もう金曜、週末ですね。たまにはちゃんとした格好で出勤しないと上司に小言言われちゃうよね。
さてと、
債権者のために債務者の責任財産を確保する目的の詐害行為取消と債権者代位。よく似た制度の類似点や相違点を前回の表で比較しましょうね。
ワンポイントですが「債権者代位より詐害行為取消の方が要件が若干厳しい」です。
●債権者代位権と詐害行為取消権の比較(類似点と相違点など)
比較の項目 |
債権者代位権 |
詐害行為取消権 |
債務者の行為で債務者が無資力になってしまうことが要件か |
債務者の無資力が要件、但し転用時は不要 |
債務者の無資力が必須要件
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債務者が第三者に対して持つ権利や行為の性格
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・財産権。債務者の一身専属的権利は代位不可。
※但し、相続回復請求など身分的財産権は代位可能)
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・財産権目的の行為。親族や相続にまつわる行為は取消し不可。
※但し、実態が財産権目的の行為なら可。例:離婚による財産分与は実質的に財産処分なら取消可能、遺産分割協議も取消可(判例) |
債権者が債務者に対して持つ債権の性格 |
強制執行できない権利は不可 |
強制執行できない権利は不可 |
相手側(第三債務者や受益者など)から債権者へ債務者を飛び越えて直接支払いや引き渡しを求められるか |
・金銭、動産につき可能 ・不動産の直接引き渡し可能性は今後の判例次第 ・不動産の登記は不可(例:債務者への移転登記のみ) |
・金銭、動産につき可能 ・不動産は不可 ・不動産登記は不可(例:抹消登記か、真正な登記名義回復登記のみ) |
相手側が債権者へ支払い、引き渡した時の、相手の債務者への義務の消滅 |
消滅する |
消滅する |
行使できるのは裁判か裁判外か |
裁判、裁判外いずれも可能 |
裁判のみ |
※なお、今回ピンクの行を加えておきました。
●それでは以下、具体的な詐害行為取消の事例をいくつか見てみましょう。
●詐害行為取消の介入は債権者代位の介入より強い
問:PはQに100万円貸している。Qは多額の借金に自暴自棄になり、残りの財産をはたいて知人からコロンビア産エメラルドを大量に買い付けてしまった。PはQがした契約を何とかして取消したいのだが。 |
答:詐害行為とは債務者Qがエメラルドを大量購入することで、無資力になってしまう場合を言います。ちなみに、債権者代位でも、債務者の無資力は要件ですが、「転用」が許され、転用の場合には無資力は要件ではありませんでしたね。(第49回参照) 詐害行為の取消は、かなり大胆です。債務者が行った行為を否定して、本来自由であるべき(債務者の)権利の行使を制限しちゃいます。だから、自由を何より尊重する民法としては詐害行為取消権の行使の要件を債権者代位より厳しくしているのです。 要件の厳しさは、取消権の行使は必ず裁判の場でさせるなど、随所に現れてます。 |
●不動産の売却は一般的に詐害行為
問:AさんはBに2000万円貸している。このほど、浪費家のBは2000万円するオーシャンビューのワンルームマンションをCに気前よく1000万円で売却した。Aさんは直接Bに代わってCとの契約を取り消せるか。 |
答:売却価格そのものが不当に安いです。よって詐害行為とみなされます。 また、仮に特に安売りしたわけでなくても、売却すると金銭という消費し易い形に変化してしまうので、浪費家の債務者による不動産の売却は、一般的には詐害行為とみなされます。(民法改正で明確化) したがって、Aさんは詐害行為取消権を行使してBがした契約を取り消せます。 |
●単純な借金返済は詐害行為でない
問:PさんはQから1000万円借りているが、Rからも500万円借りている。借金の返済に困ったPさんは、債務整理のため、Rへの借金500万円を返済してしまった。QはPさんに代わって直接Rへの返済を取り消せるか。 |
答:Pさんの借金返済がQに対する詐害行為にあたるかという問題です。単純な借金の返済は詐害行為に該当しません。 |
●資金調達のための担保設定は詐害行為か
問:PさんはQから1000万円借りている。生活費の調達が必要になったPさんは、土地を担保にしてさらにRから500万円借り入れることにした。QはPさんに代わって直接Rからの担保設定を取り消せるか。 |
答:PさんのRへの担保設定がQに対する詐害行為にあたるかという問題です。詐害行為といえるには債務者側に詐害意思が必要です。単に生活費を調達する目的で行われた担保設定は、詐害行為に該当しません。 これに対し、破産とか債務超過(=支払い不能)でありながら、そして、Rとグル(=通謀)になってあえて新たに抵当権を設定することは、詐害行為に該当します。(民法改正で明確化) |
●偽装離婚で財産隠しは詐害行為
問:A子さんの経営する高級ブティックが経営不振に陥った。債権者から私財を強制執行されそうだ。そこでA子さんは離婚を偽装し、財産を夫に分与した。債権者はA子さんから夫への財産分与を取消せるか。 |
答:相続の承認や放棄など身分上の行為は財産取引でなく、詐害行為取消の対象となりません。離婚による財産分与も同様です。離婚による財産分与の必要が生じ、資産状態が悪化しても、それだけで財産分与を詐害行為として取消すことはできません。 しかし、この財産分与が夫婦間の財産分与に仮託(見せかけ)した財産の処分であれば詐害行為となり取消しが可能です。(判例) ちなみに、遺産の分割は財産権を目的とする法律行為であって、詐害行為取消しが可能です。(判例) |
●どう、イメージ掴めました?次回、あとちょっとだけ詐害行為取消のポイントを見てみましょうね。
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