『健康経営』とは、企業の福利厚生を手厚くすることと思われている方も多いのではないでしょうか。たしかに、福利厚生の目的には、従業員の経済的保障を手厚くすることによる勤労意欲や能率の向上、離職率の低下など、健康経営の目的に通じる部分もあります。ただ、福利厚生を手厚くできるのは、比較的財政に余裕がある企業に限られ、経費の削減のため、福利厚生の縮小や、外部委託に切り替える企業も増えています。

 では、なぜ健康経営を推進する企業が増えているのか。今回はその背景とメリットについて考えてみたいと思います。

●健康経営は健康への先行投資

経済産業省からは、『健康経営』とは、従業員の健康管理を行うことで従業員の活力や生産性の向上など組織の活性化を促し、結果的に業績向上や株価向上が期待される『健康への投資』であると発信されています。

これまでの福利厚生では「コスト」と捉えられていた経費が、健康経営では「投資」と位置付けられ、投資対効果の「リターン」が求められます。そのため、従業員の健康課題を抽出し、課題解決のため計画を立て、施策を実施し、それに対する評価を行います。また、取り組みの実績を社内のみならず社外にも開示することで、社会や投資家からも評価され、企業イメージの向上にもつながります。ですが、企業が健康経営を推進する理由はそれだけでなく、日本社会が抱える課題と関連した事情があるのです。

●健康経営の目的は人材の確保

日本は、少子・超高齢社会による若い世代の人口減少で、医療や介護、年金など社会保障の継続に不安を感じる人も少なくありません。実際に日本の将来推計人口は2015年からの50年間で約3,900万人の減少が予測されています。また、労働人口とされる15~64歳の割合は2015年の60.8%から、2065年には51.4%と10%近く減少する予測です。
労働人口の減少は大企業以上に中小企業にとって、事業存続に大きく影響することが考えられます。新たな人材を確保するのが難しくなる中、病気やケガでの離職を防ぎ、出産後の女性や、定年引上げによる高齢者の再雇用など、既存の従業員に長く働いてもらうことこそが、人材不足を補う対策となります。
企業にとって健康経営の目的は、業績の向上以上に優秀な人材の確保にあるのかもしれません。

 ●健康経営推進をWin-Winに

こうして、業績や株価の向上、企業イメージの向上、人材不足の改善を目指して企業は健康投資を行い、健康経営推進を戦略的に実践しています。健康で長く働き続けられる職場環境の整備は、企業と従業員双方にとってWin-Winなことです。ただ、いくら企業が健康づくりに力を入れても、従業員の協力がなくてはWin-Winの理想に近づくことは難しいです。ぜひ、社内の健康づくり施策には積極的に参加し、Win-Winをめざしましょう。