こんにちは!からだプラン代表医師の橋本です。数年前は訪問診療で、よく外科的な創傷治療を行っていました。現在は総合診療医として働いています。

先日、「登山に関する医学的な注意点」という講演で、けがをした時の治療について話をしたところ、次のようにとてもびっくりされました。

「え、怪我して傷が出来たら消毒じゃないんですか!?」

そこで、これはきちんとコラムに書かなければ!と思い、分かりやすいようにコラムを書きました。けがをした時のためにも、医学を楽しむためにも、是非ご一読をと思います。

 

☆まずは皮膚のお話し

まずは、皮膚とはそもそも何者なのか、というお話をしたいと思います。皮膚を見たり、つまんだりしながら読んでくださいね。

皮膚は、意外と硬いものです。それは、人間の身体の中を守るものだからです。もし皮膚がボロボロで、ばい菌が入り放題になってしまうと、人間は餌のようなもので、ドンドンばい菌が入ってきてしまいます。

また、皮膚は沢山の「層」から作られています。表面から「表皮、真皮、皮下組織」となっています。これからも、外敵から身を守る「バリアー」になっている事が分かります。皮膚は人間を守ってくれています。

 

☆皮膚には沢山の菌がいる

もう一つ前提として、皮膚には沢山の菌がいます。これは、当たり前にいるもので、何かしらの利益を与えてくれていたりするので、共生と言ったりします。

気持ち悪いと考える人もいるかもしれませんが、口の中にも腸の中にも沢山の菌がいます。同様に、皮膚の上にも菌がいるだけの話です。彼らのおかげで、人は生きる事が出来るのです。

ここまでをまとめると、次のような図になります。

皮膚常在菌+表皮+真皮+皮下組織+人間の身体の中 の図

そして、皮膚に傷がつくと、ばい菌が入ってきます。ばい菌にとって、人間は栄養の塊なので、大喜びです。そこで、「それなら消毒でばい菌を殺せばいいではないか」という発想が出てきます。これが大きな間違いなのです。

 

☆消毒でばい菌を殺せる?

皮膚に傷が出来たら、消毒でばい菌をやっつける事が出来れば、化膿しなくて済むのではないか、と考える人が多いと思います。かく言う私も、医学生の時はそう思っていました。

しかし、皮膚には尋常ではない数の菌がいます。消毒したところで、完全に殺しきる事は出来ませんし、すぐに元に戻ってしまいます。また、一時的に菌を減らすことが出来たとしても、傷の治りは早まるどころか遅くなってしまうのです。それはなぜでしょうか。

答えは、「人間の細胞も生き物なので、消毒で殺されてしまうから」です。とてもシンプルだと思いませんか?ばい菌も人間の細胞も生き物なので、消毒でまとめてやられてしまう、という事です。さらに言えば、ばい菌は人間の細胞よりも強いです。「バイオフィルム」なんてものを作って、自分たちのことを守ったり(朝起きた時の歯についたヌメヌメ)、色々な防御方法を持っています。ですので、消毒して痛いのは人間の細胞です。治りが遅くなってしまうのです。

 

☆良くある質問タイム

ですが、本当に消毒に意味は無いのでしょうか…?

はい、ありません。菌を殺して治りが早くなったという、医学的エビデンスが無いのです。

では、もっと強い消毒なら…?

もっと人間の細胞が死んでしまいます。治りが悪くなります。

採血の時に消毒してるじゃん…?

慣習的にやっているだけです。患者さんが「消毒もしないで採血された!」って言わなくなれば、誰もやりません(・ω・)

 

☆消毒をしないから化膿しないのではありません

消毒をしないから化膿してしまうのではありません。嫌でも傷から菌は入ってしまいます。しかし、すぐに化膿したりはしません。化膿するのは、そこに「菌が守られたり、増える環境が整った場合」なんです。

例えば、木の破片が分かりやすいと思います。傷口から菌が入ると、人間の中の白血球が菌を食べに行きます。しかし、白血球にも大きさがあるので、もぐりこめない場所もあるのです。木の破片の隙間です。そこで菌が増殖してしまうと、化膿してしまうのです。

それでは、治療はどうすればいいでしょうか。そうですね、それらの隠れ家を取ってしまう事です。それを、医学的に「感染源の除去」と言います。感染源(木片)があれば取り除けばいいのです。取り除くためには、まずは水で洗い流すことです。とにかく、水で洗い流してあげてください。

難しくなってきてしまったので、すごく簡単に、格好良くまとめたいと思います。結論として、「けがをしたら、消毒液を使わず、良く洗う(感染源の除去)」というのを覚えておいてください。

 

☆今回のまとめ

いかがでしたでしょうか。からだプランでは、このような健康コラムで知識を、プラン(体験)で実際に身体を動かして、女性が理想の身体を目指すために必要なホームページを作っています。是非一度ご覧くださいませ。頑張って作っているので、きっと楽しいと思います(*´▽`*)

 

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以上、からだプラン代表医師の橋本でした。

 

※参考文献

創傷治療の常識非常識{消毒とガーゼ}撲滅宣言(三輪出版)