同時(どうじ)履行(りこう)抗弁(こうべん)(その権利を同時(どうじ)履行(りこう)抗弁権(こうべんけん)という)は、簡単に言えば、「あなたの債務の履行があるまで私の債務も履行できません」、「あなたが物を引き渡すまで私もお金を払いません」などと主張できることでした。

 

では、「どんな債務とどんな債務とが同時履行の抗弁の認められる関係なのか」設例を通じてそのイメージをつかみましょうね。

※設例に出てくる賃貸借契約や請負契約など典型契約の具体については後でもう一度勉強しますからあまり気にしないでくださいね。

 

★ちょっと一言:同時履行の抗弁権に必要な関係性(法律用語では牽連性(けんれんせい)といいましたね)のイメージをつかめるよう訓練しておきましょう。

牽連性※ちなみに、修理された時計とその修理代金など留置権(物権)とその原因となる債権にも牽連性はあります。

 

” 同時履行、二股かける?そんな半端、私にはできないよ “

(意外と侠気(きょうき)P子ことPekoちゃん、20●●年頃)

 

 

 ●二つの義務の間には密接な関係が必要

問:KさんはLさんから家を借りていたが、Lの許可のもと自費で建具や畳の取替えなどのリフォームしていた。今月末に家の賃貸契約が終了するのだが、Kさんはリフォーム用に購入した代金を家主のLさんが支払うまで家の引渡しを拒否できるか。

 

答:借家人に認められる造作(ぞうさく)(建具や畳など)の買取請求権と建物(家)の明け渡しとは同時履行の関係にありません。Kさんは退去を拒めません。

ちなみに、設例のように借家でなくて借地の場合は扱いが違います。借地人に認められる建物の買取請求権と土地の明け渡しとは同時履行の関係にあります。

 

借家契約での造作買取請求権と建物明渡し→×

借地契約での建物買取請求権と土地明渡し→○

 

 

●建物明渡しと敷金返還は同時履行の関係にない

問:田中さんは鈴木さんに家を貸していたが、鈴木さんがマンションを購入したので退去することになった。鈴木さんは田中さんが敷金を返却してくれるまで家に居座ることができるか。

 

答:敷金は建物の明け渡しが全て終了してから、精算して残金を借主へ返却するものです。順序としてはまず退去が先(=先履行(せんりこう)です。建物の明け渡しと敷金の返還は同時履行の関係にたちません。田中さんは先に退去しなくてはなりません。

 

●請負った物の引渡しと報酬は同時履行の関係

問:Bさんは、Aさん宅を新築したが、Aさんが代金請求に応じない。代金を支払ってくれるまで家を引き渡さないでいられるか。

 

答:請負の報酬の支払いと、請負の目的物の引渡しは同時履行の関係にあります。

ちなみに、これに対して報酬の支払いと仕事の完成とは同時履行の関係にたちません。まとめると次のようになります。

 1.まず請負人が仕事を完成

 2.これに対して注文者が報酬の支払い⇔この支払が請負人によ る目的物引渡しと同時履行の関係。

 

●領収書は同時履行にして借用証書は同時履行にあらず

問:XはYから100万円借りている。Xは100万円全額を返済するからこれと同時に領収書を交付して欲しいと主張できるか。

また、Yが借用証書を返還してくれるまで返済はしないと主張できるか。

 

答:受取証書(受領書など)の場合は、弁済と引き換えに領収書の交付を請求できます(民法改正で条文化)

一方、債権証書(借用証書など)の場合は、全部弁済された後でなければ返還する義務はありません。まとめると次のようになります。

受取証書と弁済→同時履行の関係

   債権証書と弁済→同時履行の関係でない

 

債権証書と受取証書は第45回配信の弁済のところでも出てきました。一応載せておきますね。

 

 

●次回、双務契約の効力のもう一つの特徴、危険負担を見てみましょう。

 

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