さて、今回は、前回の続き「共有の内部関係」を見終えましょうね。
“共有?二股でしょ?ぜったいダメでしょ”
(麗奈ママの秘蔵っ子、名前はまだない)
具体的な事例でイメージづくりをしましょう。
事例:Qちゃんは友達2人と一緒に、1人800万円ずつ出し合い、2,400万円の蔵王別荘を購入、共有しています。
※この場合持分は3人とも同じ1/3(=価格にして1/3、即ち、800万円相当)となります。 |
共有者が「共有物に対して何ができるか」は、意思決定の仕方と合わせて理解しておく必要があります。
民法は、「使用」、「保存」、「管理」そして「変更」を想定しています。このうち「使用」は前回見ましたので、今回は残りの3つを見てみましょう。
●保存(民§252但書):保存は現状を維持することです。保存行為は各人が単独で出来ます。
例えば、別荘が雨漏りしている時、Qちゃんは誰の許可も得ずに工務店に修繕を依頼できます。
その他、見ず知らずの人が不法占拠していたら、Qちゃんは単独で所有物の妨害排除請求ができます。また、不動産が無権利者により登記されていれば単独で登記の抹消請求もできます。
●管理(民§252本文):管理は利用や改良で、次に説明する「変更」や「処分」より軽いものです。管理行為には持分価格の過半数の合意が必要です。
例えば、Qちゃんが別荘を誰かに賃貸したい時、あるいは、賃貸契約を解除したい時、Qちゃん独断ではできません。Qちゃんは自分以外にもう1人(1/3+1/3=2/3、すなわち過半)の同意が必要です。
●変更(民§251)と処分(条文上は規定なし):変更は破壊や改変などです。また、法律的な処分、取引上の処分も含みます。この場合全員の同意が必要です。
例えば、Qちゃんが別荘を誰かに売却したい時、あるいは、売買契約を解除したい時、Qちゃん独断ではできません。また別荘をリフォームする場合もQちゃん独断ではできません。これらの場合はQちゃんを含めた全員の同意が必要です。
表にして可視化しておきましょうね。
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根拠条文 |
意 味 |
例 |
意思決定 |
保存 |
民§252但書 |
現状の維持 |
共有物の修理、不法占拠者への明渡請求(物権的請求権) |
各人が単独 |
管理 |
民§252本文 |
以下の「変更」や「処分」より軽い管理、利用や改良 |
共有物の賃貸借 |
持分価格の過半数の合意 |
変更と処分 |
変更(民§251) 処分(なし) |
変更は破壊や改変、法律的な処分、取引上の処分 |
共有物のリフォームや売却、地上権設定 |
全員の同意 |
ところで、管理費用の分担はどうなるでしょうか。これはちょっと常識的な知識での推理を試みてみましょう。
まず、使用と収益は、各人が持分に応じて行えますね。
次に、管理コストはその各人の使用と収益に対応する形で発生すると考えて良いでしょう。すると、たくさん利用した人にはそれだけたくさん費用が掛かると考えて良い。
そう考えると、費用の負担は持分に応じるというのが最も公平ですね。
☞推論的中です。ズバリ民法もそのように考えています。(民§253)
ちょっと一言:民法は常識ある人の味方 上の内容は、民§253の条文を知らなくても、常識から推理することが可能なことを物語っています。 何度かお話ししておりますが、「民法には常識で判断できることが沢山ある」というのが一つのポイントです。 だから常識を磨くこと(=日々、地道に社会を生きるということ)がとても大事ですね。 なお、受験で最終的に選択肢の判断に迷ったら、常識を磨いた人であれば、自分の常識を信じて判断することで正解を導ける可能性はぐんと高まりますよ。 |
最後に一つ、共有者が死亡した場合の他の共有者との関係のポイントを設問形式で見ておきましょう。
問: Aさん、Bさん、Cさんが、それぞれ1/3の持分でX土地を共有していたが、このほどAさんが亡くなった。 1)Aさんに相続人がおらず天涯孤独の場合、Aさんの持分はどうなるか。
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答: 1)亡くなった方(A)の持分は他の共有者(BとC)のものとなる。 ※ちなみに、共有でなく単独所有者が亡くなった時は、然るべき手続きを経てもなお財産が残れば「お国のもの」になります。 ※詳しくは相続の箇所で説明したいと思います。
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●お疲れ様でした。次回は、共有者たちと外部の人との関係(外部関係)に入りましょう。
“どこ行ってたの?まさか、あの新人と二股じゃねえべな?”(絶対騙せないイブちゃん)
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