『明日…うれしいうれしいうれしい
アツくんに逢えるっ
いきなり飛びついちゃってもいい
おやすみなさぁい』
四ヶ月ぶりだった。たった四ヶ月で、なにも変わるはずがないと思いながら、漠然とした不安が募っていた。明日逢ったら、マミが遠くへ行ってしまいそうな。
“そんなはずはないか・・・。”
最近のマミからのメールは、久しぶりのデートをとても楽しみにしている気持ちが伝わってくる。3年前に初めて会った時もこんな感じだった。会うことを決めてから、一ヶ月くらいの間は、お互いにうれしくて、そのことばかりをメールで話していた。その日がとても待ち遠しく、でも会うまでのわくわくした気持ちを楽しむような。
退院祝いも買ってある。三年間の間にいろいろなプレゼントを交換した。毎回、マミに何を送ろうか悩み、一番最初に考え、そして今まで選ばなかった…指輪。
逢えなかった四ヶ月の間、マミのことをいろいろ考えた。そして、本当に大切な存在であることを改めて知った。その気持ちを伝えるために、指輪を贈ろうと決めた。今までにした約束を、これから先にひとつひとつ果たしていくための証として、そして将来の大きな約束のために。
一番大切な人に、いつも自分の存在を感じていてもらいたい、それが指輪の持つ意味なのだと思った。
“そうだよな・・・。だからかもな…。”
ふと思った。結婚指輪は3日で外してしまった。もともとアクセサリーのようなものは身につけたことがない淳史にとって指輪をするというのは、照れくさくもあり、邪魔なものだった。
「指輪、してなくていい?」と聞いたときに、妻は「別にいいよ」とさらっと答えた。
指輪の持つ意味なんて考えてもいなかった。単に結婚式の小道具のようなものだとしか思っていなかった。そんな形で始まった結婚生活がうまくいくはずはないよな。そう思った。
『明日に備えて、早く寝ようと思うんだけど…
なんか緊張して眠れないよぉドキドキしちゃってるよ
どうしよう
明日、寝坊しちゃったら…なんてね
東京駅で待ってるから、新幹線乗ったらメールちょうだいね…おやすみ』