仕事が終わって、スターバックスに入り一息つく。携帯を開くと待ち受けの碧い空がまぶしかった。
『今日はちょっとバタバタしてたけど、やっと落ち着いたよアツくんはお仕事忙しいの?
ちょっと休憩したら、買い物に行って、夕食作ろうかな
アツくん…愛してるよぉ』
“夕食かぁ…好きだっていってたからな。”
「お料理作るの好きなんだ。得意かどうかは別だけど。」と言って笑っていた顔がふと浮かんだ。餃子はみんなにほめられるって言ってたよな。餃子は店で食べるものだと思っていたから手作りできるなんてと驚きながら聞いていたことを思い出した。
仕事が忙しく、食生活が不規則なのを心配して「私が作ってあげたい」といつも言っている。一緒に暮らし始めたら、必ず夕食はマミが作った物を食べること、なんていう約束をさせられたこともあった。
“約束…たまってるんだよな。”
マミとの間にした約束はたくさんあった。鳴子温泉の紅葉を見に行こう、一緒に花火を見たいな、なんていう約束。一緒にスキーに行く約束もあった。「私は滑れないから、アツくんを見てる。」なんて言っていた。
遠距離なのと、忙しい仕事に追われて、なかなか思うようにはいかないけれど、焦る必要はないと感じていた。
“人生長いし…。”
最大の約束は、仕事を定年で退職して、武君が成人したら、海外で暮らそうという話だった。本気でどこにするか話しあったこともある。今の時点での最大の候補地はスペイン南部のコスタデルソルになっている。ここだけは2人の意見が一致した場所だった。
『夕食…なに作ったの?仕事終わったばかりで空腹のボクにはそれが一番興味があるっ
ウソだよっ
やっぱり一番興味があるのはマミだよ
マミを食べたいかも
ところで…次のデートはどうしようか?
ちょっと仕事が立て込みそうなんだけど、誕生日は何があっても休むから、やっぱりその日かな
ゴメンね』