12月29日と言えば、BUCK-TICKにとっても

 

ファンにとってもとても大切な日。

 

年内最後に、BUCK-TICKに会えるのだから。

 

 

これを見ずに年が越せるか!って

 

いつも私たちを笑顔にさせるパフォーマンスを

 

見せてくれる彼らのライブ後には

 

「今年よく頑張ったよね。また来年も

 

頑張れる!」とパワーをもらうものだった。

 

 

そう、去年までは。

 

 

これから36周年が始まる、という

 

タイミングの10月19日に、愛すべきボーカル、

 

櫻井敦司が天に召され、その「大切な日」の

 

存在がかき消された…

 

 

今井さん始め、4人になったBUCK-TICKは、

 

すぐに「武道館ライブをする」と

 

発表してくれたが、楽しみよりも

 

戸惑いしかなかった…

 

 

え?

 

やるの?

 

どうやって?

 

何を?…

 

 

その疑問は、当日になっても私の胸に

 

引っかかっていた。

 

怖いって、思った。

 

 

怖いと思うのは二回目だ。

 

一度目は、アッちゃんが腸管出血で

 

しばらく休養してからの武道館の日。

 

 

むしろ、あの時みたいに

 

何もなかったように出てきてくれないかな、

 

と無理なことをずっと思っている私がいた。

 

 

その怖さゆえか、当日は早く会場入り

 

する気にもならず、新幹線も3時半からの便にし、

 

ホテルにチェックインしたのは開演30分前の6時だった。

 

(さすがにこれはいくら行くのが怖くても

 

焦ったので、次はもうやらないようにしようと

 

誓いました笑笑い泣き

 

 

友達に会う暇もなかったので、

 

そのまま会場入りし、座席につく。

 

今回はスタンド1階(武道館のスタンド1階は

 

実質2階席)の最前列。全体を見渡すのに

 

とてもいい席だ。

 

隣の人と挨拶をしがてら、話をしたら

 

彼女のアッちゃんへの想いが

 

わーっとあふれるように出てきて

 

その話を聞く時間になった。

 

そう、ここにいるみんな、そうなんだよね

 

って思った。

 

アッちゃんがいなくなって辛い、悲しい、苦しい…

 

 

そんな思いを自分が望むようには

 

話せず、共感もしてもらえないから、

 

こういうファンが一堂に会する場は

 

とてもとても、大事なんだよね…

 

 

ふっと客電が落ち、わっと会場から

 

声が上がった。B-Tのテーマが流れ、

 

35年を振り返る映像がどんどんと

 

目の前にやってくる。どこにもアッちゃんはいた。

 

圧倒的な存在感で、5人の真ん中で。

 

 

その映像を見たときに、

 

涙が止まらなくなった。

 

 

これからライブ?

 

アッちゃんはいないのに??

 

どうやってやるの?

 

 

悲しみと混乱と恐怖で

 

いっぱになるなか、メンバーが次々と

 

ステージに出てきた。

 

いつものように手を振ってくれるが

 

顔つきは全く違う。目は力がないし、

 

顔もこわばっている。

 

 

そうなんだね、みんなも緊張しているし

 

怖いんだねって、彼らを見ながら

 

改めて気づかされた。

 

 

最初の曲は「疾風のブレードランナー」。

 

zero...の最後に、スクリーンに

 

アッちゃんのシルエットが映し出されて

 

その時は悲鳴ともなんとも形容できない声で

 

武道館は溢れた…

 

 

ライブは、今までの曲をアッちゃんの声をのせて

 

演奏する、というやり方だった。

 

正直に言うと、アッちゃんの存在の大きさを

 

痛感させられた。彼は、彼自身の存在感も大きかったが、

 

他の4人も安心して自分を出せたり、

 

彼らを引き立たせたりする、絶妙な距離感で

 

BUCK-TICKというステージを

 

創り上げてきていたんだな…と思った。

 

 

何か足りない。

 

 

そんな風にライブ中に感じてしまって

 

ちょっと冷めている私もいた。

 

そしてやっぱり、アッちゃんにいてほしかったって

 

