久しぶりの遠出で、かつ、お仕事だったので、余裕を持って出かけるべく、玄関に行きました。
「あ!」
つえを持っていないことに気がついたのです。
すっかり、杖の存在を忘れていました。
というのも、もう、家の中では、杖なしで過ごしていたからです。
杖は、自分にとっての重要性が、低くなっていたのですね。
でも、片道2時間かかるところへ行くには、やはり、杖が必要でしょう。
いつもよりも、荷物が多いからです。
やはり、主治医の先生がおっしゃることは、正しかったのです。
「杖は自然に、はずれます。」
「でも、外出時には、周囲の注意を喚起するために、3〜4ヶ月は、杖を持って出てください。」
道中は、重い荷物とのバランスをとるために、杖をついて行きました。
家の階段の上り下りは慣れていますが、外の階段は、幅も高さも異なるので、用心のために、慎重を期して、杖を使いました。
母が貸してくれた帽子の色と、杖の色が同じなので、スタイリストの先生にも、「おしゃれですね」と言われました。
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さて、特別講義の会場に到着すると、ちょうど休憩時間で、授業を終えたと思しき外国人の先生が後片付けをされていました。
その時、いきなり、笑い声が上がったので、振り返って見ると、天吊りのスクリーンが上がってしまって、それを引き下ろすのに、どうしようかと、外国人の若い先生が困っておられる図だったのです。
私は、即、杖を取り、外国人の先生に手渡しました。
彼は、杖の柄をスクリーンの先にあるフックにかけようとトライされました。
何回かのトライの後、うまく引っかかって、無事、スクリーンは引き下ろされました。
まさか、杖がこのように役に立つとは、夢にも思いませんでした。
杖を持ってきて、本当に良かった、と思った瞬間でした。
外国人の先生は、満足そうに、杖を返して下さいました。
(次は、あなたの番ですよ!)
つえを受け取る際、授業のバトンタッチのように感じたのでした。
