(NIKKEI NET記事より)
日本人にとって「最大の国民病」とされるがんへの意識が変わりつつある。治療技術の進展で生存率が向上、がんは必ずしも不治の病ではなくなってきた。きわめて初期のがんなら、悪化させずに“共存”できるとみる専門医もいる。
発見率3%に
「がん発見率が実に高い。ミステリアス(不思議)だ」。国立がんセンターの垣添忠生総長は2月に始めた最先端技術による検診結果に驚きを隠さない。この検診によるがん発見率は3%。市町村による通常のがん検診では平均0.1%にとどまるのに比べ、異様に高いからだ。
検診は新設した「がん予防・検診研究センター」で実施。陽電子放射断層撮影装置(PET)やコンピューター断層撮影装置(CT)、内視鏡などを駆使し全身をくまなく調べる。
4月までの3カ月間にがんの症状のない1080人が受診。このうち胃がん(9人)、乳がん(7人)、大腸・肺がん(各5人)など32人(2.96%)でがんが見つかった。
がんは遺伝子の異常で起きる。ウイルスやたばこ、紫外線や化学物質などで遺伝子が傷つくと、本来は規則正しく分裂・増殖するはずの細胞が制御できなくなり、増え続ける。
検診技術の進展でがんかどうか判別しづらい1センチ以下の腫瘍(しゅよう)まで見つかるようになってきた。
治療の代償
微小ながんが見つかるようになると、新たな課題も出てくる。40歳以上の女性ではマンモグラフィーと呼ぶX線装置の採用を決めた。母乳を運ぶ乳管内の石灰化をとらえがんを発見するが、悪性度の低い「非浸潤がん」がたくさん見つかることになるという。
「非浸潤がんは放っておいても死なない。(転移の可能性がある)浸潤がんになるのかどうかもわかっていない」と話す。両者を区別せずに乳房切除に踏み切ると、患者は大きな肉体的・精神的負担を負うことになる。
進行がんでも共存しながら延命できないか――。従来の抗がん剤治療の発想を180度転換した新治療法も全国規模の臨床試験が昨年始まった。がんを縮小させるのではなく、進行を食い止める「休眠療法」だ。
抗がん剤はがん細胞と通常細胞を見境なく攻撃するため、激しい嘔吐(おうと)や下痢、脱毛などの副作用がある。苦しさに耐えきれず治療を断念せざるをえない場合も少なくない。
そこで休眠療法では投与量を患者ごとに変え、継続投与を最優先しながら少ない副作用で済むよう「適量」を決める。金沢大学がん研究所の高橋豊助教授が考案、これまで胃がん、大腸がんなど約300人の患者で治療し、延命効果を確かめた。「これからはがんといかに共存するかという視点も大切になる」(高橋助教授)
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