隣のベッドでは旦那が寝息を立てている。お姉の携帯を持って、静かに寝室を出た。

リビングの椅子に座り、携帯を開く。

一枚の写真を開いた。
真っ青な空に小さな白い雲がいくつか浮かんでいる写真。それ以外は特になにも写ってないように見える。
しかし目をこらすと、画面の下にうっすらと靄のようなものが見てとれる

“お姉が、空に上っていく…煙。”

空の色は、深く、そして澄んでいる。透き通っているようだか、中には透明な芯があるような色だった。ただの青ではなく、透明な青いガラス石のような。そう、碧と呼べるような色だった。

“この写真を見ても…。”
そう、この写真を見てもアツくんは何の写真かわからないだろう。「きれいな空だね音符」なんていうメールが想像できる。

でも、この写真を送ろうと決めていた。
そして、それが、お姉の代わりをする最後。明日からは、お姉の代わりじゃなく、自分の気持ちをメールしよう。
もちろん聖美だと名乗ることはできないけれど。

あと二週間だけ、アツくんの誕生日までのあと二週間だけは。

“お姉、許してくれる?”

『返信遅くなってごめんネしょぼん
昼間のメール…びっくりさせちゃったかなにひひアツくんに急にすご~く逢いたくなっちゃってドキドキでも…気持ち伝えられてよかったよニコニコ
アツくんからの返信もスゴくうれしかったラブラブ

写真はね、いまの携帯の待ち受けにしてるんだカメラ
アツくんもお揃いにしてくれる!?
おやすみなさい…』

送信ボタンを押したあと、送った写真を待ち受け画像に設定した。