この4人のステージを見ても

 

変わらず願っているのにも気づいた。

 

 

驚かされたのは、アンコールで

 

彼らが出てきたとき。

 

いつものように歌をやるのかな、と思ったら

 

ユータがマイクを持って、話し始めた。

 

最初は泣くのをこらえていたが、

 

やがて嗚咽のように泣きながら

 

言葉を詰まらせながら話す姿を見て

 

彼のアッちゃんに対する想いの大きさを知った。

 

ユータは特に、BUCK-TICKメンバーで

 

ありながら、まるで自身がBUCK-TICKの

 

大ファンみたいな人なので…身近にいたからこそ、

 

その大きさを感じているのだろう。

 

そのユータの、泣きながら話す姿に

 

ヒデも涙を誘われていたようだった。

 

うつむいたり、上を見上げたり、

 

涙がこぼれないよう、必死なようだった。

 

 

続いてマイクを持ったアニイは、

 

「不良だった弟がこんなに立派なことを

 

いうようになって」と場内を和ませる。

 

アニイは一時期、BUCK-TICKやめようかな、

 

と思ったこともあると自身の本の中で

 

告白していた。そんなアニイが

 

「続けていきたいと思う」と言ってくれたのには、

 

私はなんだかホッとしたし、「今井と星野の

 

頭の中にはまだ何千という曲があるから」と

 

メンバーを誇らしげに語る彼は、相変わらず素敵だ。

 

 

ヒデは言葉少なながら

 

「今日不安の中、来てくれて

 

ありがとう。不安だったよね?

 

みんな、不安でした」と本音をさらしてくれた。

 

そう、不安だった。その一言を聞いて

 

本当にメンバー全員が、まずは不安だったんだな、

 

と今更ながらに感じた。

 

 

でも、彼らはこうして、不安だけど

 

私たちの前に立ってくれた。

 

アッちゃんがいない穴の大きさなんて

 

私たちより良くわかってるのに、

 

来てくれた私たちの想いになんとか

 

応えようとしてくれてる…

 

その覚悟って、並大抵のことじゃない。

 

何度みんなで話し合ったって、

 

BUCK-TICK続けようって決めたって、

 

1回ライブやってみたからって

 

全て丸く収まるわけじゃないんだから。

 

 

むしろ、この武道館は、好奇心で

 

来ている人たちも沢山いただろう。

 

これからどうなるの?

 

メンバー一人失ったBUCK-TICKって

 

バンド、それでも武道館やるらしいよ!って聞いて

 

へえー、そりゃ面白そう、今まで見たことないけど

 

チケット取っていってみようかな、という

 

人も実際いただろう。

 

 

そして、今井さんがマイクを持った。

 

アッちゃんの側で、アッちゃん以上にポーカーフェイスで

 

ギターを弾く、というのが彼のキャラなんだけど

 

この日は本当に、饒舌だった。特に

 

「あっちゃんは死んだけど、別にそれは

 

悪いことじゃありません。当たり前のことです。

 

だから、悲しいけど、泣いてもいいけど、

 

号泣してもいいけど、苦しまないでください。

 

死んだことより、いなくなったことより、

 

生きていたということ、存在していたと

 

いうことを大事にしてください。」という言葉は

 

清々しいほど心にしみわたった。言葉を大切にしている

 

今井さんだからこそ、アッちゃんへの想いも含め、

 

こんなことを話せたのだろう。

 

 

それに続いて、来年新曲を作るし、

 

アルバムも作る、という言葉には場内がどよめいた。

 

アッちゃんはいつでも側にいるから、

 

これからもこの5人でPARADEを続けていく、

 

例え最後の一人が自分になっても

 

続けていく、とゆっくりと、落ち着いて

 

話をしてくれた。

 

 

もう、叶わないな、と思った。

 

 

彼らにとってBUCK-TICKというのは

 

ただの仕事としての形じゃないんだ。

 

この5人じゃなきゃ

 

絶対成り立たないんだっていうことなんだよね。

 

だからたとえ、誰かが亡くなっても

 

本当にそれはただの自然現象で。

 

