むかし、一人の旅人が、科野しなのの国に旅して、野路のみちを踏みたがへ、犀川さいがはべりへ出ました。
むかうへ渡りたいと思ひましたが、あたりに橋もなし、渡も見えず、困つてをりますと、「もうし、旅のお人。
」
といふ声がします。
見ると、いつどこからとも知らず、一人のうつくしい顔した子どもが舟をこぎよせてゐるのでした。
「渡しのコン助すけといふものだが渡しの御用はないかな。
」
といひますので、「御用は大有りだ。
早くわたしてくれ。
」
と旅人は舟にとび乗りますと、子どもは艪ろをたくみにあやつつてむかう岸へつきました。
舟をおりようとして、旅人がひよいと見ますと、へさきに立つ…
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