取って覚えることは山ほどあった。

同じフロアに面接を担当した店長がよくいたこともあり、緊張はしたけれど心強かった思い出がある。

その店長もおそらく25歳くらいでかなり若くて(しかもかっこよくて)新卒で良品計画に入社し、まだ3.4年目とのこと。余談のここだけの話だけれど、私の中では「速水もこみちを超塩顔男子にした25歳の店長」というイメージだった。





研修が終わり、私は「ヘルス&ビューティー」と呼ばれる売り場担当となった。ここではスキンケア用品やコスメ用品、アロマを取り扱っており、とにかく女子が好きそうな感じで、いつもいい香りがするフロアである。

担当フロアが決まり喜んでいたのもほんの2日、同じへルビフロア担当のパートさん(28歳くらいの女性)と私との人間関係に少しずつ問題が発生した。

そのパート(イニシャルM)さんはベリーショートで目ヂカラが強く、アイラインも濃いめのクールな人。口調がきつくて、「〜こうだと思いません?」「〜じゃん」「まだ覚えてないの?」「(ため息をついて嫌そうな顔で)だからさあ〜」の物言い。この人には教えてもらいたくないと思っていた。でも勤務年数も長くて、フロアのエースだった。





とにかく声を張って笑顔で接客をする

お客さま「対応」ではなく無印では「応対」と呼ぶのが鉄則

レジでお金を「お預かりします」か「頂きます」なのかを使い分ける

スタッフ全員が片耳にインカムを付けているから、短文で分かりやすく、そして早く頭で考えながらみんなに伝える

ムジパスポートのスキャン、駐車券、クレジット、その他のポイントカード全てに気を配って確認をし、会計をする

私のミスはみんなのミス、誰かのミスも私のミス、と自然と負荷がかかるし、いつ行われるのかわからない覆面調査が怖い

10%オフの『無印良品週間』ではレジを5台開けても50人くらいのお客様の行列で、急ぐ、丁寧に、ミスをしない、を全て同時に行う





一度に考えることが多いなか私の発達障害のような症状が仕事中次々とあらわれ、覚えが悪くとろかったけれど、できなくてもまたやろうともがいた。何度も涙をこらえながら、私が普段店舗でみていた「無印良品の店員さん」になろうと頑張った。

それでもそのMさんの言い方はなにも変わらず、ミスをわざと大きい声で注意したり、スタッフルームの隅に私を呼び出しガミガミ怒ったり。周りのスタッフさんも嫌そうな顔をしているのが目に見え、伝わっていた。苦しかった。

店長に「他のフロアに変えたいです」と伝えるも「人数の関係で」と断られ、「僕も正直Mさんの言い方はきついと思います」と淡々と同情するように付け加えて話してくれた。

無印良品が大好きだったからこそ、癖のあるひとりの存在が大きくてこわくて、変えることもどうすることもできず、半年耐えて、退職した。





当時の店舗が最近あたらしく始めたスタッフブログの写真のセンターがMさんなのはなぜだろう。

私が辞めたあと「みんな仲良しです!」と店舗採用ページに書かれていたのも疑問だった。みんな仲良しならなぜ私は辞めたんだろう。私が辞めたからみんな仲良しになったのか、といまは捉えてる。





渋谷に向かう某路線のホームで電車を待っているとその店舗が見え、ガラス張りの店内では唯一の同期がまだ働いている。

さようなら、私のアルバイト時代