形は失われても、ずっとそばにいてくれるだろう

 

その彼の光とともに、自分たちの

 

進みたい方へと進んでいく。

 

そんな自分たちの船のようなものなのだ、

 

と今井さんの言葉からそんな思いが伝わってきた。

 

 

さっき私はライブ中、何かが足りない、

 

と思っていた。なんなら、4人でやるの、

 

痛々しくて見ていられない、と思ったときもあった。

 

 

きっとこんな感覚って普通で、世間では面白おかしく

 

「櫻井敦司が抜けたあとのBUCK-TICKなんて」

 

「4人で続けるなんて、いつまでしがみついてんの?」

 

という人も沢山いるだろう。

 

「見ていられないからもうファンやめる」人だって

 

出る。もちろんそんな意見もあるだろう。

 

 

…でも、きっと今井さんの中では

 

どれも想定内なんだ。

 

彼の落ち着いた声を聞いて、そう思った。

 

 

例え「5人のBUCK-TICKじゃなきゃ見てられない」

 

と言われたり「痛々しいから辞めればいいのに」

 

「過去にすがって、みっともない」

 

と言われたとしても、そんなことは

 

微塵も関係ないんだろう。

 

「俺らはずっと5人だし。やりたいからやってんだ。」

 

って思いながら、ただ、BUCK-TICKを

 

続けていくんだろう…

 

 

そして今日という日を、その覚悟を

 

伝える日にもしたかったんだろう。

 

だから、今井さんは最後にこう言った。

 

「12月29日は、BUCK-TICKにとってハレの日です。

 

乾杯をする日です。」

 

と言ってから「乾杯しようか」と私たちに呼びかけ、

 

手でグラスを持っているように形作って掲げ、

 

武道館のみんなで「乾杯!」とやった。

 

ありがとう、と言ってから

 

「みんなも帰りに乾杯して、BUCK-TICKの話、

 

アッちゃんの話をしてください」と

 

締めくくった。胸がいっぱいになった。

 

  

その後、LOVE MEで感動の光景になるはずが、

 

アニイがまさかの違う曲をたたき始め、

 

え?というみんなの雰囲気に気づいて、

 

ガハハハッ!と笑って曲を始めたはいいものの、

 

アッちゃんの映像とかみ合わなくなる、演奏も

 

合わなくなる、え、これどうしよう?

 

続けるの??となりながら

 

演奏を続ける、という全然泣けないグダグダな事態に笑😂

 

さすがにここまでのトラブルは見たことなかったから、

 

こんなことあるんだ!ってびっくりした。

 

でもその分、武道館に来ていた私たちが

 

一生懸命歌って、彼らを助けようとした、という

 

忘れられない出来事になった。

 

 

私は、あれはアッちゃんがイタズラしたんだと

 

信じてやみません笑

 

「ほら、みんな、僕のこといろいろ言う前に、

 

ライブに集中してよね」って笑

 

  

アッちゃんがもういない現実を

 

突きつけられた悲しいライブではあったけど、

 

メンバーのBUCK-TICKを愛する想いと

 

これからの覚悟を直接聞けた、

 

本当に貴重な日でもあった。

 

怖かったけど、来てよかった。

 

 

そう、怖い、で思い出した。

 

何か初めてのことをするときは本当に怖いよね。

 

でも、「その怖さの向こうには、

 

成功しかないんだよ」と、私の

 

スピリチュアルコーチに

 

教えてもらったことがあった。

 

 

彼らはきっとそれなんだ、と思った。

 

 

そして、たとえ傍から見たら

 

痛々しくても、みっともなくても、

 

BUCK-TICKを続けていくって決めた彼らの

 

まっすぐな姿を見たとき、

 

だから私はこの人たちが大好きなんだ、と思った。

 

 

どうかこれからも、みんなが

 

やりたいことをどんどんやっていってくださいね。

 

私もBUCK-TICKと「共に青い春を駆け抜け」ている、

 

途中なんですから、ね。

 

 

今日は1曲目が、全てを物語っていた美しいライブでした。

 

本当にありがとうございました。